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外国人労働者受け入れ拡大の議論

出入国管理法改正案をめぐり国会で審議が始まりました。各方面、様々な意見が飛び交っています。移民の国であるカナダに住む者から見た今回の議論を考えてみたいと思います。

産経新聞が懸念を示しています。その理由が①政府は移民ではないと言うがそうとは思えない②日本人との間で職や社会保障、教育の奪い合いはないのか?③将来の参政権への懸念であります。

この指摘について検証してみます。まず、産経が指摘する移民の定義は国連が「出生あるいは市民権のある国の外に1年以上いる人」としていることから今回の政策は移民枠拡大ではないか、という点です。

実は移民の定義は明白にはないのです。国連のそれはマイナーな定義で普遍性がありません。事実、1年といえばワーキングホリディや留学生も移民になるのか、ということになります。移民というのは本人の意思、及び受け入れ側(国家)もそれを承認する二つの条件が整い、希望すればずっと住めるという前提を指すものが本質的意味合いではないでしょうか?ちなみに英英辞典を見るとWebsterもOxfordにもPermanent(永住)という言葉が入っています。

例えばカナダにおいて駐在員などの就労ビザ取得者は居住者(Resident)にすぎず、逆立ちしても移民とは言いません。英語でTemporary Work Permitであり、「一時的滞在の許可」に過ぎないのです。これはアメリカも同様です。この就労ビザは通常1-2年ごとに更新を要求され、更新できるかはその時々の政府の移民政策の方針次第、ということになります。よってビザが出ず、帰国する人も存在します。

また、カナダ国内の業種ごとの労働市場をみて就労ビザが出たり、出なかったりします。例えば昔は日本人の美容師はビザが出たのですが、今はかなり厳しくなったり一店舗一人など制限が付くこともあります。つまり、就労に関するビザは政府のさじ加減次第で増やしたり減らしたりできる実に都合の良いものなのです。

社会保障ですが、年金については外国人労働者がもらえる可能性は永住権に切り替えない限りほぼあり得ません。産経の指摘する社会保障とは病院治療代のことかと思います。通常、長期滞在ビザを申請する場合、健康診断を要求されます。それも不正防止のため、指定医のみの検診です。そこでなにか病気や将来的に治療費がかかるおそれがある場合は申請は却下され、保険料増大への歯止めがかかります。たしか、妊婦も制約されたと記憶しています。つまり制御可能であります。

教育については施す必要があるでしょう。いや、そうすべきです。日本語教育のみならず、日本での生活を心地よくするための教育のクラスは設定すべきでこれは日本にとっても外国人労働者にとってもメリットのある話です。そんなお金もったいない、と言われればそうですが、世界の一流国たるもの、5年で26-34万人程度の日本教育ぐらいできないでどうするのか、と思います。いや、それ以上に日本で日本を教育することによる歴史認識などへの新たなる理解が深まるかもしれません。

職の奪い合いについてはほかのメディアでも懸念を示していました。まず、これは一時的就労ビザであることを忘れてはいけません。今回、高い能力である特定技能2号をもつ人は将来永住権申請への道が開けるとしていますが、大半は特定技能1号の話であります。懸念されるような景気変動が起きればその発給を絞ればよいだけでしょう。

それとは別に日本人の若い人たちが単純労働をしたがらなくなりつつあります。昔は居酒屋やコンビニは大学生にとって当たり前のバイト先でした。しかし、移民の人が増えるともっとシフトアップするのが世の常です。つまり日本のレベルアップにつながると考えています。

最後に参政権とあります。これに至ってはもう論外の話で産経もどうしちゃったのか、と思います。参政権は日本人国籍取得者のみに与えられています。今回の話は一時的労働者であります。仮に特定技能2号経由で永住権をとっても参政権はありません。

今回の外国人労働者受け入れ議論を見ていると日本がかつてそういう経験を十分に踏まえていないせいか、議論のレベルが非常に低く感じます。まるで黒船来襲の時のような噂が噂を呼ぶ感じでしょうか?

本当に懸念しなくてはいけないのはそれら外国人が日本のコミュニティや社会に溶け込めるのか、ということです。日本人が受けいれる気持ちを持つのか、そこにかかっています。

北海道のある飲食店が東京に出店した際、ほぼ外国人だけのオペレーションにしたと日経ビジネスに掲載されています。そこには外国人がカウンター越しに寿司を握る写真が出ています。これは結構チャレンジングだと思っています。私もかつてシアトルで日本料理店の経営を任されていた頃、カウンターには日本人を入れ、厨房をメキシコ人主体にしました。バンクーバーで今でも大混雑しているある日本食レストランはオープンキッチンの中が日本人の職人、サーバーがほぼ全員白人でうまく特性を使い分けています。これは差別ではなく顧客期待への対応でマーケティングテクニックです。

このあたりの器用さが今後、日本に求められてくるのでしょう。政府試算の受け入れ人数は影響が少なく、また今までのビザ要件があいまいだったことを踏まえればこれで一つの明白なラインが出るわけでこの法案はむしろ待ち望んでいたぐらいのものであり、意味があると思っています。

但し、管理と運用のフレキシビリティを国民とどう対話していくのか、これは政府側の最大のチャレンジかと思います。

では今日はこのぐらいで。

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