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無策に続く愚策

 安倍総理は10月15日の臨時閣議で、消費税率について「来年10月に8%から10%に引き上げる予定だ」と、従来の方針を改めて示しました。総理は過去2回、増税延期を突然表明し、直後の国政選挙で争点として掲げたことがあります。消費税を政争の具にするという禁じ手を使った前科があるのです。

 政健全化が遅れれば遅れるほど、大きなツケが後の世代に回りますので、さすがに今回は「3度目の正直」で、予定通り実施するだろうと考えるのが常識的でしょう。一方で、「2度あることは3度ある」という諺もあります。来夏は参院選がありますので、消費税引き上げ先延ばしという究極のポピュリズムに、またもや手を染めたくなる衝動に駆られるかもしれません。

 半信半疑にならざるをえませんが、仮に消費税の基本税率を10%に引き上げた場合、酒と外食を除く飲食料品と新聞代の税率は現行の8%にとどめる「軽減税率」が導入されます。消費税には所得が少ない人ほど負担が重くなる「逆進性」が存在しますが、その影響を取り除く逆進性対策として、軽減税率が導入されることになったのです。

 しかし、軽減税率で恩恵を受ける87.5%は低所得者以外であり、格差是正効果がありません。むしろ、高級おせち料理や霜降りの和牛を買うような高所得者のほうが得をするでしょう。

 軽減税率は事業者、特に中小企業・零細企業には、大きな負担ばかりがかかります。税率が2本立てになれば、帳簿も複雑になります。取引ごとに適用税率や税額を記したインボイス(明細書)も不可欠となります。

 軽減税率導入は約1兆円の減収を招きます。そのぶん、社会保障に必要な財源が確保できなくなるということです。貯蓄の少ない低所得者が失業したり病気になった場合、医療・介護・保育・障害に関する過重な自己負担を軽減する「総合合算制度」は見送られました。社会保障の充実・安定のために消費税を充てるという精神からすれば、本末転倒といえるでしょう。

 私は、消費税は単一税率を維持しながら、低所得者に対しては「消費税の払い戻し措置」(給付付き税額控除)を導入するほうが、逆進性対策としては有効だと思います。軽減税率の導入は再考すべきでしょう。

 総理は経済に影響を及ぼさないよう、「あらゆる施策を総動員する」と語りました。中小小売店のポイント還元策やプレミアム商品券などあの手この手が検討されているようです。景気への目配りは大事ですが、選挙を意識した過剰なバラマキは財政を圧迫します。

 キャッシュレス決済でのポイント還元策は、軽減税率対象品目にも導入するようですが、店頭では10%、8%、そして例えば6%という税率が混在することになります。そもそも、高齢者や子どもはカードで買い物しないでしょう。消費税は「毎日が納税日」ですが、毎日現場が混乱するのではないでしょうか。

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