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インドの闇を象徴する世界一の彫像―日本メディアに問われるもの

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・インドで完成した高さ世界一の彫像は、インドの経済成長だけでなく、少数派であるムスリムの迫害をも象徴する。

・しかし、日本メディアはこれをほとんど報じておらず、そこには政府や経済界への忖度がうかがわれる。

・独立した言論の府としての責任をメディアが果たさなければ、「知りたいように知る」風潮を後押しすることにもなる。

 「世界一の…」と冠がつくものは一般的にメディアでよく取り上げられるが、10月末にインドでお披露目された高さ世界一の彫像に関しては話が別で、日本メディアでその完成を伝えたのは、いくつかの海外メディアの日本語版を除けば一部にとどまった。この彫像の建立は少数派の迫害と表裏一体といういわくがあり、インドの暗部を浮き彫りにするが、それと同時に日本メディアの課題をもあぶり出している。

高さ世界一の彫像とは

 まず、世界一の彫像とはどんなものか。

 これは「統一の像」と名づけられた、独立の指導者の一人ヴァッラブバーイー・パテルの彫像で、10月31日に北西部グジャラート州で落成式が行われた。高さは182メートルで、ニューヨークの自由の女神(93メートル)の約2倍。これまで世界一高い彫像は中国にある魯山大仏だったが、パテル像はこれを54メートル上回る。



 パテル像の完成は、成長著しいインドの光を象徴する。

 ただし、そこには影もある。そのカギは、貧困層が国民の21.9パーセントを占める(2011年段階、世界銀行)状態で、総工費299億ルピー(約4700億円)を投入し、国内で「巨大な像を建てるくらいならそのお金を農民のために使うべきだった」といった批判を招きながらも、なぜインド政府がパテル像を建立したかにある。

「触れてはならない」独立の英雄

 初代副首相を務めたパテルは、「サルダール(首長)」の異名をもつ。しかし、一般的にインド独立の指導者といえば「無抵抗・不服従」で民衆を率いたガンディーや、その後継者で初代首相のネルーが知られ、彼らと比べてパテルの知名度は、海外では必ずしも高くない。

 インドでもガンディーやネルーの家系やその一派が名門とみなされ、政界の主流として大きな影響力を持ち続けるなか、パテルの名は傍流に位置づけられてきた。その最大の理由は、ガンディーやネルーが政教分離に基づく民主的な体制を目指したのと異なり、パテルがヒンドゥーの教義に傾いていたことにある。

 インドでは独立以前からヒンドゥー教徒とムスリムの衝突が相次ぎ、結局ムスリムが多かったパキスタンが、さらにその後にバングラデシュが、それぞれ分離した経緯がある。それでもインド国内には数多くのムスリムがおり、ピュー・リサーチ・センターによると、全人口の約80パーセントをヒンドゥー教徒が占める一方、ムスリムは14.4パーセントにとどまるが、1億7600万人以上にのぼり、世界屈指の規模である(その他、シーク教徒、キリスト教徒、仏教徒などもいる)。



 そのため、独立後のインド政府はヒンドゥー特有のカースト制を法的に廃止するなど、宗教の政治への影響を排除し、宗派対立を抑制してきた。

 これに対して、パテルは独立以前からムスリムと衝突を繰り返したヒンドゥー至上主義団体「民族義勇団(RSS)」と結びつきがあり、独立にともなうインド・パキスタン戦争(1947)の外交的解決を目指したガンディーを批判した。

 この経緯からすれば、ガンディー、ネルー以降のインドで、ヒンドゥーに傾倒したパテルが「独立の指導者の一人だが、あまり触れてはならない人物」と扱われてきたことは不思議でない。

ヒンドゥー・ナショナリズムのスター

 その意味で、パテル像の建立はインドの大きな変化を示す。

 インドでは2014年選挙で政権を握ったインド人民党(BJP)のもと、ヒンドゥーに基づく国づくりを目指すヒンドゥー・ナショナリズムが台頭しており、モディ首相はパテル像の完成にあたって「パテルが初代首相になれなかったことを全インド人が後悔している」と述べている。そこには「インド人=ヒンドゥー教徒」の図式が鮮明だ。

 また、パテル像が建てられたグジャラート州は、パテルだけでなくモディ首相の地元でもある。

 つまり、パテル像の建立は、インドにおける政教分離の後退をも象徴するのである。



 さらに、モディ政権はパテル像の建立と並行して、ムンバイでは17世紀にイスラーム系のムガール帝国と戦ったヒンドゥーの英雄チャトラパティ・シバジの建立を進めており、こちらはパテル像を上回る212メートルで、2021年の落成を目指している。

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