
平成の大横綱・貴乃花が角界を去って初めての本場所が幕を開けた。その「不在」によって角界の“膿”の存在が改めて浮き彫りとなっている──。
九州場所の初日を1週間後に控えた11月3、4日の週末に、元貴乃花親方は自身の部屋が昨年まで宿舎を置いていた福岡県田川市の「炭坑節まつり」に姿を現わした。景子夫人とともに笑顔で“綿菓子づくり”に精を出す様子に、相撲協会側は神経を尖らせていたことが窺える。
綿菓子の露店のすぐ隣に設置された土俵では、小結・貴景勝ら、“元貴乃花部屋”の力士たちがちびっこ相撲大会に参加していたが、“元師匠”と並んで取材を受けることはなかった。それには理由がある。
◆「即刻退場させますよ」
大会事務局からは事前に、現場で取材するメディアに対して「注意書き」が渡されていた。そこでは、
〈本大会は初回大会より「公益財団法人 日本相撲協会(広報部)」への手続きを行い親方及び力士をお招きして参りました〉
と前置きした上で、協会から、〈会場入りをしている協会所属の親方、力士等の関係者への「テレビ局によるインタビュー取材」については、協会としてお断りする(取材を禁止する)旨の連絡がありました〉と明記されていたのだ。
さらに当日は、元貴乃花親方と現役親方・力士が絡むかたちでのインタビュー取材を行なった社は「即刻退場とする」という口頭の注意喚起までなされた。
その結果、貴景勝らが露店に挨拶にやってくる場面こそあったものの、“元弟子”に話を聞こうとするメディアはなく、大会に特別審査委員長として参加した“貴シンパ”として知られる浅香山親方(元大関・魁皇)と元貴乃花親方が言葉を交わす場面もなかった。
「協会側は、自由の身になった貴乃花に協会批判を展開されることが恐いのでしょう。以前のように“協会に許可を得ず取材を受けた”などの理由をつけて処分などできませんから。協会に残る“シンパ”を焚きつけるような言動も困る。だからこそ、カメラの前で何を言うかわからない貴乃花と現役の親方・力士が一緒に報じられることがないよう“報道管制”を敷いたのではないか」(担当記者)
※週刊ポスト2018年11月23日号