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枝野幸男氏が自衛隊を違憲だと言っていたというデマについて

 立憲民主党の枝野幸男代表が、憲法に自衛隊を明記する安倍首相の考えを批判して、「自衛隊は合憲だ」から憲法改正の必要はないとの趣旨を述べたことについて、
《>日本は我々も含めて個別的自衛権は合憲だ。自衛隊は合憲だ。

だってお前、自衛隊は違憲だっていってたじゃんw ほんと詐欺師みたいなやつだな。》
と評しているツイートを見かけたので、
《枝野氏は自衛隊が違憲だなんて言ってないでしょう。いつどこで言ったんですか?》
と尋ねたら、
《「いつどこで?何時何分何秒、地球が何回まわったとき?」って小学生かよw 枝野は元々、違憲かどうかの判断は憲法学者の判断に任せるってスタンスだったろ。自衛隊は違憲という立場の憲法学者の方が多いんだから、違憲ってことだよ。ところがまぁここに来て合憲とか言い出しちゃった。驚きだね! 》
との返答があった。

 さらに私が、そんなスタンスを枝野氏がいつどこで述べたのかと追及を続けたところ、さんざん逃げ回ったあげく(その経緯はtogetterにまとめてある)、ようやくこのnetgeekの記事をソースと称して挙げてきた。

枝野幸男「残念でしたー!安保法制が違憲だなんて言ってませ~ん」→言ってる

 こんな誰が書いたとも知れぬネット記事がソースになり得ると思っているあたり、どうしようもない。

 確かにこの記事には
違憲疑惑が持ち上がり扱いが難しくなっている自衛隊の存在について是非を問われた枝野幸男は、なぜか「国民や学者の間で意見が違うのはしょうがない問題」と中立の立場で話し始める。この時点で多くの人が違和感を覚えるだろう。なぜなら枝野幸男は元々、自衛隊と安保法制は違憲と主張していたからだ。
と書いてある(太字は引用者による。以下同じ)。

 しかし、記事に掲載されている橋本五郎氏と枝野氏のやりとりは、
橋本五郎「だって(あなたは)安保法制は憲法学者が反対しているから憲法違反だってこと言ってたじゃないか」 枝野幸男「私は言ってません」

橋本五郎「民進党は言ってましたね?」

枝野幸男「党の公式見解でも言っていないと思います。あのとき憲法の担当者でしたから」
というもので、安保法制は憲法違反と言っていたかどうかが争点となっている。自衛隊が憲法違反かどうかではない。

 記事に転載されているDAPPIという人のツイートでも、
2年前の国会

枝「安保法は専門家に委ねるべき問題!専門家の指摘を無視するな!」
と書かれており、自衛隊の合憲性を問題にはしていない。

 枝野氏が、安保法制だけでなく自衛隊をも違憲だと主張していたと書いているのは、このnetgeekの記事の「腹BLACK」なるライターである。しかしその根拠はどこにもない。
 故に、このnetgeekの記事は、枝野氏が自衛隊違憲論を唱えていたとの主張のソースには成り得ない。

 こんなことをくどくど書かなくても、枝野氏が自衛隊合憲論に立っていることなど普通に政治のニュースに接していれば常識だと思うが、そんなことに関心のない層にデマを広めたい者がいるのだろう。

 ちょっと調べたら、枝野氏自身の自衛隊合憲発言もすぐに見つかったので、画像を貼っておく。
 NHKのサイトに掲載された、2017年10月8日の党首討論会の記事から。

[画像をブログで見る]
記者「枝野さんにお伺いします。私の記憶では、枝野さんは確か自衛隊の保持についてお認めになる、ですよね?」
枝野「そうです。自衛隊、合憲です、我々は。」
 あと、「憲法学者の判断に任せる」云々の出所も、やはりすぐに見つかったので紹介しておく。
 これは2015年6月11日、衆議院憲法審査会での発言だ。
○枝野委員 〔中略〕
 言うまでもなく、四日の本審査会にお招きした三人の参考人の先生方、いずれも憲法学界を代表する先生方でありますが、その皆さんがそろって、現在審議中の安保法制について憲法違反であると述べられたことは、それ自体重大なことです。
〔中略〕
単にたまたまお招きした三人の先生方がそろって違憲とおっしゃったのではなく、中立的で、むしろ自民党の考え方に近いとすら受けとめられている方が少なくとも二名も含まれている中で、一致して憲法違反との指摘を受けたということであります。
 その上で、四日の審査会の後に一部から出ている、その重みを無視しようとする具体的な意見に対し、二点ほど指摘をしたいと思います。
 一つは、自衛隊発足の当時から、憲法学者の間では自衛隊違憲論が多数であり、最高裁はその学者の意見を採用してこなかったとの指摘です。また、現状においても、憲法学者の間では自衛隊違憲論が多いとして、自分たちとは基本的な立場が異なるという発言もあります。
 しかし、そもそも自衛隊発足時の違憲論は、日本国憲法が制定され、九条についての解釈が確立する前の、いわば白地での議論でありました。これに対し、今回の参考人の御意見は、いずれも、これまでに積み重ねられ、定着している政府の憲法解釈を前提として、集団的自衛権の容認などが憲法違反であると論理的に指摘をするものです。つまり、参考人の御意見は、自衛隊合憲論を前提としており、その限りで、私たちとも自民党とも基本的な立場は一致しています。
 「私たち」、つまり、当時の枝野氏を含む民主党も、自民党と同様、自衛隊合憲論に立っているとしている。
 そして、白地の状況では、批判自体が確立していませんから、条文の文言に基づき、どのような規範を導くのかということが問われます。このような場合には、法論理の問題だけにとどまらず、一定の価値判断が含まれ、政治性を帯びることも避けられません。すなわち、条文とそごを生じない限り、新たな規範の定立に向けた政治判断、価値判断が加わることは、この時点ではあり得ることです。当時の公権力が、法論理の専門家である学者の意見を参考にしながらも、政治的価値判断を踏まえ、当時の多数意見とは異なる結論を導いたことにも一定の正当性があります。
 これに対して、今回の参考人の指摘は、既に確立した解釈、つまり一定の規範を前提に、論理的整合性がとれないことを専門的に指摘するものです。論理的整合性は、政治性を帯びる問題ではなく、純粋法論理の問題ですから、政治家が政治的に判断できることでなく、専門家に委ねるべき問題です。論理の問題と、一定の価値判断、政治判断が含まれる問題との峻別もできないのでは、法を語る資格はありません。
 自衛隊を保有を認める解釈改憲は政治的判断によるもので正当性があるが、安保法制が合憲か否かの判断は論理的整合性によるべきだから政治的判断が入り込む余地はなく専門家に委ねるべきだとしている。

 私は、率直に言ってこれは詭弁ではないかと思う(安保法制の合憲・違憲についても政治的判断が許容されるべきだと思う)が、ここで枝野氏は、あらゆる憲法判断を専門家、つまり憲法学者に委ねよなどと言っているのではないことは明らかだ。
 故に、これも枝野氏が自衛隊違憲論を唱えたという根拠にはならない。

 証明ってのはこういうふうにやるもんですよ。

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