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なぜ子どもが道に飛び出してはいけないのか

■「いったん止まれ~」

僕はふだん、自分の事務所にめったにいないのだが、今日の午前は比較的時間があり、事務仕事も疲れたのでコンビニに買い出しに出かけた。

すると、1人の父親と2人の子どもが自転車を漕いでいる光景にぶつかった。

子どもはふたりとも男の子で、結構なスピードで細い道を飛ばしている。父親は、

「スピード落とせよ~」

「クルマがきたら危ないぞ~」

「いったん止まれ~」

等々、後ろから子どもたちに声掛けしている。世界中で見ることのできる、親子のやりとりだろう。

父親は30代なかば、パンク系のTシャツを着て、わりとラフな感じ、自転車もそこそこいいのに乗っている。クラッシュの「ロンドンコーリング」Tシャツでは残念ながらなかったが、ロック=アンチ権力な価値ももっているような、今風といえば今風な、ロックな父親だ。

それが、結構なスピードで自転車をこぐ息子たちに対して、「止まれ~」とか叫んでいる。

めったなことがない限り、実際にクルマと衝突することはないだろうが、親としてはやはり「止まれ」と言ってしまう。

権力が嫌いだろうがロックが好きだろうが関係なく(まあ僕の想像でこの父をロック好きにしていますが)、子どもが自転車を飛ばし、横切るクルマと衝突するのを避けたいのは、親としては当たり前だ。

■交通モラルをどうしても伝えてしまう

が、当たり前だろうか。

僕は若い頃は不登校の子どもへの訪問支援を長くやっていた。小学生の不登校児と外出することもたびたびだった(外出することで子どもたちの気分を変える)。

その時、自転車に乗りノリノリでコンビニに向かう不登校小学生に対して、僕も「危ないぞ~」とよく言っていた。

そうやって「危ない」と思わず注意する自分に対して、なんとなくの違和感を当時から僕は抱いた。

実際、クルマが横道から現れてその子どもと衝突することはほぼない。それよりも、一週間ずっとひきこもっていたその不登校小学生が、イキイキと躍動しながらニコニコと自転車をこぐことの意味を大切にしたい。

その自由さ、イキイキさを大切にしたいのだが、思わず「危ないぞ~」と言ってしまう。

暴走車がいきなり現れる確率は低い。だから、自転車を飛ばしても確率的にはたいしたことないのだが、「危ないぞ~」「いったん止まれ」と言ってしまう。

言い換えると、そうした交通モラルをどうしても伝えてしまう。

さらに言い換えると、そのような交通モラル、つまりは、

「規範」

を、誰に命じられたわけでもないのに、小さな子どもたちに強制してしまう。

■「学校に行かなければいけない」の源泉

自分の子ども、あるいは職業的責任の範囲(教員や保育士)で預かった子どもに対して、そこに関与する大人たちは「止まれ」と言う。

規範と反対の価値、「自由」を徹底する大人が仮にそこにいれば、「止まれ」とは言わずほったらかしにするだろう。

けれども、そこまで自由を徹底する大人はほぼいない。ほとんどの大人は「止まれ」と言う。

ロックTシャツを着て、仮にフーコー『監獄の誕生』を読み「権力」に異常に敏感な哲学者だとしても、目の前の子どもの自転車運転に「危ない!」と言う。

なぜ、「危ない」と静止する必要があるのだろうか。

その子が自由に自転車を漕ぎ、確率的には低いが、たまたまクルマに轢かれたとしても、それがその子の「運命」なのではないだろうか。

後悔したくないために、我々は子どもを制するのか。

社会に網の目のように張り巡らされている規範になれさせるために、そうした「飛び出しはヤバイ」ルールを手始めとして覚えさせたいのか。

子どもが交通事故にあって諸々の手続き(入院とか賠償とか)がめんどくさいのか。

単純に、愛する子にケガしてほしくないのか。

後悔の忌避、慣習の始まり、手続きの排除、愛、これらが塊となって「自転車の暴走禁止」という交通ルール、わかりやすい規範を生み出していく。これらはいわば規範の起源だ。

僕としては、こんな規範でさえうっとおしい。そのうっとおしい規範がつまりは「学校に行かなければいけない」「仕事をしなければいけない」等の典型的規範に結びつく。

だから、それら慣習の始まりを忌避したいのではあるが、なかなか逃げることはできない。

※Yahoo!ニュースからの転載

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