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民主党を差し切れなかった共和党。民主党は経験不足の新人らと、党の“顔”がいない不安からのスタート<アメリカ中間選挙レポート> - 渡瀬 裕哉

下院敗北は想定内。トランプ再選に向けた道筋はとりあえず確定した

11月7日、米ホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領(写真提供:UPI=共同)

 米国中間選挙の大勢がほぼ判明し、共和党上院維持・下院敗北という下馬評通りの結果となった。たしかに、直前1か月の共和党の追い上げは目を見張るものがあったが、民主党を差し切るためには時間が不足していたということが敗北原因だろう。

 リベラルなメディアはトランプや共和党保守派のことを色々誹謗するだろうが、トランプ大統領にとっては上院維持・下院敗北は再選に向けたベストのシナリオと言える。特に、再選に向けて落とすことができないフロリダ州において共和党が上院選・知事選の双方で勝利したことの意味は大きい。

 筆者は中間選挙翌日11月7日にワシントンD.Cで開かれた共和党保守派の定例会合である「水曜会」に参加した。同会は保守派有力団体である「全米税制改革協議会」が主催する完全招待制・非公開方式・写真撮影不可の会議であり、100名程度の保守派のグラスルーツの中心人物が集まって時事トピックに関する議論が行われる。誰が何の話をしていたのかを外部に話してはいけないルールとなっており、メディアに対する警戒ぶりは保守派特有の雰囲気がある場である。

水曜会を主催する保守派実力者のグローバー・ノーキスト全米税制改革協議会議長と筆者、9年来の友好関係を持つ仲である。しかし、それでも眼光の威圧感が半端ではない。

 筆者は日本人としては例外的に「水曜会」に出席する資格を持つ1人であり、D.Cを訪問するときはその時々の空気感を理解するために顔を出すことにしている。

 現地の共和党保守派の様子を見る限りでは、今回の下院敗北は想定の範囲内であって今更右往左往するような話ではなく、簡単に選挙の総括があった後には今後具体的にどのように政局運営を行うのか、そして2020年の大統領選・上院選・下院選でマジョリティを築くのか、という議論が行われていたのだった。中間選挙結果が出てから僅か数時間後にこの話をしているわけで、米国人の頭の切り替えの早さには脱帽するばかりである。(日本のメディアはいまだに中間選挙結果・直後の話をしているが、米国の政治関係者の視野はその大分先まで進んでいる。)

民主党は今後、稚拙な議会運営を共和党に攻められる。2020年大統領選挙の候補者不足も課題

 私見では、トランプ大統領の支持率、そして共和党の党勢は今後回復していく可能性が高い、と考える。なぜなら、今回民主党で新たに当選した下院議員たちは全くの政治素人が多く、議会運営を含めて多くの問題を引き起こすことが目に見えているからだ。もちろん例外的に活躍する人物も出てくるだろうが、それはあくまでも一部に限られるだろう。

 メディアが清新なイメージで取り上げるオカシオ・コルテスら新人議員らは明らかに経験不足であろう。今後は共和党の議員たちは民主党議員らによる稚拙・強引な下院議会運営を批判するだけでよく、トランプ大統領も民主党を批判しながら時折超党派の対応を見せるだけで支持率が上がっていくことになるだろう。共和党は淡々とやるべきことを進めて接戦州での決戦に備えて準備をしていくことになる。

 一方、民主党にとっては今回の中間選挙で大半のラストベルトで勝利できたことは2020年大統領選挙を見据えてプラスであるが、党内に同時に決定的に深刻な問題が発生していることが浮き彫りになった。その問題とは「2020年の大統領選挙の候補者不足」である。

 今回はオバマ前大統領を担ぎ出してお茶を濁したものの、それ以外の華がある政治家が存在していないことが露呈したのだ。また、オバマ2.0と呼ばれて持て囃されたテキサス州上院候補者であったオルークなどが敗れて党を刷新できる新しい顔役候補がいなくなってしまった。共和党側がトランプ大統領をはじめとして大統領候補者を務められる豊富な人材を抱えている状況と対照的である。現地で耳にした話では、ヒラリー・クリントンがカネにモノを言わせてもう一度大統領選挙に出ようとしているという噂もあるようだ。

 中間選挙が終わると今度は2020年大統領選挙に向けた動きが活発になってくる。民主党側が束の間の勝利の美酒に酔いしれているうちに、トランプ大統領・共和党側の取り組みは着々と進んでいる。

渡瀬裕哉『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ―奇妙な権力基盤を読み解く』(産学社)
トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、その後も情勢分析の正確さから、日系・外資系ファンド30社以上の支持を得るアナリストが、2018年中間選挙、そして2020年米国大統領選までの未来を独自予測。日本への多大なる影響と、対応策について解析・提言。
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