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焦点:トヨタが中国事業拡大へ急傾斜 燃料電池車など新市場開拓も加速


[東京 7日 ロイター] - 世界の競合に比べ出遅れ感のあった中国市場で、トヨタ自動車<7203.T>が攻勢に転じている。日本を含め主要市場が停滞する中、中国ではトヨタの際立った伸びが続く。「中国の社会に貢献しないと次の成長はない」(ディディエ・ルロワ副社長)。中国では販売拡大だけでなく、燃料電池車など新たな市場開拓への取り組みも強化している。

「今年5月以降、トヨタの中国に対する姿勢が大きく変わった」。複数の関係者はこう話す。5月は中国の李克強首相が初来日し、安倍首相とともに北海道苫小牧市にあるトヨタ工場を視察。李首相は豊田章男社長の出迎えを受け、およそ1時間にわたって同社の先端技術などについての説明を受けている。

中国市場への急傾斜を裏付けるように、6日の決算会見でルロワ副社長は「トヨタにとって、中国はとても、とても大事な市場。次のステップを検討しなければならない」と語った。

トヨタの市場開拓は、モーターショーの参加やイベントの展開で消費者との接点を多く持ち、販売店の現場に足を運び、ニーズを吸い上げて開発に生かすという戦略が基本。ルロワ副社長はそうした地道な「トヨタウェイ」を中国でも徹底してきていることを強調した。

さらに、2022年に中国・北京で開催する冬季五輪についても言及し、五輪の最上位スポンサーの1社であるトヨタとして五輪に「どう貢献できるかを検討している」と説明。同国での普及をにらんで燃料電池車「ミライ」の実証実験もすでに昨年から始めており、モビリティサービス専用の自動運転車「イーパレット」への展開にも期待を寄せた。

<中国の対米関税で日本からの輸出が有利に>

今夏以降、中国の新車需要は減少傾向だが、トヨタは好調が続いている。ルロワ副社長は、中国市場について「(短期的には)不透明感があるが、長期的には成長し続ける」と期待感を示した。トヨタの中国のシェアは5%弱にとどまっており、拡大余地があるとの認識だ。

トヨタの販売は1―10月累計で前年同期比13.2%増の121万5100台。10月単月では前年同月比19.5%増の13万4600台で10月として過去最高だった。新型「カムリ」のほか、「レビン」や「カローラ」も伸びた。

とりわけ好調なのが、日本から全量を輸入している高級車ブランドの「レクサス」だ。レクサスの1―10月累計での販売は前年同期比23.8%増の13万2400台で、すでに17年の年間販売実績と同水準に達しており、18年は16万台を目指す。

ルロワ副社長は「他のブランドに比べれば、レクサスはまだ小さなブランド。つまり、レクサスにはまだ成長余地があり、中国で強いポテンシャルを秘めている」と語った。

中国政府が7月に輸入車関税を25%から15%に引き下げたことを受け、トヨタも同月からレクサスの価格を引き下げた。一方、中国との貿易摩擦が続く米国からの輸入車に対する関税は15%から40%へ引き上げたため、レクサスに割安感が出ている。

昨年の中国の新車需要は過去最高となる約2888万台。前年比3%増と、このところ減速感はあるが、3000万台の大台突破は時間の問題だ。トヨタは20年までに10の電動車を中国に導入する計画で、バッテリーなど基幹部品も現地生産する。中国全体の年間生産能力を現在の約116万台から、20年代前半には約170万台へ引き上げ、200万台規模も視野に入れて生産体制の強化を計画している。

<中国は米国と並ぶ柱になるか>

トヨタの中国事業はこれまで独フォルクスワーゲン(VW)<VOWG_p.DE>や日産自動車<7201.T>などの後塵を拝してきた。「伸びる市場には伸びるなりのタイミングで経営資源を投入し、市場(の成長)に遅れないようにシフトを変えていきたい」。豊田社長は5月の決算会見でこう語り、中国での出遅れ挽回に強い意欲を示した。

屋台骨の米国事業は改善の兆しがあるものの、収益回復は道半ば。通商問題などの懸念材料も多く、中国事業の重要度は一段と増している。中国を米国に並ぶ収益の柱にできるかどうかが大きな課題だ。

調査会社TIWの高田悟シニアアナリストは「トヨタは着実に中国での販売力向上を図っている」と評価しつつも、為替の影響、収益力の落ちている米国市場、原材料高、国内の消費増税など、山積みの懸念材料があると指摘。「トヨタの中国で補えるかといわれると、まだそこまでの安心感はない」といい、一段の足元固めが求められるとの見方を示している。

*体裁を整えて、再送します。

(白木真紀  取材協力:田実直美、白水紀彦 編集:北松克朗)

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