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裁判のIT化の問題点 訴えを起こす弁護士の視点だけではダメなんだよね

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 訴える側は、はっきり言って何とでもなるんです。少額訴訟が導入され、訴える側としての利用も一定数あります。全体の事件数の減少と同じように少額訴訟も減ってはいますが、訴える側は何とか頑張って起こすのですが、そうした層の人たちにとってはIT化されようが、時間を掛けて頑張るから大きな問題はありません。

 もっともIT化によって紙ベースでの訴えを受け付けないということになってしまうと、それは影響が大きすぎると思います。

 問題なのは、訴えられた側です。

 簡裁では被告側の弁護士(認定司法書士を含む)の選任はかなり低めです。

 2017年度の裁判所のデータブックには統計は掲載されていませんでした(地裁のものはありました)。弁護士白書で公開されていたものは2016年度版(統計は2015年)でした。


こうした状況下で訴えられた側がどのようになるのかという観点こそ、私たち弁護士会側が考えなければならないことです。

 業務拡大? ビジネスチャンス?

 ということであれば本来的な基盤整備こそが求められるわけです。

 法テラス(日本司法支援センター)は使い勝手がよくなりましたが、しかし、やはり原則は立替であり、費用負担は重いものがあります。税金による裁判支援は、裁判を受ける権利(憲法32条)の実質的保障を目的とするものですが、裁判所で手厚くするか、弁護士依頼を保障するかのどちらかになるのですが、いずれにせよ、当事者(利用者)を突き放して、「裁判を受ける権利がありますよ」と言ってもダメなわけです。

 立替制ではなく、給付制も導入しながらでなければ、訴えられた側が置き去りにされることは目に見えています。しかし、IT化導入はあくまで企業による使い勝手を向上させることこそが目的ですから、そのような訴えられた側に対する考慮など優先事項ではありません。IT化を弁護士側が主張するならば、そうした訴えられた側の視点にも立たなければならないのですが、そうした声は聞こえてきません。

 札幌弁護士会の意見書はまさにこうした視点で出されたものです。

 これをビジネスなど言っている弁護士は、東京にいながら地方の事件を漁れるだろうという発想なのかなとも思います。テレビCMの主流な内容になるかもしれません。ホームページでも「遠方地OK」のようなね。

 そればかりか、東京に裁判所があれば足りるでしょとも言い出しかねませんね。
裁判所側はそのような発想でしょう。大規模庁への機能集約が顕著ですが、各都道府県に1つある必要性もないということにもなりかねません。

 ビジネス的な発想しかない弁護士は、それでもOKなんでしょうね。

 あと今、想定されているような訴訟運営は、訴訟のあり方を根本的に変えてしまいかねない危惧があります(前回のエントリーでも書きました)。

 消費者側が時間を掛けて訴訟を遂行させていくということも不可能になるかもしれません。さっさと消費者側の請求が棄却されたり、企業側の請求が認容されたりと最高裁が懸案事項としている裁判の迅速化のためだけに使われることにもなりかねません。IT化の第一の目的が(弁護士ではなく)企業の使い勝手を向上させることにあるのですから、当然の帰結かもしれません

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