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高齢ネット右翼はどこから来たか? - 鈴木耕

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「週刊金曜日」(11月2日号)をめくっていたら、面白い記事が載っていた。倉橋耕平氏(立命館大学非常勤講師)と古谷経衡氏(評論家・著述家)の「『ネトウヨ』バブルはもう底を打った(上)」という対談である。

 なにしろ、倉橋氏によれば「古谷さんは一時、ネトウヨ(ネット右翼)と呼ばれる集団の中におられ、CSで放映している『チャンネル桜』のコメンテーターや、青林堂の右派雑誌『ジャパニズム』の編集長もされていました…」という古谷氏が、ネット右翼について「彼らはよく大学入試を突破したと思いますよ(笑)。その劣化ぶりは驚くべきでして…」とまで切り捨てているのだから驚く。ネット右翼の退潮現象を語っているのだ。

 まあ、中身は「金曜日」を買って読んでいただくとして、かなり面白い対談であることは間違いない。

 この対談の中で、古谷氏は「僕の経験から言うと、60代、70代の世代がコロッと『ネトウヨ』になるケースが最近、非常に目立ちます。光回線で常時接続。インターネット環境に容易に接続できるせいで、『え、知らなかった。日本がこんなことになっていたのか。中国人や朝鮮人に乗っ取られてしまう』みたいな思考になり易い」「あと、ぼくの調査だと首都圏のミドルアッパー以上の、自営業者が大半なんですね。それに医者とか…」とも語っている。

あるジャーナリストの分析

 最近、知人のジャーナリストと話す機会があった。そこで、前出の対談と同じく“ネット右翼” についての話になった。彼の感じでは「ネット右翼は一時の盛り上がりを欠いている」との意見だった。

 ネット右翼のツイートやブログには、あまりにデマやフェイクが多すぎて、さすがについていけなくなった層が増えているというのだ。
 しかし、古谷氏の言うように、新参組の中高年層、60代、70代の“にわかネット右翼”は、確かに一定程度存在する。その理由は何か? 彼らの最初のきっかけは、やはりTVだというのだ。

 以下は、そのジャーナリストとぼくの共同分析である。

◎まず、定年退職である。

 60歳で会社を去る。65歳定年の会社もあるが、とにかくその辺りの年齢で、リタイアする。ほどほどの規模の会社で大卒の社員であれば、それなりの退職金が出る。とりあえず、定年後もなんとか暮らしていけるだけの貯えもある。しかし、会社一筋で地域との結びつきはゼロに等しい。

 やることがない。ボランティアという手もあるが、会社での地位というヤツが邪魔して、なかなか“一般人”とは対等につきあえない。

 会社人間、趣味も持たなかった。映画も読書も仕事とは関係なかった。旅行は会社の出張でイヤになるほどした。会社を辞めて時間はたっぷりあるが、やることがない。仕方ない、テレビでも観ようか…となる。

◎テレビの影響

 やることがないからテレビを観る。それまであまり観たことのなかった朝や昼のワイドショー。

 かつて、ワイドショーは家庭の主婦向けで、芸能ネタが多かった。ワイドショーの時間に家でテレビを観ているのは専業主婦が主体、女性週刊誌と同じ構造だった。

 しかし、定年後のオジサンたちは、最近の芸能人なんてほとんど知らない。とくに若いタレントなんか、男女を問わず名前の区別さえつかない。観ても面白くない。

 そのことに、テレビ局側もやがて気づく。中高年男性は、政治にはそれなりの興味を持っているようだ。そこでワイドショーは芸能ネタに加えて政治ネタを増加させる。視聴率が少々上がる。この傾向が顕著になったのは、2007年あたりからだったという。

 ところが、ここで視聴者と制作側の年齢ギャップが出てくる。新たな視聴者群は60〜70代の高齢者層だが、作る側は30〜40代でネット環境にどっぷりつかった年齢層だ。彼らが影響を受けたのは、いわゆる“ネット右翼”の台頭期であり、右派系雑誌が元気よかった時代でもある。

 しかもSNSが普及。「ネットではいま、こんな話題で盛り上がっています」だの「〇〇さんの発言が炎上中」などという話がワイドショーでも大きな部分を占めるようになる。

 暮らしには比較的余裕はあるが、やることのない定年後の人たちが、こういうところから刺激を受けて、パソコンやSNSにはまっていった。“炎上”ってなんか面白そう。で、初めて自分の参加できる場所が見つかる。

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