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  • 祇園
  • 2012年03月10日 00:55

2月米雇用統計〜労働参加率が改善

3月9日に米労働省BLSは2月の雇用統計を発表した。以下は各指標である。


非農業部門雇用者数 +22.73万人
民間部門雇用者数 +23.3万人
失業率(U-3) 8.3%
週間平均労働時間 34.5h
平均時間あたり賃金 23.31ドル
U-6失業率 14.9%



以下は各指標の推移である(出所:米労働省BLS)


(1)非農業部門雇用者数増減(単位:千人)と失業率の推移


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(2)非農業部門雇用者数がリセッション前の水準を取り戻すまでの期間(WW2以降)


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(3)民間雇用者数(単位:千人)の推移


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(4)週次あたり平均賃金=時間あたり賃金*週間平均労働時間(単位:ドル)の推移


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(5)27週以上の失業者数=長期失業者(単位:千人)の推移


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(6)労働参加率(単位:%)の推移


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■ESTABLISHMENT SURVEY(事業者調査)


・2月の非農業部門雇用者増減は22.7万人となり、市場のコンセンサスである21万人を上回り、ヘッドラインはポジティブな評価であった。12月は22.3万人に、1月は28.4万人に上方修正となっている。民間雇用者数は23.3万人の増加となり、民間セクター主導の雇用回復が続いていることが示唆されている。


・製造業部門は2.4万人増加となった。1月が8.3万人の増加であったため、雇用増加幅は縮小した。うち、鉱業・掘削業は6千人増加、建設業は1.3万人減少、製造工業は3.1万人増加となった。製造工業のうち、耐久財は3.1万人増加、非耐久財は変わらずとなった。製造業全体では建設業で雇用減となったため、雇用増のモメンタムが継続したが製造工業は3.1万人増加と安定して雇用増となっている。特に一次金属、輸送用機器で雇用増が顕著となっている。一方で非耐久財はまちまちの結果となった。1-2月に掛けてのグローバル経済は欧州を中心に安定化の兆しが見えてきており、不透明感は払拭されているものの、中国経済のダウンサイドリスクが浮上しグローバル経済にどのように影響を与えていくかが注目されている。中国の景気減速の影響を今後米国の雇用はどのように受けるのか注目される。


・サービス業は20.9万人の増加となった。うち、卸売は8.4千人増加、小売は7.4千人減少、運輸・倉庫は1.06万人増加、情報は1千人減少、金融取引は6千人増加、専門職・ビジネスサービスは8.2万人増加、教育・ヘルスケアは7.1万人増加、観光・接客業は4.4万人増加となっている。専門職・ビジネスサービスのうち、人材派遣は4.52万人増加となっている。米国の民間雇用の受け皿はサービス業となっているが、その中でも教育・ヘルスケアの雇用は一段と拡大しており、特に2月はソーシャル・アシスタントや外来医療サービス等で大幅な増加がみられている。ベビーブーマー世代が大量に退職しており、高齢人口が増加していく中でこうした需要が高まっていることは雇用面から裏付けられている。また人材派遣も増加しており、需要見通しに不確実性が残っていることや、ここ1-2四半期で急速に高まっている労働コストを圧縮する動きも背景にあるものと考えられる。


・政府部門では、連邦政府が7千人減少、州政府が1千人減少、地方政府は2千人増加となった。2月は地方政府よりも連邦政府の雇用削減が響いた格好となっていた。地方政府は雇用が増加したものの、教育の増加(5.2千人増)によるものであり、教育除く職員は3.9千人減少となっており、財政難により雇用を削減する動きに歯止めが掛かっていない。以下は地方政府の雇用者数の推移である(出所:BLS)。


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・非農業部門の週間平均労働時間は34.5時間、時間あたり平均賃金は23.31ドルとなり、週間あたり賃金は前月から1.04ドル増加の804.20ドルとなった。賃金の伸びは緩慢であることが裏付けられた格好となっている。以下は対前年同期比の時間あたり平均賃金の伸びである(出所:BLS)。


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■HOUSEHOLD SURVEY(家計調査)


失業率は8.3(8.269)%となり、1月に比べて変わらずとなった。


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失業率が横ばい(実際には若干上昇)だったのは、失業率を求める際の(1)分母である労働人口が47.6万人増加したこと、そして(2)分子である失業者数が4.8万人増加したことによる。非労働力人口が31万人減少していることから、その中の一部は就業者として(42.8万人増加)、そして一部は失業者(すなわち求職している人)としてカウントされたものとみられ、これが失業者を押し上げたと考えられる。そして特筆すべきことは労働参加率が0.2%改善したことである。これは景気の拡大により労働参加意欲が高まったことが背景にあるものと考えられる。1月の家計調査では人口推計改訂のため前年12月との単純比較はできないものの、人口推計の影響を除いたデータでは大幅に労働人口が増加していた。従って、今後も継続的に労働参加率が改善していくかが米国労働市場の改善にとって大きな意味を持っていくものと思われる。今後、労働参加率が改善していくことにより、失業率の低下が加速することも考えられる。仮に3月に労働参加率が0.1ポイント上昇し、失業者が25万人減少するならば、失業率は8.1%となる。長期失業者(27週以上失業している人)は9.2万人減少の542.6万人となった。失業者に占める割合は42.6%となった。相変わらず高水準ではあるものの、緩やかながら改善がみられている。


■2月雇用統計の評価とFedの動向


2月の雇用統計は概ねポジティブな評価が多いものと思われる。


ポジティブファクター:非農業部門就業者数増減が継続的に20万人以上の増加となっていること、労働参加率が上昇したこと
ネガティブファクター:賃金の伸びが緩慢であること


このような評価であったものと思われる。賃金の伸びに関しては相変わらず緩慢な状況が続いているが、足元でユニットレーバーコストが上昇している。先日10-12月期の労働生産性改訂値が発表され、ユニットレーバーコストは前年同期比で3.304%の伸びとなっている。以下はユニットレーバーコストの推移(出所:St. Louis Fed)


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このことから労働コストが足元で高まっておりインフレの芽が生じていることが示唆されている。これについて、WSJでは、"Labor Costs Becoming Challenge to Fed, Companies"という記事で、


Left unchecked, rising unit costs will push up inflation pressures and cut into profit margins, creating headaches for the Federal Reserve and U.S. companies alike.

これまでチェックされなかった、ユニットレーバーコストはインフレ圧力を押し上げ、利益マージンを切り下げ、Fedや米国の企業にとって頭の痛い問題となりつつある。


Unit labor costs are rising faster than core inflation, “presumably an unsettling development for Fed policymakers who have premised their low inflation outlook on labor market slack and the lack of cost-push inflation” say economists at the Royal Bank of Scotland.

ユニットレーバーコストはコアインフレ率よりも速く上昇し、「恐らく、労働市場にスラックがあり、コストプッシュ・インフレの欠如により低いインフレ見通しを前提としているFedの政策担当者にとって不安なものとなろう」とロイヤルバンク・オブ・スコットランドのエコノミストは述べた。



しかし、本日発表された雇用統計では、賃金の伸びは前年同期比で1.9%の伸びであり、賃金インフレという様相ではなく、そのギャップが指摘されるところである。従って労働市場にスラックがあることから、賃金が伸びないというFedの前提は維持されている。ユニットレーバーコストの上昇は、恐らくはオバマケアに絡んで雇用主負担が嵩んだことが背景にあるものと思われる。以下の一文は1月のベージュブックにおける価格・賃金のサマリーの記述である。


Increases in the costs of employee health benefits continued to put significant upward pressure on overall compensation costs,

雇用主の医療給付コストの増大は全体の労働コストを著しく押し上げている



このような見方から、足元で賃金インフレは起きてはいないが、一方で労働コストは上昇しており、さらに足元で原油価格が再度高騰していることから、投入コストも上昇している、ということが指摘出来る。従って、これまでのコモディティ価格上昇時には投入コストの上昇と価格転嫁の動きだけが意識されていたが、現状はその投入コストの上昇と労働コストの上昇から、企業のマージン確保はより厳しい状況におかれているというべき状況となっている。労働コストの上昇を特殊要因とみなし、かつ投入コストの上昇要因がエネルギー価格の上昇であり一時的なものと判断すれば、基調的なインフレ圧力はそれ程大きくないと判断出来ないわけではない(勿論、タカ派メンバーはそうは見做さないだろう)。しかし、昨年もエネルギー価格の高騰が家計を直撃し、購買力を低下させ、消費マインドを悪化させ、消費を停滞させたことを踏まえると、少なくとも追加緩和をサポートするものではない。


来週にFOMCが開催されるが、今回は"wait and see"の姿勢を取っていくものと思われる。それ以降の政策についても、今後欧州の金融市場が混乱し、米国に波及して信用市場がタイトとなり、モーゲージスプレッドが拡大していくというのであれば、一部で伝えられているように、不胎化+MBSの購入という手段に打って出る用意はあると考えられる。また、4月のFOMCではFed経済見通し(SEP)が公表されるが、失業率の見通しやインフレの見通しが上方修正されることで、FOMC参加者による金融引き締めに移行するのが望ましい時期が前倒しされ、声明文フォワードガイダンスにある「2014年後半まで異例なほどの低金利を維持することを正当化するとの予測」の、2014年後半という時期も前倒しされる可能性もある

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