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ヨーロッパの良識のピンチ

 2005年以来13年にわたってドイツの首相を務めてきたアンゲラ・メルケル氏が、出身母体であるCDU(キリスト教民主同盟)・CSU(キリスト教社会同盟)の党首を辞任することとなった。先般の州政府議員選挙で両党の凋落がはっきりして、その責任を取るためである。ただし首相はもう少し続けるようなのでやや安心はしたが、影響力は残念ながら落ちてしまうだろう。

 G7構成国のほとんどがこの数年首脳交代を経験しており、メルケル首相が辞めると次に長いのは安倍総理ということになる。今ヨーロッパではシリアなどからの難民を受け入れるか否かで、各国とも苦労しているが、メルケル首相は数少ない受入れ派の代表格。しかしドイツ国民の多くはこれに不安を抱き、その母体であるCDU・CSUを選ばず、反対する緑の党や新興政党AfD(ドイツのための選択肢)を選んだのである。

 メルケル首相の影響力低下は難民問題に限らず、EUの存在価値そのものにも及ぶ。EUの屋台骨はドイツとフランスだが、フランスのマクロン大統領はまだ経験が浅く、いきおいEUの力が弱くなることが懸念される。ブレグジットで揺れるイギリスとEUとの厳しい交渉においても、力関係に変化が現れるかも知れない。

 さらに世界の潮流は、トランプ大統領に象徴されるように、一国繁栄主義や多様性を認めない排外主義が横行し始めている。つい先日も南米の大国ブラジルで ボルソナロ氏という極右で乱暴な言動を行う大統領が誕生したばかりだ。世界を席巻するポピュリズムがどこまで勢力を拡大するのか、とても恐ろしくなってきた。

 我が国は従来から国際協調主義を標榜しており、一国主義が蔓延して争いが絶えない世界にならないよう、良識を持ちスタンスを同じくするヨーロッパやアジアの国々との連携を強める必要がある。メルケル氏にはもう少し頑張ってくれることを祈らざるを得ない。

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