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特集・震災から1年 原発から12キロ、警戒区域の富岡町に1人住み続ける農家の訴え

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恩田勝亘氏(左)松村直登氏(右)撮影:田野幸伸
恩田勝亘氏(左)松村直登氏(右)撮影:田野幸伸 写真一覧
福島第一原発から12キロ、警戒区域に指定された富岡町に1人残り続け、動物たちの保護を続ける農業・松村直登さんと、35年前から原発問題を追い続け、先日講談社から「福島原発 現場監督の遺言」を出版したジャーナリストの恩田勝亘氏が、東京有楽町の外国特派員協会で会見を開いた。会見終了後、松村氏から貴重な警戒区域内の写真を提供して頂いたので、合わせてご覧いただきたい。(写真にはショッキングな表現が含まれます、閲覧にご注意ください)【取材:BLOGOS編集部 田野幸伸】

松村氏スピーチ


松村:皆さんこんにちは。福島第一原発から20キロ圏内、富岡町から来ました松村です。うちの町は3.11以来、ただ犬と猫と私がいるだけで、何も変わっておりません。東京電力の手伝いもなく、街はただ壊れていくばかりです。もう一年になり、町のみんなにも帰ってきてほしいのですが、政府は何もしてくれません。いつ、みんなが帰れるかも何も分かりません。

 私の両親も避難していますが、避難民はみんな疲弊しています。狭い小さな仮設住宅に入れられています。やることもない、顔見知りもいない。大変なストレスで多くの方が亡くなっております。政府も行政も何もできない。

 これが後、何年続くかもわからない。これが長く続くと、若い人は誰も町には帰ってこない。20年後、町はゴーストタウンに戻ってしまいます。私は仲間たちとNPO法人を設立して、政府に頼らず何とかしようとしています。自分でできることは何でもしようという覚悟です。

 今、富岡町に残された動物を救っていますが、それと共にかつての住民に戻って来てもらえるように除染活動も行いたいと思っています。このような思いが伝わって、政界の皆さんにも少しずつではありますが、協力してもらっています。世界の皆さんにも協力していただければ、小さな富岡町ですので、近い将来、何とかなるかもという希望をいだいております。

白骨化した牧場の牛
白骨化した牧場の牛 写真一覧
 私が生きている内に、富岡町を何とか復元したい。それが自分の使命だと思っています。日本のメディアは何も伝えてくれませんので、世界のメディアの皆さんに訴えたいのです。違法かもしれませんが富岡町の中に入って、何が起こっているのかを世界に発信してほしい。

 20キロ圏内の町すべてが元のように住めるようになる、それが私の夢です。私は生まれ育った富岡町が大好きです。一生ここから離れることはありません。東京電力と政府は、本当に嘘つきです。東京電力は将来、電力不足を理由に必ず福島の原発を動かすでしょう。

 たとえ私たち住民が富岡町に戻ったとしても、また原発事故の恐怖と立ち向かわなければなりません。東京電力にはなくなってもらいたい。東京電力の人は血も涙もありません。私は東京電力がいつかあのような事故を起こすと予感していました。

 東京電力は、今まで何回も放射線を漏らしています。それでも、テレビのニュースでは、お決まりの「ただちには人体に影響はありません」と流れます。東京電力のテレビのコマーシャルは、かつてはいつでも「安心、安全」な原発でした。

ミサイルだと思って逃げた東電社員


 東京電力の社員も、同じように洗脳されていたのではないでしょうか。事故直後に社員に「事故の時何をしていた?」と聞いたのですが、その答えは驚くべきものでした。その社員は事故の爆発音を聞いて、ミサイルが飛んできたと思って避難したらしいです。自分たちの原発が爆発したのではなくです。

 スリーマイル、チェルノブイリ、福島と、世界は3回も原発の爆発を経験しているのに、まだ懲りない。原子力に頼らず新しいエネルギーを開発しない限り、また、どこかで爆発が起こります。だから、私は東京電力は無くなればいいと強く思うのです。

 昨日、私は東京電力に行って来ました。補償の話をしたのですが、東京電力は政府に責任を押し付けたいのです。政府は政府で、東京電力に責任を押し付けたい。そうだから、一向に補償の問題は進まない。だから、私は政府か東京電力がつぶれればいいと考えたのですが、政府はつぶれない。それなら、政府と同じだけ力を持つ東京電力がつぶれればいいのです。

 友達と二人で行って怒鳴りちらしたのですが、ただ東京電力の社員は平謝りをするだけでした。多分、マニュアルを作っているのだと思います。

 私は、補償の問題は法廷に持ち込まれると考えています。私たちは、その頃には死んでいるでしょうが。なぜなら日本の歴史上、このような問題は裁判で、ほとんどの当事者が亡くなってから解決をみているのです。だから、世界の皆さん、原子力はやめましょう。そして、最後に皆さんがこのことを世界に伝えることで、世界の力で小さな富岡町を救ってください。以上、ご清聴ありがとうございました。

立ち入り禁止区域のため、道路の復旧もされていない
立ち入り禁止区域のため、道路の復旧もされていない 写真一覧

恩田勝亘氏スピーチ


恩田:恩田と申します。私と原子力との関わりは、35年前に福島第一原発に取材に行ったときでございます。どうしてかと申しますと、現場の作業員の方が被曝で数人から十数人亡くなっていると聞いたからでした。

 作業員の方は、地元で農業や漁業をやっている方、また地元を出て出稼ぎをやっている方で、そのような方が地元に仕事ができるということでやっておられました。その作業員に聞きますと、原子力の基本的な教育はほとんど行なわれておらず、講習という簡単なものを儀式的にやるだけでした。

 そして、すぐに炉内に入れられるのです。作業員の方は放射線の危険性をわかられておらず、自身の被曝量さえほとんど把握されていなかったのです。その時の第一印象は、とても言い尽くせないのですが、原発というのは、人の命の上に立つ技術なのだといことです。人を動植物と同じように扱っているのです。

 次の年、中部電力を「東海大地震と原発」というテーマで取材いたしました。私は東京電力、中部電力の原発、両者とも中に入りました。内部構造も把握しましたし、被曝の問題も把握しました。その上、技術的な観点から、大地震が来たときに原発がどのような挙動を起こすかということが気になりました。

 原発が事故を起こせば、内部の作業員だけではなく周りの住民の方、そして日本全国の方、はたまた世界中の方に影響を及ぼすのだという認識に至りました。以来、週刊誌の記者をしていた私は、機会があるごとに、原子力について書くようになりました。チェルノブイリ、柏崎刈羽、もちろん福島、私なりの記事を書き問題点を発信して参りました。

 今日の事態を招いたのは、五年前の柏崎刈羽で地震と原発事故の因果関係を目の当たりにしたのに、皆さんが無視し続けられたからだと思っています。その時、私は早急にこの問題をまとめなければならないと考えました。そして、出版したのが「東京電力・帝国の暗黒 」です。

技術者からの内部告発


 そのとき、私にとって大きな力になったのは、元原発配管技師であられる平井憲夫さんです。昔は、私たちジャーナリストは電力側内部の話を聞く機会を持てなかった。そして、初めて内部からの告発を聞けたのが平井憲夫さんでした。

 その平井さんに先ほどの作業員の被曝の問題、内部構造の欠陥の問題を手に取るように教えていただきました。原子力業界は強固な一体構造で、私は密かに「原子力マフィア」と呼んでいました。その力の源泉はなんと言ってもお金です。

 お金の力で安全神話を振りまき、私を含めたマスコミを黙らせてきたのです。このような事態を招いたことに対し、私は無力感しか感じていないです。私はフリーのジャーナリストですが、ファイティングスピリットはあると自負しておりますので、松村さんのような方を念頭に置きながら、書き続けたいと思っています。

 最後に、私が長年原子力の問題に関わる中で、出会った三人の方に言及しておきたいと思います。はじめに、平井憲夫さん、福島第一の1号機から4号機が一番危ないと生前から言っておられた方で、私に原子力プラントの基礎的知識を多く授けてくださった方です。

 もう一人が、高木仁三郎という方で、研究者で、様々な場面でアドバイスをいただきました。三人目は、浪江町で農業をなさっていた舛倉さんという方です。東北電力の浪江小高原発計画に反対をし続けてきた方です。

 皮肉にもその方の反対グループのおかげで、東北電力は今回の大地震において助かったと思います。もしこの計画が成っていたら、福島第一原発からたった10キロのところに新たな原発が建設されていたはずです。第一、第二と、浪江町、三つの原子力施設が大地震と津波にさらされていたことになります。

 もし事故があったとすると、どれだけ深刻な事態になっていたでしょうか。この三人の亡くなった方は、もし生きておられたら、今回の事故に対して怒りのようなものを感じておられると思います。私はジャーナリストですから、引き続き原発等の取材をいたしますので、皆様メディアの方、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

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