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  • ヒロ
  • 2018年11月05日 11:34

アメリカ生まれがアメリカ人になれなくなる日

アメリカは移民国家として現在の地位を築き上げました。その背景には広大な国土を開発し、潤わせるために多くの人を必要とした前提もあるでしょう。

そのため、アメリカの憲法修正第14条第1節には「アメリカ合衆国で生まれ、あるいは帰化した者、およびその司法権に属することになった者全ては、アメリカ合衆国の市民であり、その住む州の市民である。如何なる州もアメリカ合衆国の市民の特権あるいは免除権を制限する法を作り、あるいは強制してはならない」(ウィキ)とあるのですがトランプ大統領はこの明文化された内容を覆そうと企てているようです。

ほとんどの国家では生まれてきた子供の国籍を決めるにあたり二つの方法のどれかによって決められます。出生地主義と血統主義であります。前者は生まれた場所が国籍の決定要因となり、後者は親の国籍を継承するという発想です。また「ほとんど」と記したのは出生主義と血統主義の中間的な立場をとる国(英、独、仏、オーストラリア、ロシアなど)もあります。いうまでもなく、日本は血統主義でアメリカやカナダは出生地主義であります。

北米に長く住んでいると当地で子供を生む日本人夫婦も多く見かけますが、その場合、アメリカなりカナダなりの国籍が自動的に付保されます。日本が二重国籍を禁じていることからその子供が成人した際に国籍選択を迫られます。但し、ばれないようにしている人も多く、二重国籍を維持している人が多いのも事実のようです。

さて、今回、トランプ大統領が突如としてこのアメリカの理念の根幹にかかわる出生地主義を見直す、と述べたのはAxiosという新しいテレビ番組でのインタビューの際でした。彼は大統領権限で執行できる大統領令でこれを変えることができると述べていますが、アメリカ法曹界などで議論が沸き上がっています。

ではなぜ、こんなことを突如として言い出したのでしょうか?一つには大統領就任以来話題を巻き起こしていた人種の選別主義という個人的価値観と主義があるでしょう。次に英国のEU離脱問題やメルケル首相を引退にまで追いやった難民問題を目のあたりにしたことがあります。3番目にメキシコなどからの不法滞在者がアメリカで産んだ子がアメリカ人になり社会保障費などの負担が増大している事実、4番目にグアテマラやホンジュラスなど南米からアメリカを目指す数千人規模の不法移民(難民)が現在、メキシコを北上中であることでしょう。

この4番目の事実は見過ごせなく、台風の予想進路のごとく、いつ頃どの辺に到着するのか、着目されており、アメリカは軍を出して警戒に当たることになっています。それが中間選挙の時期に重なることもあり、絶好のアピールポイントになっていると考えています。

ではトランプ大統領は本件、どこまで真剣なのでしょうか?私は案外本気ではないかと思っています。入国者のコントロールは今や先進国における喫緊の課題であります。ドイツが施した難民向けの教育や就業補助はとてつもない労力と対価がかかったのにうまくワークしていません。日本は島国の上に難民申請に対する許可率は極めて低いものになっています。カナダはアメリカを通り越えてこないと難民が入りにくい環境にあり、難民コントロールしやすい状況です。となればアメリカはなぜ、これで苦労せねばならぬのか、という論理には一定の説得力はあるでしょう。

アメリカもカナダも移民国家であるそのポリシーは変わらず、その移民の質を問いているのが今回の話であります。両国とも移民や国籍取得へのハードルは徐々に上がってきています。かつては「あなたの国を愛しているから」ぐらいで移民権をもらったという猛者もいました。移民権の次の市民権申請ではカナダで一昔前、「オーカナダ」という国歌が歌えれば合格などといわれた時代もありましたがこちらも厳しくなっています。私の知り合いは市民権申請で失敗し、国外退去命令が出ました。

では先進国がその扉を締めてしまえば貧しい国の人たちは何処に行くのか、と言われると極めて難しい問題になります。基本的には弱体化している国家の自立と確立を国際機関がサポートする体制が望ましいのですが、内政干渉にも限界があり、人権問題と相まって判断は難しいところであります。

ただ、経済的困苦のある人たちがアメリカをバラ色の天国と思ってしまっては間違いです。確かに賃金は良いでしょう。しかし、それにありつくためのハードルも高く、物価も相応に高いことを忘れてはいけません。カナダにはフィリピン人が移民しやすいのですが、何時まで経ってもナニー(ベビーシッター)や清掃業から抜けられない人ばかりというのも実態なのです。

トランプ大統領の本気度は何処までなのか、それがもしも実行されればアメリカの根本政策は大きく舵を切る、ということになりそうです。

では今日はこのぐらいで。

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