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自民党の「改憲案」はどうしてダメなのか

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安倍晋三首相が憲法改正の議論を本格化させようとしている。しかし、自民党の改憲案を読むと、基本的人権がおろそかにされているなど問題点が多い。なぜダメな内容になってしまうのか。橋下徹氏と木村草太氏が語り合った――。

※本稿は、橋下徹・木村草太『憲法問答』(徳間書店)を再編集したものです。

橋下徹氏(右)、木村草太氏(撮影=藤本薫)

■政治家は憲法を読んでいない?

【橋下】せっかくこうして木村さんと憲法について対談できるので、いろはの“い”を教えるものよりも、政治をやっている人間が見て参考になるようなレベルを目指していきたいですね。

というのも、憲法の話は国会議員でさえもよくわかっていないんですよ。僕が代表をやっていたとき、維新の会の国会議員と話をして驚いたことがありました。議員なのに憲法の教科書で薄いものすら読んでいない。

一番驚いたのは自分の思い描く国家像や、国の理想像を書くものが憲法だと思っていた議員が多かったこと。だから憲法草案に「家族を大切に」「皇室を大切に」みたいな話を入れ込もうとしていたんですが、それは違う。憲法は宗教本でも思想本でもない! 憲法というものはなんなのかを理解していない人たちが国会議員に多いんだと衝撃を受けました。

でも僕自身がそういう政治家を誕生させたんだから、衝撃を受けたってしょうがないんだけどね……。そこは反省しながら、でも憲法の基本を知らない人たちが今、国会議員をやっていて憲法を論じている。びっくりします。

【木村】維新の会では、リクルートのプロセスで憲法の知識を考慮していなかったんですか?

■悪意はなく単に誤解や勉強不足が原因

【橋下】まったく考慮していなかったですね。正直、時間的余裕がなく、試験をやるほどのマンパワーもありませんので、そこまでの吟味はできないです。

でも今思うとプロの法律家レベルの知識でなくても、憲法について基本知識を持つのは政治家として最低限必要だと思います。権力者に対して、権力を適正に行使させる源が憲法。ところがその権力者自身がそもそも憲法というものを知らなければ、権力者が憲法に則(のっと)って権力を行使することなどできませんからね。

【木村】議員は立法府で仕事する人たちなんですから、立法の前提となる知識は知っておいてほしいですね。

【橋下】憲法と法律の違いは憲法を勉強して初めてわかります。「憲法は国の一番重要なルール、理想像だ」というレベルじゃ困る。理想の国家像を入れ込むものだと思っている人は、維新の会に限らずいるんじゃないかな。自民党の改正案をみると「家族は、互いに助け合わなければならない」などと書いてありますし。

【木村】悪意があるのではなく、単に誤解や勉強不足が原因になっていると。

【橋下】そうです。憲法に入れ込むもの、入れ込んじゃいけないもの。そういうところから始めたほうがいいのかもしれません。

【木村】面白い論点ですね。では、最初は「何を憲法に書くべきじゃないのか?」をテーマに話しましょうか。

■憲法は国に対する義務規定

【木村】その前にまず、憲法の基本について簡単に説明できればと思います。

「憲法」を一言で説明すると「国家権力を縛るもの」です。国民が安定した生活を送るために、国家権力はなくてはならないものです。しかしその一方で、国家権力はあまりに強大なため、ほかの国と戦争を起こしたり、国民を弾圧したりと濫用(らんよう)される可能性があります。しかも、濫用された場合の害悪は計り知れません。

そこで、主権者である国民は、過去の国家の失敗の経験を踏まえて、そうした失敗を繰り返さないように、国家に権力を与える条件を憲法に書き込むのです。国民を弾圧しないように「基本的人権の尊重」を定めたり、権力が集中しすぎないように「三権分立」を説いたりします。憲法は、権力のあり方や、その限定を定める法典なのです。

【橋下】そうそう。憲法は極めて実務的で、国家権力をどう動かすのかを定めるものです。

■ポエムは憲法にいれるべきではない

【木村】家族を大切にするかどうかは、最終的には個人が自ら考える道徳の領域の話であって、憲法に書くべきことではありません。ときどき、「家族を大事にするのは当たり前のことなのだから、憲法に書いたって、特に悪いことは起きないだろう」という人もいます。

しかし、こういった文言を憲法にうかつに入れてしまうと、せっかく憲法が定めた権利保障を解除するために使われることになります。例えば、自分ではどうにも生活できなくなった人が生活保護を申請しようとしたときに、「憲法に書いてあるので、家族の扶養でどうにかしてください」「憲法に書いてあるので、家族で助け合えない人は援助しません」といった対応を許す解釈を導く可能性があります。

【橋下】日本のこころの改正案もどうかと思いますね。前文に「四囲を海に囲まれ、四季が織りなす美しい風土の中で、時に自然の厳しさと向き合いながら、自然との共生を重んじ」と書いていますが、そういうポエムは憲法に入れるべきではありません。

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