あなたは自分を売り込むときに「××ができます」と話していないだろうか。それは逆効果かもしれない。イベントプロデューサーの水代優氏は、「人から頼まれた仕事をこなしていくうちに、自分の得意なものがわかるようになる。だから『××ができます』というアピールではなく『××をしました、楽しかったです」という小さな報告をSNSでするようにしている」といいます――。
※本稿は、水代優『スモール・スタート あえて小さく始めよう』(KADOKAWA)の第2章「一歩を踏み出すコストは『自分の人件費』だけ」を再編集したものです。
「何とかしてくれない?」に応えてみる
どんなことであっても、「まず、始めてみる」ことが大切だと僕は常々思っていますが、そんなときに、「何を始めるか」を決められずつまずいてしまう人が多いようです。何か新しいことをやれば楽しいような気がするし、やるべきだと思っているけれど、具体的に何をしたらいいのか見当が付かない、という人もいると思います。

でも、あまり難しく考える必要はありません。
もしそうなら、「やりたいこと、やらなくてはいけないことのある誰か」を助けるところから始めてみるといいと思います。
「ちょっとこれ、手伝ってくれない?」などと誰かに言われたら、それは小さく始める(スモール・スタートをする)ビッグチャンスです。
任されて気づいた、周りから見た自分の「得意」
僕が独立するきっかけになったのはレストランのプロデュースの仕事だったのですが、それも、「手伝ってくれない?」に「いいよ」と答えることから始まりました。
当時の僕の本職はカフェの店長で、飲食店の運営にはある程度の経験と実績がありました。だからこそ、声をかけてもらったのだと思います。僕が何のプロフェッショナルであるかを知っていての声がけだったと解釈しています。
このことは、僕にとって自信になりました。「なるほど、この人は僕のことを、“食材の生産者とのつながりを重視した新しいレストランのプロデュース”ができると見込んでいるんだな」とも思いました。
そしてそれは同時に、驚きでもありました。
僕はある時期まで、自分の強みは「デザインがわかること」だと思っていました。カッコいい空間作りが得意だと思っていたのです。
ところが、これは独立後に顕著になるのですが、任される仕事は、“役所や関連部署との調整”が“デザイン”を上回っています。その理由は、調整の仕事が面倒だと思う人が多いからかもしれませんが、わりと僕がそれを苦にせず、やれてしまうということもあると思っています。
つまり僕は、周りの人から見ると、「デザインがイケてる奴」なのではなく、「調整がイケてる奴」なんだと前向きに考えています。
もしも調整仕事を任せてもらわなければ、そしてそれを「あんな面倒なことをやれるなんてすごいね」と誰かに言ってもらわなければ、僕は自分のイケてるところに気付けなかったでしょう。そして、さほどイケてないデザインにこだわって、仕事を広げられずにいたかもしれません。
「自分、デザイン得意なんでやります」と言葉だけでアピールしていたら、「あいつは、デザインデザインって言っているから、調整の仕事を頼むのはやめておくか」と思われてしまっていたかもしれません。
なので今の僕は、「何ができます」というアピールではなく「何をしました、楽しかったです」という小さな報告をSNSでしています。見ている人は「あいつ、あんなことができるなら、これを頼んでみようかな」と考えてくれると思うからです。
きっと会社の中で新たな仕事を打診されるのも、こんなきっかけで起こることが多いのではないでしょうか。そうした頼まれごとをこなしていくうちに、それが得意なことになっていくはずです。
自分の強みを見つけるために人を褒める
僕は、人を褒めるようにもしています。褒めるのは照れくさいと感じていたこともあるし、下心があると思われるんじゃないかと恐怖を感じていた時期もあります。でも、あるとき考えが変わりました。
今では、「そうやって相づちをうってもらえると、すごく心強いです」「ネイル可愛いね」「そのメガネいいね、どこで買ったの?」などと細かく褒めることもあれば、「ホント、あなたのことが大好きです」とすべてを褒めることもあります。その理由は、褒めれば褒めるほど、褒め返してもらえると、あるとき気付いたからです。
前述のように、僕は自分が他の人よりも何が得意かに気付いていない期間があって、その間は“損”をしていたのかもしれませんが、そういう時期も必要だったのかなという気はしています。でも、もしも若いときに「水代のいいところはここだ」「お前はここが優れている」とド直球で言ってもらえていたら、「自分のやりたいこと」と「力を発揮できること」の重なる部分を、もっと早く見つけられていたかなとも思います。
だから今も、「他の人から見た自分の良さ」はどこなのかは気にしています。好かれたいというよりも、どう見えているかを知りたいのです。