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この国のホームレスのカタチ


日本国憲法ではすべての人が享受すべき基本的権利として、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとされている。ならば、日本でホームレスが存在して良いはずが無いのだが、厳然としてホームレスは日本の各地に今も生きている。

厚生労働省はホームレスの実態に関する全国調査を定期的に行っており、ホームレスの実態把握を行っている。本エントリでは最新の平成28年度調査に基づき、ホームレスの姿を明らかにしたい。

Tableau Publicのデータは次にある。

ホームレスの実態に関する全国調査


まずはホームレス数の推移だが、2007年に18,764人を数えたホームレスの人数は、2018年には4,977人と5,000人を割るレベルまで減少している。内4,607人が男性となっている。都道府県別に見れば東京都、大阪府、神奈川県が突出して多い。一方で、青森県、秋田県、山形県、奈良県、島根県、長崎県ではホームレスが1人も確認されていない。居住場所としては昔は河川や都市公園が多かったが、最近では道路、その他施設も含めて分布している様子が見える。


年齢分布を見ると60台が中心的だ。60歳以上が全体の65.7%となっており、やはり高年代が支配的になっていることが分かる。80歳以上も22人確認されており、体力的に危険な状況にあることが推測される。寝場所の作り方を見ると、常設が34.3%なのに対し、寝場所を特に作らないが12.4%、簡単に敷物をしいて寝るが25.8%もいる。気温が下がる冬が心配だ。路上生活期間は10年以上が34.6%と、一度ホームレスに慣れてしまうとそれが長期化することが見て取れる。


ホームレスの55.6%、半数以上が何らかの仕事に就いている。仕事の内容は廃品回収が6割、次いで建設業・運輸業の日雇と世間一般の認識と齟齬はなく、その月収も数万円というところのようだ。月収数万円であれば食費を賄うだけで精一杯だろう。

一方で仕事以外の収入がある人が全体の2割いて、年金や友人・知人からの支援が多い。金額的には10万円未満といったところだが、金額が多いのは年金受給者だろう。15万以上収入があるのであればホームレスから脱却できそうだが、しっかりとしたダンボールハウスを保有しているのであれば、税金もかからないし快適なのかもしれない。


ホームレスの悩みは多岐に亘るが、食事、住居、衛生に関する悩みが目立つ。これらは健康で文化的な最低限度の生活に不可欠な要素であり、当然のことながら、ホームレスの方々には欠けている要素だ。さらに周囲の人々からのいやがらせや立ち退き要求なども悩みのタネとなっているようだ。

ホームレスとなった理由を見るとやはり失業が多い。金の切れ目が縁の切れ目と言うが、仕事を失い収入だけではなく社会との縁すら失ってしまうのが、この国における典型的なホームレスの生まれ方と言えるだろう。また、飲酒、ギャンブルが原因でホームレスとなった人も6.0%存在し、ギャンブル解禁がこの数値に影響を与えるかどうかもこの先留意すべきだろう。


ホームレスとなると一番気にかかるのは健康状態だ。体の具合が悪いと感じている人は全体の27.1%、自覚症状としては歯痛、腰痛、不眠、目眩などが多い。診断の履歴を見ると、高血圧が目立つが、受診していないので病気かどうかわからない人が28.2%がいる。虫歯は致命的ではないかもしれないが、治療できず我慢するしか無いとすれば、ストレスがたまり心身に悪影響を及ぼすだろう。


生活保護制度はホームレスのフェイルセーフとなるべき制度であり、ホームレスの人々こそ受給すべきだ。その利用・相談状況を見てみると、利用したことがあるのは32.9%なのに対し、相談も利用もしたことがないのは63.1%にも上る。相談をしたが断られた人は全体の2.1%と比較的少なく、ホームレスの方々に対して行政が門前払いにしているというケースはそれほど多くはないようだ。

生活保護制度を利用した人は入院、宿泊などにおいて生活保護を受けているようだ。ただ、ホームレスの3割が生活保護を受けているにもかかわらずホームレス状態が解消されていないということは支援の内容や期間が不十分であると言える。

生活保護制度を利用しない人の理由を見ると、制度を利用したくない人が全体の半数を占める。他人の施しを受けることを潔しとしないと考えているとすればその精神は尊重されるべきだろうが、利用を躊躇わせる有形無形の空気や圧力、障害があるとすれば、それは取り除かれなければならない。財源は無限ではないので、生活保護の受給数が増えるのは問題だが、基本的人権の保護を第一優先とするのであれば譲れない。仮にそうでないのであれば、それこそ改憲して優先順位を明確にすべきだろう。


ホームレスの方々に今後の生活について聞くと、35.3%の人が今のままホームレスで良いと答えている。その理由を聞くと、今の場所に馴染んでいるとするのが32.8%、低収入であっても都市雑業的な仕事があるので暮らしていけるとするのが27.2%を占める。求職活動状況を聞くとその予定も無いものが72.6%となっている。

その理由を聞くと、様々な事情でそもそも働けない人、今の仕事で満足している人を除いた半数は働く意志があっても仕事を見つける上で何らかの障害があるとしている。これを解決しなければホームレス状態からの脱却は困難であり、どう支援していくかが人口減社会においてはより重要となるだろう。

住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査

上述のようにホームレスの数は減少傾向にあるが、近年はネットカフェ難民の増加が見られる。ネットカフェ難民については全国レベルの調査はなされていないが、東京都が住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査を行っている。

それによれば東京都の平日1日のインターネットカフェ・漫画喫茶等のオールナイト利用者概数は約15,300人と推計される。オールナイト利用の理由が「現在『住居』がなく、寝泊りするために利用」である者が25.8%となっているので、住居喪失者であるネットカフェ難民は東京都全体で4,000人いると推定される。

先の調査でホームレス数が全国で5,000人とされているのに、東京都内だけでネットカフェ難民が4,000人いるのだ。ホームレスの数は減ったのではなくネットカフェ難民へと形を変えたに過ぎない。河川や都市公園でホームレスを見かけなくなってきているとすれば、ネットカフェに移動しているのである。


上記の4,000人のネットカフェ難民の内、派遣労働者、契約社員、パート、アルバイトなどの不安定就労者が占める割合は75.8%、およそ3,000人に上る。低所得の非正規社員がネットカフェ難民の大半を占める状況が見て取れる。年代的には30-39歳が最も多く38.6%を占め、ホームレスよりも年齢層が若い。月収は11-15万円が46.8%と全体の半数程度であり、やはりホームレスの平均値より若干高い。

ネットカフェ難民の内43.8%が寝泊まりに路上を利用しており、その頻度は週に1-2日程度が57.2%が最も多い。ネットカフェ難民の半数は毎日ネットカフェに宿泊することも困難なホームレス予備軍なのだ。仕事もホームレスもパートタイムなのが彼らなのである。

じわじわと見えにくいカタチでこの国に貧困は広がっている。目に見えるホームレスにすら十分な支援が行えない状況で、隠れるように生きるホームレス予備軍には支援の手が届きにくい。消費増税、移民受け入れなど彼らを取り巻く環境はより厳しくなっていく。貴重な働き手を使い潰すような愚行をいつまで続けるのだろうか。

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