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高齢化対策と若き医療者の成長 福島からの発信

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誠励会グループが開設した特別養護老人ホーム「さくらの里」©誠励会グループ

上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)

【まとめ】

・地方でケア施設は大きな雇用先、若い医療関係者の経験の場。

・彼らの活躍に、地域に根付く「プロデューサー」の存在不可欠。

・「廃校がケア施設に」論文は意義あり。情報発信が重要。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=42700でお読みください。】

10月29日、福島県田村市を訪問した。福島県石川郡平田村に本拠を置く誠励会グループが開設した特別養護老人ホーム「さくらの里」の開設式に参加するためだ。

さくらの里」は、東日本大震災後に閉校した菅谷小学校の跡地に建てられた(トップ画像)。11月1日オープン予定で、定員は100人だ。佐久間裕施設長は「すでに多くの方に申し込みをいただき、すぐに満床になりそうです」という。

田村市は阿武隈高地の山中の町だ。郡山市から国道288号を福島第一原発に向かって20キロほど進むと到着する。坂上田村麻呂伝説で有名な地域だ。ご多分に漏れず、この地域も2017年高齢化・過疎化が深刻だ。1970年に5万2,926人(合併前の該当する地域を合計)だった人口は3万7,742人(2017年1月現在)まで減少した。一方、高齢化率は33%。田村市は2025年には38%を超えると推計している。

「さくらの里」は、地域にとって貴重な存在となるだろう。同時に多くの労働世代を、この地域に招き入れる。「さくらの里」を開所するにあたり、約50名の介護職や看護職が、この地で働くようになった。

首都圏や関西のような都市部の住民には想像がつかないだろうが、地方都市では医療や介護施設が役所と並ぶ大きな雇用先というのは珍しくない。誠励会グループは、阿武隈高地において、まさにそのような存在だ。

ご縁があって、東日本大震災以降、筆者は誠励会グループとお付き合いしている。佐川文彦理事長は「故郷である福島を何とかしたい」と考え、地元が必要とする医療・介護施設を立ち上げてきた。現在、ひらた中央病院という急性期病院から訪問看護ステーション、介護施設、さらに内部被曝を検査する公益財団法人震災復興支援放射能対策研究所まで手がけている(参考:Business Journal 2015年7月6日)。地元住民は「誠励会のおかげで、地元で医療や介護を受けることができる」という。

誠励会グループのような存在は、我々にとっても有り難い。医師や看護師が一人前になるには、診療と臨床研究が必要だ。現場で経験を積んで、自分の頭で考え、論文として発表することを繰り返す。

高齢化社会で、どのように医療や介護を提供するかは世界共通の課題だ。福島県の阿武隈高地で起こっていることは、数十年後に東京は勿論、他の先進国でも起こる。特に深刻なのは中国だ

今年3月、上海市民政局などは2017年末時点での上海戸籍人口のうち60歳以上が占めるのは33.2%と発表した。対前年比で1.6%増だ。周辺地域から若年人口が流入しているため、福島と同列に議論することは出来ないが、一人っ子政策を続けてきた中国が急速な高齢化に直面していることは間違いない。日本の高齢化問題に中国人の研究者は大きな関心を抱いており、我々も上海の復旦大学などと共同研究を進めている。

高齢化対策は、若き医師や看護師にとって、最大の課題といっていい。下品な言い方だが、今後の成長が期待出来る領域だ。問題は、どうやって高齢化対策に立ち向かうかだ。

従来、若き医師や看護師は都市部の大病院に勤めて、高度医療を学んだ。かつて、患者の多くは50~70代だった。面倒をみなければならない未成年の子ども、あるいは年老いた親がいて、彼らを残して死ぬ訳にはいかなかった。少しでも長生きするため、自ら病院を受診し、手術などの侵襲的治療を希望した。医師や看護師は、病院で待っていればよかった。

ところが、最近は違う。患者の多くは8090代。単なる延命は望まない。住み慣れた我が家で、家族と過ごしながら、闘病したいと考える。彼らをケアしようと思えば、医師や患者が現場に出かけなければならない。普段、付き合うことがない病院職員以外の地域住民とも付き合わねばならない。

こうなると、経験が浅い彼らにはどうしていいかわからなくなる。彼らが活躍するには、地域に根付いた「プロデューサー」の存在が欠かせない。誠励会グループは、まさにそのような役割を担っている。私は、将来有望な若手医師や看護師を誠励会グループに紹介している。彼らの活躍の一部をご紹介しよう。

▲写真1 西川佳孝医師。誠励会グループのひらた中央病院(福島県石川郡平田村)で。©上昌広

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