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「はじめに消費増税ありき」というデフレ思考

■アップルとドコモの大きな違い

 米アップル社が11月1日に発表した決算は、売上高が約20%増、純利益が約30%増となり、それぞれ過去最高となった。
 これだけの好業績であっても、毎度のように「アナリスト予想よりも低かった」ということで、株価は(一時的に)下落した。

 周知の通り、アップルは、主力製品であるiPhoneの販売台数が伸び悩んでいたことで商品価格を値上げするという戦法に出た。その戦法がどこまで通じるか判らないまでも、実際に売上も利益も大幅にアップしているわけだから、現状の値上げは功を奏したということなのだろう。
 このことは、消費者が本当に欲している生活必需品であれば、多少の値上げでも受け入れる人の方が多かったということを示している。

 一方、日本では、おそらくは米国同様、最も生活必需品に近い存在となった携帯電話(スマホ)の使用料金を引き下げるという方針をドコモが発表した。その影響で、通信関連株は急落することになり、市場は(一時的に)ドコモショックとも言えるような様相を呈した。

■消費税収を増加させる2つの方法

 消費増税の悪影響を最小限に抑えるための緩衝材(クッション)として携帯電話料金の値下げが行われるというのが、官民協力の方策なのかもしれない。スタントマンがビルから飛び降りるには、地面に敷かれたクッションは大きければ大きいほど良い、分厚ければ分厚いほど良いという理由で、携帯電話料金が選ばれたのかもしれない。
 しかしながら、商品価格やサービス価格を引き下げることは、売上や利益が下がるだけでなく、消費税収を引き下げることでもある。

 例えば、1万円の商品が売れれば、800円の消費税収となるが、1万円の商品を8000円に引き下げれば、消費税収は640円に減少してしまう。
 逆に、1万円の商品を12000円に値上げすれば、消費税収は960円になる。

 当たり前の話だが、消費税収を増加させるには、消費税率を上げる方法と、商品そのものの価格を上げる方法がある。(もう1つ追加するなら、商品を多く売るという方法もある)

 政府は専ら、前者の消費税率を上げることだけに固執しているかのようで、後者の商品価格を上げるという発想が無いようにも見える。

■「消費増税」ではなく「消費税収」に目を向けるべき

 現代の日本において、携帯電話(スマホ)は生活必需品であると同時に趣味嗜好品でもある。「お金が無い」「お金が無い」と言いつつも、消費者が湯水のようにお金を注ぎ込むことが最も期待できる市場でもある。
 そんな市場であるなら、アップルを見倣って、その市場から消費税収を上げる方策を打ち出した方が良かったのではないかとも思われる。

 スマホを安く利用したい人には、既にMVMO(格安スマホ)市場というものがあるのだから、税収増が見込める普通のスマホ市場まで格安にする必要は無かったのではないかとも思える。
 こう書くと、「携帯電話料金が安くなって何が悪いんだ!」というような反論があるかもしれないが、携帯電話料金を大幅に引き下げることで、消費税収も大幅に落ち込めば、更なる消費増税という悪夢が現実化するかもしれない。そうなると、元も子もなくなってしまう。

 結局のところ、「はじめに消費増税ありき」というマイナス思考が問題なのかもしれない。「消費増税」ではなく「消費税収」に目を向ければ、いろんな経済政策が打てると思われるのだが、「デフレ脱却」のために「デフレ政策」を打つという皮肉、これも長年続いたデフレ思考の為せる業だろうか。

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