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天然ガスに関するエネルギー戦略

 「島国で天然資源のない我が国は、多くを輸入に頼らなければやっていけない」と昔から言われてきました。ただでさえ多い燃料の輸入が、震災以降の状況によりさらに増えつつあります。貿易収支も赤字となり、先日発表された今年一月の貿易統計でも、液化天然ガスについては数量で28.2%、金額で74.3%(一月ひと月で2323億円)の増加(前年同月比)を見せています。

 国の将来を考えたエネルギー政策がどうあるべきかについては、原子力や化石燃料といったリスクがあるエネルギーの位置づけをどうするかの議論をきちんとする必要がありますので、別の機会に譲りますが、少なくとも政治が直面する現実的な問題として、「少なくとも当面は天然ガスの輸入量が従来よりも増える可能性が高い」という事実に向き合わねばなりません。

 そして、そのことを考えるときに無視できないのが、我が国における天然ガスの価格は諸外国に比べ非常に高いという事実です。我が国においては、天然ガスといえば液化天然ガス(LNG)のことですが、日本におけるLNGの価格はなぜか原油価格に連動しています。契約のフォーミュラ自体がそうなってしまっているのです。結果として、我が国の天然ガス価格はヨーロッパの倍、そしてアメリカのほぼ5倍です。

 その最大の理由は、我が国にあってはパイプラインによる生ガスの輸入がないからともいわれています。確かに今アメリカなどでシェールガスなどの非従来型の天然ガスが「発見」され、天然ガスの価格はある程度のところで抑えられています。特にアメリカ市場においてはここ数年非常に安い。そこで、アメリカからもLNG化して輸入しようという動きもあちこちに出てきているようです。

 しかし長期契約、しかも定量の契約となる我が国の今の状況では、そもそもLNGには「マーケットなどあってないようなもの」であり「価格の透明性はなかなか求めにくい」(エネルギー会社の担当者)。しかも原発を一時的に停止し天然ガスに対する電力ニーズが非常に高い今の現実の中では、輸入先の選択肢が広がったところで、LNGの中での選択であれば、結局のところ、使い手、ユーザーが売り手と対等に交渉し、適正な値段決めをすることはまず不可能と思われます。そもそもLNGの価格が原油価格に連動するということ自体、原油の代替物としてLNGを使用するという使う側の足元を売る側が見た価格決定プロセスであり、その力関係を浮き彫りにしているといえるのではないでしょうか。

 一方でパイプラインを引くとすれば、基本的にはロシアからということになります。ロシアからのガスのパイプラインを巡ってはヨーロッパ諸国が非常に厳しい経験をしているのも事実です。中国というより需要度の高いユーザーがいるとはいえ、パイプラインの敷設にはそれはそれでさまざまな困難が存在します。

 数年前に、東シベリアあるいはサハリンからのパイプラインが議論の俎上に上った時には、このような懸念から議論が最後まで進まなかったと記憶しています。

 しかし、天然ガスを取り巻く環境は、原子力エネルギーも含め劇的に変わりました。決定してから実際に使えるようになるまで時間がかかることを考えれば、もちろん希望的観測を配した冷静な推計と分析は大前提ですが、我が国の電力コスト、エネルギーコストを下げ経済力を強化するために、パイプラインの敷設と生ガスの輸入についても、真剣に検討すべき時期を迎えているのではないのではないでしょうか。

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