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【会見全文・後編】「あきらめたら試合終了」安田純平さんが明かす40ヶ月のシリア拘束

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シリアで武装勢力に拘束され、10月に3年4か月ぶりに解放されたフリージャーナリストの安田純平さんが2日、東京都千代田区の日本記者クラブで、帰国後初めての記者会見を行なった。

虐待など非人道的な扱いを受けた一方、武装勢力から渡されたノートには長期間に及んだ過酷な監禁生活を日記にしたため続けた。「自己責任」と非難する声がネット上であがる中、「可能な限り説明することが私の責任」として臨んだ会見は予定を大幅に上回る2時間半以上に及び、拘束から解放されるまでの経緯を詳細に明かした。

会見の最後には、人気バスケットボール漫画「スラムダンク」の名言を思わせる「あきらめたら試合終了」との言葉を紹介。「諦めたら、精神的にも肉体的にも弱ってしまうとずっと考え続けていた」と理由を話した。会見の様子をほぼ全文の書き起こしでお伝えする。

◆写真公開から半年で解放と期待

ずっと言われていたのが、「日本側が反応しなくなったら帰すからな」と言われていたので、パキスタン人と一緒に帰した場合、状況証拠になると。そういうことをしてやろうということなのではないかと期待していたんですけれども、11月22日に、パキスタン人に明日また帰すぞと言いに来ました。

1週間後が、11月29日。私の写真が公開された5月29日のちょうど半年後なんですよね。という日程的なものを考えて、これは解放じゃないかと期待しました。

彼の食事を持ってくる連中が、指を立てるんです。何か言いたいんだろうなと思ったんですけれども、これは解放だぞということを言っているんじゃないかと思い期待していたんですけれども、この頃、周囲にいる囚人と話をしたいなと思ってしまって。

話してはいけないと言われていたんですけれども。横の部屋にはパキスタン人がおり、上の部屋にはシリア人の親子がいました。話している様子を聞いているとそのシリア人の親子も人質だったようです。

◆バングラデシュ人「求婚を断ったら一家丸ごとさらわれた」

話している様子を聞いたんですけれども、親子のブローカーがきて英語で話し始めたんですね。他の囚人に分からないように。近所に住み始めたバングラ人が求婚をしてきたので、それを断ったら仲間を連れて襲撃してきて一家丸ごとさらわれたと言っていました。それが1年以上前だと。

半年前に妹が出て行ったということを言っていて、これは人身売買されてきたんだなということがなんとなく分かりました。彼ら自身がさらってきたというよりも、人身売買のマーケットがあって、彼ら自身もそれに関与している。売っているかどうかはわかりませんが、それを買ってきて人質にとり身代金を取るということもやっているという組織なんだということが、うかがえました。

それから、囚人の会話の中で、あと何か月いるんだということを言い合っているんですね。日数は決まっている。たとえば、敵対するアサド政権の兵士であったりすると、日数決まっていて帰していたらちょっとおかしいだろうと。色々聞いていると、イスラム法廷で裁かれて、何らかの罪を犯し、それで運ばれてきた受刑者じゃないかという印象を受けています。

◆受刑者の引き受けがビジネス?

短い人だと数日で出て行ったり、1か月、10ヶ月であったりするんですが、毎週1回、何かしらのイスラムの更正プログラムを受けているので。大きな声でクルーアンを読み上げることなどをされているような様子で、これは、イスラム法廷から受刑者を受け入れて、それで対価を得て稼ぐこの受刑者の引き受けのビジネスをしているんじゃないかという印象を私は受けています。

それから人質ですね。私の部屋は何箇所か移されているんですけれども、そのあと周りの囚人も代わりまして、人質ではなく、外国人の義勇兵がたくさん捕まっているようで、エジプト、ヨルダン、パキスタン、アフガニスタン人であるということをお互いにペラペラしゃべっているんですね。彼らは自分はヌスラであるといったり、アハールシャムであるといったり、イスラム国であるといったり。そういうことを会話で言ってるんですね。

◆囚人と看守の間には冗談も

そういった会話を聞いて、ヌスラの囚人がいるんだ、と今でも彼らがどうして彼らが捕まっているのかがわからないんですが、彼らも「あと何日で解放だ」ということで深刻な様子もなく話をしていて、食事をもってくる看守とも色々と冗談を言い合っているような状態で、深刻な立場にある囚人という印象ではなかったですね。

それから、アサド政権の兵士も捕まっているようで、彼らが兵士と呼んでいるのが聞こえまして、彼らはたびたび拷問を受けていて、拷問の叫び声が何度か聞こえました。棒のような固い何かで叩いている音がたびたび聞こえました。

◆囚人と話したことが武装集団にばれる

ハシッシ・大麻の売人も捕まっているようで、彼ら自身が治安維持をしていて、そういった人々を捕まえて、何か月か監禁するということをやっているようだというのが周りの声を聞いてうかがえました。

しかし、周りの囚人と私がしゃべっていたというのが彼らにばれてしまいました。周りの囚人に「このあたりはジャバル・ザウィーヤという場所らしい」と言ったのがばれてしまい、11月29日、私がめどにした日も過ぎてしまいました。

その1週間後くらい、フロアに囚人が連れてこられれひどい拷問が始まって。見せしめのような。そういった反応などを見ていて、ジャバル・ザウィーヤという情報が、彼らとしては知られたくない情報だったのではないかなと私は思っているんですけれども、私と話した人物だけが周囲に残されて、そのほかの囚人は、全部いなくなりました。

つまり、それ以上その話をしないようにということですかね。という様子を見て、この地名というのは信ぴょう性高いのではないかと思っているんですけれども。

◆囚人の尋問を聞かされる

シリアの地図を見ますと、ジャバル・ザウィーヤというのは、イドリブの県都であるイドリブ市のさらに南にある。ジャバルというのはアラビア語で山という意味で、山岳地帯というか、田舎のほうのようです。そういう場所に移されていたと。

途中から部屋を移されまして、彼らの事務所のすぐ横の部屋に移されまして、事務所というのが、囚人の尋問をしている部屋で尋問がよく聞こえるんですね。

周りに他の囚人がいないので周りとは話せない環境に移されたんですけれども、尋問の様子を聞いているとやはり、ヌスラの捕虜に対する尋問をしている様子が聞こえました。ハシッシであるとか、シリア軍の兵士に尋問している声が聞こえてきたと。外国人なんですけれども、尋問する声も聞こえました。

◆スパイを疑われる

事務所のすぐ横でそういった声がよく聞こえるんですけれども、彼らが尋問しているすぐ横にトイレがあって、トイレに入ると、トイレの音が聞こえるんですけれども、そんな部屋に私を入れたので、聞こえていることはあまり気にしていないんじゃないかなと思ったのですが、足元忍ばせてトイレにはいると何か疑われるかなと思いまして。

あえて水を流す音などを大きくしてそこにいるよということを知らせたんですけれども、彼らはトイレをしたり、頭を洗うふりして盗み聞きをしているという解釈をしたようで、私がスパイ行為しているという解釈をし始めたようです。

彼らが尋問しているときにトイレに行ったりすると、その直後にその時に尋問していた人物はどかして別の人物を連れてきて、みせしめの拷問を始める。非常に激しく殴って、うめき声をあげるということを私の部屋のすぐ外で聞かせるということを始めまして。彼らは「何をしてはいけない」ということは口頭では言わないんですね。

◆ヌスラのふりをしていた?

そういうことをやって、こちらが察しなければいけないということなんですけれども、見せしめということで始めました。3月半ばごろには英語のクルアーン(イスラムのコーラン)や本を持ってきまして、「2日後に話をしよう」と言われました。

その2日後にイスラム教に詳しい通訳もきて目隠しされずに談話をしたんですけれども、イスラムについてイスラム国のようなものがなぜ生まれてくるのかというような会話をしていたんですけれども、事務所に、ヌスラの囚人の尋問のをした資料の束とかあったり、バナーが貼ってありました。

それから、部屋の中の棚のすべての引き出しにロゴが貼ってあって。ヌスラが看板を変えて、タハリズシャムという看板をつけていたんですけれども、そのロゴがいくつも貼ってありました。

組織名は言わないといっていたのに、わざと見えるように貼っていて、どういうつもりなのかなと思ったんですが、その頃すでに報道ではヌスラが捕まえているということがほぼ確定事項のように報道されていたので、ひょっとすると彼らはヌスラのふりをしたのかなというのが私の印象なんですけれども。

◆「日本人だと言ってはいけない」

その面談の少し前に施設のリーダーである人物と話をしたことがあったのですが、英語ができる人物で、「東京から来たのか?」と何度も聞かれました。周りに囚人がいないので、普通に答えたんですけれども、周りの囚人とは話してはいけないというこの理由というのが、報道されている日本人の人質というのが、この施設にいるというのが他の囚人にばれてしまうと、その囚人が出所した時に、周囲に話すかもしれないということでした。

インターネットなりニュースなりに流れている人質があそこにいるということが流れてしまうかもしれないので、周囲に日本人であるとか、私を特定できることを言ってはならないというようなことを私は理解していました。

◆日本人と答えると拷問ゲームが始まった

それに対して、彼らはあえて「東京から来たのか」と聞いたり、「日本から来たのか」と聞いたり、「Are you Japanese???」と20回くらい連発して聞いてきたり。それで日本人と言ってしまったら「言ってはいけないことをいった」として拷問がまた始まったりですね。

そういう妙なこのゲームのようなものが始まりまして。そういう一環で、その施設のリーダーが来て、彼もそういった「東京から来たのか」みたいなことを言ってきたんですけど、彼は「我々は改宗を強制することはしないから」とリーダーから明言されまして。

ここに来る前の民家でも改宗は強制しないということはずっと言われていたんですけれども、イスラム教に関する面談の中で、「戦いについて話をする」と。敵対にする異教徒に対して改宗を求める。改宗しないのならば人頭税の支払いを求める。どちらも拒否するならば殺害する、という順序があるのだということを彼らは言っていました。

では、日本人もそうなのかと聞くと、全ての異教徒が対象であると。ならば自分もそうなのかと。監禁されていますし人頭税を払うことは無理だと。では、改宗は強制ではないのかと言ったんですが、彼らは気分を害したようで、「いままで誰か強制するようなことを言ったか?」というようなことを言われました。

「言われていないけれども、お前たちの代表は何を考えているかわからないし、どうなんだ」ということを言って、ちょっと言い争いではないんですけれども、ちょっと雰囲気悪くなったんですね。

◆拷問がエスカレート

そしたら、翌日もまた拷問が始まりまして。他の囚人を連れて来てですね、アフガニスタン人をどうも連れてきたようなんですけれども、「お前はシーア派だろう」と聞いて、「スンニだ」と言ったので、「スンニなの?じゃあいいわ」と言って戻して。

また別の囚人を連れてきて、「お前礼拝やってみろ」と。お前ムスリムじゃないだろと言って、拷問を始めまして、「ムスリムだよ、ムスリムだよ」というと「じゃあスンニの礼拝やってみろ」といって礼拝させて、戻して。これもやっぱり見せしめで。

強制しないと言っているのに強制するんじゃないかということを私が言ったので、それに対する、そんな組織ではないのに分かっていないのかという意味での拷問だったのかなと思うんですが。

直接何も言わずにメッセージを送ってくるというやり方をするんですね。私の側としては、そういうものさえ彼らの要求にちゃんと応えていたら、解放なんじゃない期待をして、事務所で話しているときにはトイレには行かないなど努力始めたんですが、段々とエスカレートしてきて。

彼らが食事を配り始めた時にたまたまトイレに入ったら、彼らが食事の音を盗み聞きするためにトイレに入ったというよくわからない理屈が始まり、また見せしめの拷問が始まったりしまして、どんどんひどくなってきて、私が身動きした音がするだけでまた拷問が始まったりしました。

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