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【会見全文・前編】「あきらめたら試合終了」安田純平さんが明かす40ヶ月のシリア拘束

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AP

シリアで武装勢力に拘束され、10月に3年4か月ぶりに解放されたフリージャーナリストの安田純平さんが2日、東京都千代田区の日本記者クラブで、帰国後初めての記者会見を行なった。

虐待など非人道的な扱いを受けた一方、武装勢力から渡されたノートには長期間に及んだ過酷な監禁生活を日記にしたため続けた。「自己責任」と非難する声がネット上であがる中、「可能な限り説明することが私の責任」として臨んだ会見は予定を大幅に上回る2時間半以上に及び、拘束から解放されるまでの経緯を詳細に明かした。

会見の最後には、人気バスケットボール漫画「スラムダンク」の名言を思わせる「あきらめたら試合終了」との言葉を紹介。「諦めたら、精神的にも肉体的にも弱ってしまうとずっと考え続けていた」と理由を話した。会見の様子をほぼ全文の書き起こしでお伝えする。

【会見全文】

安田純平と申します。宜しくお願いします。 本日は貴重なお時間を割いていただきましてありがとうございます。 今回、私の解放に向けてご尽力いただいたみなさま、ご心配いただいた皆様にお詫びしますとともに、深く感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。

私自身の行動によって、日本政府が当事者にされてしまったという点について、大変申し訳ないと思っています。 何が起こったのか、可能な限り説明することが私の責任であると思っています。この場をお借りしまして、拘束から解放までの経緯について説明させていただきたいと思います。宜しくお願いします。

◆イスラム国に関する資料を手に

まず、今回の取材の目的についてお話いたします。2015年、5月末に日本を出まして、トルコに入りました。取材を進めるうちに、シリアの反政府組織である自由シリア軍から、イスラム国に関する資料を入手しまして、それまで表に出ていなかった資料であろうと。イスラム国に人質になったフランス人であるとか、アルカイダ系組織であった、アル=ヌスラ戦線の人質であったスウェーデン人の映像であるとか。そういうものが入っておりましたので、信憑性は高いであろうと。考えて、その関連の取材をしていました。

イスラム国の資料については、戦闘員のリストであるとか、それぞれの家族構成によって給料が違うとか、それぞれの月の予算の表であるとか、イスラム国が単なる「ならずもの」というよりは、きっちりとした国家のような組織を構成しているという一端が見えましたので、さらに取材をしたいと考えていました。

それから、2015年の5月ごろ、当時イスラム国が注目されていた中で、それ以外の反政府側の組織がイスラム国に対抗するという意味で、それぞれ、いがみあっていた各組織がひとつのまとめといいますか、協力関係を組むということをし始めて、背後にいる協力者や支援者、組織であるというところからも、同意が出たということで、同盟関係を組むようになりまして、シリア北部、北西部のイドリブ県を中心とした反政府側の地域が一定の安定を見せ始めたころで、イドリブにあるイドリブ市、並びにイスラムシュブール市という主要都市を政府側が奪い取りまして、勢力を伸ばし始めていた時期。

◆イスラム国かアサド政権かという単純な話ではない

イスラム国が非常に注目される中で、非常に凶悪な組織であると言われていた。一方で、アサド政権については空爆などによって多くの死傷者を出していた。イスラム国に問題があるならば、ではアサド政権ではどうなのかという、単純な話なのかというと、おそらくそうではないであろうという中で、イドリブを中心としていた反政府側の地域には、どんな可能性があるのかがあるのか、というところを見たいと思っていました。

この絶対的な権力のない地域で武装勢力が、力があるといってもですね、人々のこの地域社会がどのように安定しているのか。おそらく人々の共通の価値観や倫理観であるイスラムがこの地域の安定に寄与しているのであろうと考えまして。

◆イスラムの地域社会を外部から探りたい

当時、すでにイドリブの中にはイスラム法廷という、イスラムの法律ですね。シャリーアに基づく裁判を行うイスラム法廷が設置されていたり。

イスラム系組織の同盟軍であるファタハ軍というのがあったのですが、そのファタハ軍の構成組織それぞれからメンバーを出して、警察組織を組み、一般治安の維持を始めていた。そういった状況、それからその中で生活しているキリスト教徒であるとか、イスラム教のドロズ派であるとか、少数派の人々がどういういった生活をしているのかをぜひ見たいと思っていました。このイスラムに基づく地域社会というものが外部の人間から見て理解しうるものなのか、理解しあえるものなのかということを探りたいなというのが今回の目的でした。

そういった地域に外国人義勇兵も集まっていて、そこで生活しながら、反政府運動に参加するという、外国人が関与することについて批判する人々もいたんですけれども、反政府運動そのものを疑問視するという声もあったのですが、そういった人々がどのような事情で、そのような戦闘地域にやってきていたのか。

彼らがどんな理想を抱いてそこに来るのか。彼らが元々住んでいる国や社会に何か問題があるのかどうなのかというところまでいずれ広げることができれば、現在のこの世界を見る上で、これからの世界を見る上で参考になるのではないかと考えたのが今回の取材の目的でした。

いわゆる有益国民国家という枠組みを超えてそれとまた違った価値観で動く非常に大きな人の流れがあるわけですけど、そういった世界が存在するという、表に見えている世界とは違う世界があると。そういうものを追ってみたいと思っていました。

◆後藤健二さんをガイドをした人と知り合う

そういった考えのもとに現地に入る方法を色々探っていたんですが、現地の組織にいくつかあたるなかで、日本人の知人から紹介された、シリア難民の小学校を運営している人々と知り合いまして、そこのシリア難民の紹介で、今回シリア入りをするきっかけを作ってもらったシリア人のガイドと知り合いました。

彼は、イスラム国に殺害された後藤健二さんのガイドをしていた人で、後藤さんがイスラム国に拘束されてビデオが公開されたときに、世界中で「I am Kenji」という紙を持って、彼の解放を訴える運動が広がりました。彼も顔を出してそういったものをやっていた。

彼はトルコのアンタキヤというところに住んでいたのですが、顔を出してそういった行動をするというのが、一定のリスクがあるわけでして、その中でそういったことをやっていた。彼はそういうことをやっていたということも含め、私は彼を信用しまして、それから彼が紹介してくれたシリア側の組織というのが、反米武装組織の、非常に有力な組織のアハラール・シャムという組織でした。

私は2012年にシリアで反政府側の地域に入って現地の様子を取材したのですが、当時知り合った人物がアハラール・シャムのかなりランクの高い司令官になっていまして。そのほか、アハラール・シャムのメディアの活動をしている人間であるとか、いう人々もいたので、アハラール・シャムの中に知り合いがいるのか?と聞かれたときに彼らの名前を挙げ、彼らとも直接話をして、「何かあったときはよろしく」という話をしていました。

◆2015年6月22日:トルコ国境からシリア入り

6月22日に、シリアに入る案内をする人物から連絡が入ったと。「今夜移動するから」ということで、国境に近いトルコの町なのですが、そこに向かいました。ガイドについては、「自分は仕事があるので現地で兄がお前を受け入れる」と。「兄がアハラール・シャムの司令官である。彼がお前の身元保証をする」という話を受けていました。

シリア入りの方法は、国境の町に住んでいる人物と一緒に国境を越えてシリア側に入り、そこに迎えに来ているガイドのいとこである人物が、車で迎えに来ているので、その車に乗って彼の実家に行き、その兄と合流するのだ、というのが、シリア入りの説明でした。

トルコからシリアに入るこの地域の入り方なのですが、国境付近は山岳地帯なんですが 深夜に野営にまぎれて山道を入っていくという方法です。彼とともにすぐに入っていこうとしたのですが、そのあたりは多くのシリア人が出入りしている場所でした。

当時、トルコ側が国境をかなり厳しく管理していていまして、国境を越えていこうとする人物が銃撃されるというようなニュースもあった時期でして、あまりあちこちでの出入りはなかったようで、私が入ろうとした場所が、多くのシリア人の出入りに利用されていたようでした。

◆「自分でもおかしいと思いながら歩き続けた」

そこで関係者が出てくるのを待っていたら、別のシリア人から、「まず迎えが来るのをガイドのお前が見に行って確認してから一緒に入ったほうがいいんじゃないか」ということを言われたようで、「お前はここで待っていろ、自分が先に行って様子を見てくるから」と言って案内人が一人で中に入って行って、それを2往復ほどやっていました。

私は暗闇の中で待っていたのですが、彼がシリア側に入って様子を見に行っている間に、彼が行ったのとは別の方向からシリア人がたくさん入ってきまして、シリア人の家族をどうやら送ってきたような様子でした。大きな荷物を持った男性、女性が入ってきたのですが、その案内をしてきた2人組が「ではシリアに行こうか」という話をしてきまして。

「ちょっと話が違うな」と思ったんですけれども、話がついているかのような様子で、これは聞いている話と全然違うと思ったのですが、そういうものだろうと思って、そちら側に入ってしまったんですね。これはもう、自分でもちょっとおかしいと思いながら、そのまま歩き続けてしまった。これはもう、まったく自分でもわからない。

◆ピックアップトラックに乗せられ移動

1時間ほど歩いて、途中、ここはシリア・トルコの国境だというところを越えて、中に入っていったのですが、そこで2人組の仲間に両腕を強くではないのですが、つかまれるというか、半ば促すようではあったのですが、ピックアップトラックに乗せられて。荷物を後ろに載せ、私が後部座席の真ん中に乗り、彼らが前の座席に2人、後部座席私の両側に座って、目隠しはされずに移動をしていきました。

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