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イラクとシリアでIS復活の兆し? - 岡崎研究所

 IS(「イスラム国」)は領土を持った初めてのイスラム過激組織であった。新しいカリフ制のイスラム国家を建設するという「イスラム国」の創設者アル・ザルカウィの野心は、イデオロギー的にイスラム主義者にアピールし、過激派戦闘員が世界各国から「イスラム国」を目指した。2014年のピーク時には、86か国から3万人以上の外国人戦闘員が「イスラム国」にいたと言われる。

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 他方、領土を持つと攻撃にさらされやすい。「イスラム国」は米主導の有志連合をはじめ、ロシア、トルコ、イラク、シリアの攻撃を受けた。米英の空爆も激しく行われた。その結果、「イスラム国」は領土の98%を失い、アルカイダなど領土を持たない従来のイスラム過激派組織と同じような組織になった。

 しかし、「イスラム国」は完全に制圧されたわけではなく、イラクとシリアで復活する兆しが見えるとの指摘がある。例えば、米RAND 研究所政治学者のColin P. Clarkeは、Foreign Policy誌ウェブサイトに10月10日付けで掲載された論説‘ISIS’s New Plans to Get Rich and Wreak Havoc’において、次のように指摘している。

・ISのイラクとシリアのスンニ派多数地域での復活が近い。その主な理由は軍資金と新たな収入を得る腕である。一つはイラクとシリアから持ち出した4億ドルの資金(これを主としてトルコにある系列会社を通じて資金洗浄)であり、もう一つは、住民から金を巻き上げる犯罪行動である。

・潤沢な資金基盤の上に、ISはイラクとシリアの各地で再組織化を図っている。残存する組織を中心に、戦闘員の再組織化を図ろうとしている。

・西側ではISに対する戦いを、米国の異なる政権が実施する不連続なものと見がちであるが、ISにとっては、創設者アル・ザルカウィ以来続いている長い作戦である。米国や同盟国がこの点を理解しない限り、ISは米軍が完全撤退するまで、またはISが領土を取り返し、次のイスラム国家建設計画を実施するまで、地下に潜り、再び地上で勢力を誇示する戦略を繰り返すだろう。

参考:Colin P. Clarke,‘ISIS’s New Plans to Get Rich and Wreak Havoc’(Foreign Policy, October 10, 2018)
https://foreignpolicy.com/2018/10/10/isiss-new-plans-to-get-rich-and-wreak-havoc/

 「イスラム国」は、本年はじめ、イラク北部のキルクークで、偽の検問所を設け、イランの治安部隊を奇襲攻撃した。ディヤラ、サラディンなどイラクの他の地域では、「イスラム国」の潜在細胞がこれらの地域を偵察し、小規模の戦闘員を再組織する前にどのような活動をすべきかを検討している。そして米軍の空爆にも拘わらず、少数の戦闘員がいくつかのシリアの地方都市に潜伏しているとのことである。

 シリアはアサド政権が勢力を回復したとはいえ、全土を支配しているわけではなく、またイラクも基本的に政権が不安定である。このような統治が満足に行われていない様な状況は「イスラム国」のようなイスラム過激派の温床となり得る。

 トランプは、米国等の攻勢で「イスラム国」が領土の98%を失ったことで、シリアにおける「イスラム国」の掃討はほぼ終了すると考えているようでいるが、「イスラム国」の復活の可能性があり、「イスラム国」が小規模ながらテロ活動を再開するようになれば、現在2000人いるシリアの米軍は、当分の間在留することとなり、米国はシリアに関与し続けることとなるだろう。

 中東情勢の動向を決める要因は、サウジによるジャーナリスト殺害疑惑やシリア内戦などをめぐる大国や主要国のパワーゲームが主体となったとはいえ、依然として「イスラム国」の動向からも、まだ目を離すことはできない。

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