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「米中貿易戦争、孤立すすむ中国の焦燥」 ―普遍的価値観の共有なくして発展的未来は来ない― - 屋山太郎

 安倍晋三首相が7年ぶりに訪中した。これまでの政権だと、訪中が決まると一大外交課題が解決したかの如く喜んだものだ。かといって中国が何かを譲歩した訳でも、素敵なお土産をくれた訳でもない。中国の首相と面会すること自体が目的化し、会えれば対中外交は成功したと言わんばかりだった。

 今回、安倍氏が訪中することになった原因は2つだ。1つは日本が国際経済の中で大きな働きをするようになり、日本にそっぽを向いて外交、国際活動が出来なくなったことだろう。2つは米国から貿易戦争を仕掛けられ、自らは解決できない問題が多々発生していること。関税戦争を仕掛けた米国も困っているようだが、中国には身から出たサビというほかない。

 米中関税戦争がなぜ起こったか。中国は2001年にWTOに加盟した。加盟すると赤の他人でも中国に「最恵国待遇」を与えなくてはならない。

 中国は国内で堂々と偽造品が作られている。若者を世界の大学、研究所、企業に派遣し、高度の知識を持って帰国させる。中国のWTO加盟に反対する国に対して、米国など先進国は鷹揚に構えて、10年も経てば自由、民主、基本的人権を守る国になると反対派をなだめたものである。

 しかし20年経った中国は「製造2025」のスローガンを掲げ、25年に製造業世界一になる、2049年の建国100年祭には軍事力で世界一になると言い出した。

 ここまで中国を甘やかした張本人はオバマ前大統領だが、世界中が怒りを込めて中国を見てきた。怒りが噴き出すきっかけは、中国が需要に関係なく、大量の鉄鋼とアルミを生産し世界の工業製品価格を下落させたことだろう。資本主義でも社会主義でもない。一国軍事大国というべき国家が、今後とも自由と民主主義の国家に変貌する見込みはない。

 ここで登場したのがトランプ大統領だ。日本が隣の攻撃的軍事大国に対処するには、遠くの軍事大国と同盟を結ぶしかない。今でも同盟は中国がいいか、米国がいいかという議論があるが、中国と結んだ時の保証は何か。

 かつて中国はソ連(ロシア)と「共産主義」によって同盟を結んだが、共産主義の方法論を巡って中ソは分裂し、あげくソ連は米国に屈服した。日本と米国との同盟の基は「自由、民主主義、基本的人権」を共に最高の価値とする“思想”である。こういう思想を持った国は日米だけではない。いわゆる“西側”と呼ばれた国は全て同じだ。

 この日本の立場を考慮すれば、米中間の問題で中国側の肩を持つ理由は全くない。軍事的に尖閣を取るというのなら、軍事的に取り返すしかない。日米関係はほどほどにして、中国とも親密にすべきだ」という国会議員がいる。ほどほどの価値観にすれば全員と仲良くできるのか。そういうことを言っている限り、野党に“政権”は来ない。

(平成30年10月31日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。 著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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