- 2018年10月31日 12:52
幼保無償化 不備露呈
就学前の子どもたちのための教育や保育を無償化すること自体には、多くの人が賛成するかと思います。そのやり方が問題です。来年10月の消費税引き上げに合わせて、政府が幼児教育・保育の無償化を、その財源を使って行う、と安倍政権が、昨年秋の衆院選前に急遽発表したことから、問題が生じています。
そもそも消費税を5から8%と、8から10%に2段階で上げることは、2012年の民主党政権の時に、民主・自民・公明の3党合意として、社会保障と税の一体改革は「政争の具」にしないということで、合意したものでした。8から10%の2%分で保育士や介護従事者などの処遇を挙げる等、質をよくする予定でした。
それを、人気がない政策だからと2度も経済状況を理由に先延ばしし、3党合意を反故にしてきました。ようやく来年10月には上げるとしながら、消費増税は社会保障のために使うことになっているのに、その財源で幼児教育等の無償化を行うというのは筋が、そもそも違います。
日本の教育予算はOECD諸国の中で最低レベルなので、上げることに異論はありませんが、社会保障のための財源からとるのは違うと思います。昨年秋の衆院選の目玉として、社会保障財源を安定させるために使うはずだった消費増税分を無償化に振り向ける、と安倍政権は約束しました。
唐突に出てきた感があり、事前に練った政策ではなく、議論は迷走しました。当初は認可外は対象外でしたが、おかしいという声を受けて対象にし、しかし補助額に上限を設けました。不公平という声が続いています。
しかも、国の基準を満たしていないのに経過措置として対象になったため、保育の安全を心配する批判も出ています。そして、制度設計の不備が露呈したと報じられているのが、全都道府県の私立幼稚園100園を対象にした共同通信の調査で、約4割が、来年度に保育料を値上げすることが、わかったということです。
この中には、来年10月に予定されている幼児教育・保育の無償化を見越して「便乗値上げ」の可能性があるケースがある、とのこと。無償化に伴って、保育料は国が負担するため、保護者の理解を得やすいことが背景にあると見られています。その値上げ分は、納税者の負担になり、国の施策の不備が浮き彫りになっています。
幼稚園側のやり方に問題があることは確かですが、人気取りのために子育て支援のための政策を、制度設計もきちんとしないまま安易に示した政権に責任があると考えます。
この無償化のやり方では、所得の高い人ほど恩恵を受けることになる、という問題もあります。8千億円もの予算をつぎ込むことになっていますが、子育てしている人からは、待機児童をなくすための保育施設の充実が先、という声も多くあがっています。誰のための無償化なのか、不信感を招いてます。
超少子高齢社会への対応が、日本にとって喫緊の課題であることは、間違いありません。そのため、2012年に通した8本の法案のうちの3本が「子ども・子育て支援」で、高齢者対象の年金・医療・介護に加えて、4つ目の柱とし、全世代対応型の社会保障へ、という道筋をつけたのです。
安心できる社会保障制度を維持・拡充するためには、消費税10%でも、もちろん足りません。将来への政策、制度設計を示し、国民の理解を得る努力をして、地道に取り組むことを求めたいと思います。