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「お金のことで相談することを恥ずかしいと思ってしまった」オタク議員に借金が必要だったワケ・おぎの区議インタビュー

東京都大田区の荻野稔区議(32)=日本維新の会=が、金融機関のキャッシュカードを他人に譲り渡したとして、「犯罪収益移転防止法」に違反した疑いで、警視庁に事情聴取されていたことが報道された。また、そのカードが振り込め詐欺に悪用されたことも明るみになった。これを受けて、荻野区議は10月3日、都庁内で記者会見。12日、区議会議長が、区議会の品位を損なう名誉を汚す行為として、厳重注意とした。また、14日には、荻野区議は、詐欺事件の被害者に直接会って、謝罪と被害額200万円を全額弁償したという。

荻野区議は17年2月ごろ、インターネットで「街金」「融資」などで検索して見つけた金融業者に、ホームページを通じて、借金を申し出た。業者から電話があり、「通常の方法では貸せないが、少し変わった方法でなら貸せる。あなたのキャッシュカードを送ってもらえれば口座に現金を入金した上、カードを送り返す」と言われた。不安になりつつも、金策が必要で、指定された住所に、カードを送付した。

荻野区議は2015年4月区議選で初当選。群馬県出身で今年3年目になる。以前から表現規制の問題で活動し、2010年から都議会議員の秘書を務めた。議員当選後は、オタク議員として、コスプレイベントや即売会、SF大会等にも積極的に参加していた。荻野区議は10月24日、都内で、弁護士同席の上、筆者の取材に応じた。

親族や知人にお金を貸したり、議員として様々な会合に行き...

—— カードを送った段階で不安になったということですが、その後は?

数日後に、すでに信用金庫のサービスセンターに電話をして、口座をストップさせました。その2~3日後、「あなたの口座が使われている可能性があります」と連絡がありました。被害者が出てしまったと思いました。すでに弁護士には相談し、その中で、詐欺と気がつきました。被害者が出たと知ったのは、相談をしている最中の出来事でした。直ぐに被害者の住んでいる大阪府内の警察署に連絡をしました。

それから一年後の今年の5月、警視庁の担当者が自宅に来て、事情を聞きたいと尋ねて来たのです。そこで、警視庁に出向き、任意で事情聴取を受けています。この時まで「犯罪収益移転防止法」を具体的には知りませんでした。

—— 金融業者を探すほど、借金をしなければならなかった理由は?

自分自身の未熟さと金銭管理に関する考えの甘さです。親族から相談を受け、お金を融通するように言われていました。ほかにも様々な活動、会合やお付き合いで経済的にも余裕がなくなり、精神的にもつらくなっていきました。余るほどお金があったわけではないですが、見栄を張ってしまったのです。

取材を受ける荻野区議 写真:渋井哲也

当初は、消費者金融で借りていました。借り入れ先は3社。月に5〜6万円を返済していました。そこまで「ならなんとかなる」と思っていました。相談はずっと続くわけではないし、今を凌げばなんとかなるだろうと、甘く考えていました。しかし、借入を止めて、支払いを整理しようとした矢先に、親族からさらに執拗に借入れを求められ、また金融業者を探すに至ったのです。

—— それで、赤字になるようには思えないのですが。

親族には1回10万円ほどの小刻みの相談も多く、貸したり、返してもらったりの繰り返しで、当時から相談にものっていました。親族には東京に出たての時など、お世話にもなっていましたので。また、2017年には、祖母が亡くなり、葬儀費用を一部出しています。

独身ですし、子どももいませんので、自分の生活費にはお金をあまり使っていません。住んでいる部屋の家賃も5万円台、朝に出て、深夜に帰ることが多く、自宅の電気代は1000円を切る月もありました。服やカバンも駄目になるまで使い倒します。

ですが、様々な活動の中でマイナスになっていました。親族だけでなく、友人、知人から「お金を貸して欲しい」と言われることもありました。中には事業費が赤字で払えない、親族の医療費や自宅の家賃や修繕代が払えず「明日までに必要」と言われ、断れないことがありました。

何とかしてあげようと、仕事の紹介や、依頼することもありました。そういったやりとりが合計で月に50万円を超えた月もあると思います。また、飼い主のいない猫、いわゆる地域猫の問題でも、10数匹、飼い主のいない猫の去勢手術の費用を負担したりしていました。

こうしたことが積み重なり、私自身、消費者金融などでの金策に走るようになり、お金を貸すためにお金を借りるような状況にも陥っていました。お金についてはもう少し立ち止まって考えるべきでした。

今回の報道後、他の会派の先輩議員に相談した際に「絶対に貸してはいけない」「貸すことでかえって相手の自立を妨げる」と言われました。とても浅はかなことをしていたと思います。議員である以上、必要な制度に繋げ、それが不足しているなら、その制度、体制を作る方に力を尽くさなければならなかった。それをしなかったわけではありませんが、先ほどのような中で、私がしていたことは、安直なその場しのぎで、何の解決にもならなかったのだと。

議員になる前よりも余裕があるように感じてしまった

—— 議員になる前は、議員秘書でした。お金の使い方を学んだのでは?

秘書時代の給与は月20万円ほどです。仕事上、経費としてお金を使いますが、私が管理しているわけではなく、必要とあれば事務所に申請していました。公職選挙法の中で、例えば寄付をしてはいけないというような禁止事項を学ぶことはありましたが、議員として一人で切り盛りするようになる時に、年間を通して何が必要かと言うことへの認識が低く、もっと学ぶべきでした。

秘書になる以前は、非正規雇用で、日雇いを経験したこともあったのですが、議員に当選させて頂き、収入が大幅に増えました。それまでの収入に比べれば、余裕があるように感じてしまい、頼まれると「人のために使っている」という錯覚に陥り、「いいことをしているんだ」と思い込みました。そうやっている内に負担しきれなくなったのです。

反省と謝罪をする荻野区議 写真:渋井哲也

—— お金の使い道について研修などで学ぶ機会はないのですか?

選挙のときは、公職選挙法や、政治資金収支報告書作成、選挙時の費用の拠出の注意点などお金の使い道は勉強会がありましたが、議員になってからどうしていくべきかと言うのは、不足していたように思います。最初の一年目はどの時期にどういう出費がどれだけあるのか、体験しながらのやりくりなので、苦労しました。

親族であろうと、誰であろうと安易にお金を貸すのはよくないとは思っていましたが、自分が比較的余裕がある立場だと思うと、頼みを断り切れませんでした。お金の使い方など、政治家には法律で明確に黒(=犯罪)という線は決まっており、気を付けてはいましたが、政治家以前に社会人として、金銭管理、お金のやり取りについての認識が不足していたと反省しています。

今では、相談の大切さを訴えているとこととの矛盾を自覚

—— 議員活動として自殺対策を訴えています。その中で、困った時には相談することの大切さを言っています。ご自身は相談できなかったのですか?

お金のことで相談することを恥ずかしいと思ってしまいました。議員としての立場や、一人で何とかしなければとの見栄もあったのかもしれません。金融業者を頼らなくても、大変なら相談してくれればよかったのにと言ってくれた方は沢山いましたが、当時は、ほかの人に借りるという考えはありませんでした。相談も弁護士のようにごく限られた方にはしていましたが、この時は急な融通のお願いが来たことなどが重なり、誰にも相談せずに愚かな行為をしてしまいました。

今となっては、「相談することの大切さを」と普段、言っていたことと自分の言動が矛盾していたと感じています。家族の自殺を経験した、自死遺族当事者として政策として訴えている話と、自分の個人的な問題と、イコールで感じることができませんでしたが、如何に悩みごとを第三者に打ち明けるのが難しいのか、また、人は追い詰め詰められてしまうと本当に、視野が狭くなり、過ちを犯してしまうのかと、身をもって実感しました。

なんとかなるだろうと、自分の甘さを改善できないまま突き進み、犯罪による被害者まで生んでしまったことについては、お詫びと反省の気持ちしかありません。今後は、顧問弁護士をつけたり、税理士に会計を見てもらったりと第三者の力を借りながら活動をしていくことにします。

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