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少しだけ変わった記事

国家公務員vs.会社員 給与差は?(R25)

公務員制度改革のひとつとして国家公務員の給与引き下げが国会で議論されている。「国家公務員」とは、国家試験に合格して中央省庁やその地方事務所で働く公務員のこと。1種(キャリア)や2種(ノンキャリア)など、試験区分によって差はあるものの、地方公務員と同様にその待遇がたびたび批判の対象にもなってきた。

では、国家公務員の給与はいったいどれくらいなのか。地方公務員と違い、国家公務員の年収はなぜか公表されていないのだが(月収やボーナス額は公開)、人事院によると、年齢ごと・役職ごとの「モデル年収」は以下の通りだという。

まず、R25世代の25歳・独身の職員の場合、年収は281.7万円で、35歳の係長(配偶者・子ども1人)は455.8万円。50歳の地方事務所の課長(配偶者・子ども2人)だと、年収は706.2万円。そして、キャリア官僚の「45歳の本省課長(配偶者・子ども2人)」、の場合、年収は1191.4万円(!)。ただし、これがすごく高額かというとそうともいえず、民間企業で働くサラリーマンの平均年収は、25歳~29歳で366万円、30歳~34歳で432万円、35歳~39歳で505万円、40歳~44歳で577万円、45 歳~49歳で632万円(国税庁の民間給与実態統計調査)。キャリア官僚を除けば、国家公務員と民間企業の給与にそれほど大きな差はないようにもみえる。

しかし、問題は給与だけじゃない。じつは公務員というのは「職業」ではなく「身分」で、法律によってさまざまな面で守られている。民間企業の社員のように、業績によって給与が大きく変動するわけではなく、リストラや解雇されることもほとんどない。不況であろうと、つねにその身分が保障されているのが公務員というわけだ。そうした公務員の「身分」を「職業」にするのが公務員制度改革で、今回の国家公務員の給与引き下げはその第一歩。さて、公務員の待遇は変わるのだろうか。
 定期的に取り沙汰される公務員の給与/待遇の記事ですが、これは少し色物でしょうか。通常、官民の給与比較と言うと公務員であれば非現業(≒ホワイトカラー)の正規職員の平均と、派遣やパートなどの非正規を含めた民間企業の平均が並べて論じられるものですが、ここでは民間の場合も正社員の給与を比較対象としているようです。その結果として「それほど大きな差はないようにもみえる」と異例の結論が下されているわけです。非現業の正規職員とパートタイム込みの民間企業の平均の差をもって官民の給与格差とする、というのが日本のマスコミの暗黙の了解と言いますか、ほとんど業界のルールみたいなものと思っていたのですけれど、意図的に協定破りでもしているのでしょうか。もしかしたら官民の給与格差を演出するカラクリを知らない記者が、意図せずして近い条件での比較をしてしまったのかも知れませんね。

 もちろん給与を真面目に比較するならば、年齢や学歴、勤務年数など可能な限り条件を揃えるべきで、そうした条件を揃えた上で人事院は民間企業勤めと公務員の給与が同等になるように指針を示してきたわけです。加えて考慮されるべきは「その仕事に就くための敷居の高さ」というのもあるかと思います。簡単に公務員になれる時代であれば給与は抑えめでも致し方ないかも知れませんが、逆に選りすぐりのエリートでもなければ公務員になれない時代であれば公務員の給与は高めに、というのが自然でしょう。バブル時代は「公務員は給料が安くてかわいそう」と言われていたようですが、現代では公務員がとんでもない高給取りであるかのごとくに夢想されています。でも、公務員になるための難易度の変化を考えれば、むしろ相対的には高給取りであった方が妥当であるような気がします。

 それはさておき、正規職員と正社員の給与を比較しただけで終われば珍しくも良識のある記事と言えたのですが、引用元の最終段落は何とも苦笑するほかありません。公務員というのは「職業」ではなく「身分」(キリッとのことですけれど、記者の頭の中の「職業」と「身分」の違いって何なのでしょうね? 一般的な理解であれば「身分」である以上は辞めることすらできないもののはずです。退職したぐらいでは変わらないのが「身分」というもの、公務員が「身分」であるなら退職しても公務員は公務員ということになりそうですが、流石にそれは現実と違いますし……

 「民間企業の社員のように、業績によって給与が大きく変動するわけではなく、リストラや解雇されることもほとんどない」と、記事では妄想しています。しかるに公務員の給与とは民間企業の平均に合わせるのが原則ですから、民間の平均給与が下がれば後追いで公務員の給与も下がるものなのです。ある意味、国全体を運営するのが公務員の仕事であり、民間企業の給与平均こそがその業績を表すとすれば、公務員給与は究極の業績変動給と言えます。公務員の給与は業績によって「大きく」変動しないわけではありません。公務員の給与の元となる「業績」即ち民間企業のそれが平均としては大きく変動していないが故に、結果として漸減に止まっているだけの話です。

 また「リストラや解雇されることもほとんどない」とのことですけれど、引用記事を掲載している「R25」における民間企業正社員の待遇はどうなっているのでしょうか? ダイヤモンドみたいな自称経済誌や、それを受け売りしているだけの経済知ったかぶりブロガーの語るところによりますと、日本の正社員は手厚く保護されており、解雇も給与カットもできないのだそうです。それが現実でないことは日本の会社に勤めたことがある人ならば誰でも分かることとは思いますが(現実を認めることができるかどうかはさておき)、このR25というメディアは基本的に自称経済誌の受け売りが基本路線だったはずです。方や「正社員は解雇できない」と強弁しておきながら、返す刀で「(公務員は民間企業の社員と違って)リストラや解雇されることもほとんどない」と言い放つとしたら、まぁ笑うしかありませんね。

 そもそも公務員の身分保障というのは、争議権を認められないなど諸々の制約に対する代償として用意されたものです。あくまで代替的な補償に過ぎないものであって、それを公務員の特権であるかのごとくに語るのは完全なミスリーディングと言えます。で、「公務員の『身分』を『職業』にするのが公務員制度改革で、今回の国家公務員の給与引き下げはその第一歩」と結ばれているわけですが、政治家の人気取りのため、国民の腹いせのために公務員の給与を引き下げることが、いったいどうして公務員の「身分」を「職業」にすることにつながるのでしょうか? 何とはなしに公務員を非難するニュアンスを漂わせておけば読者からは歓迎されるものなのかも知れませんけれど、どうも私にはメディアの不誠実さを喧伝する記事にしか見えないところです。

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