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掲示板管理者と薬物犯罪のあおり・そそのかし

薬物密売の書き込みで、しばしば名前があがる巨大掲示板2ちゃんねるの関係先に対し、警視庁が捜索を行ったと報道されています。覚せい剤などの密売を広告する書き込みを削除せずに放置したことが、麻薬等特例法(あおり・唆し)の幇助に当たるとして、警視庁は捜索に踏み切ったと伝えられています。

<ニュースから>
●2ちゃんねる:関連先捜索…覚醒剤書き込み放置容疑で
インターネット掲示板「2ちゃんねる」で覚醒剤売買に関する書き込みを放置したとして、警視庁サイバー犯罪対策課が、札幌市のコンピューター関連会社「ゼロ」の本社など約10カ所を麻薬特例法違反(あおり、唆し)ほう助容疑で家宅捜索していたことが分かった。サイバー課はゼロ社が2ちゃんねるの運営に関与していたとみて、違法情報が放置された経緯を調べている。
捜索容疑は昨年5月以降、覚醒剤0.2グラムと注射器を1万円で販売することを意味する「02-1万円+P」などという書き込みを2ちゃんねる上に長期間放置し、売買を手助けしたとしている。
サイバー課は同月、書き込みをした無職の男(54)を同法違反容疑で逮捕。2ちゃんねる側に書き込みの削除を数回要請したが実行されなかったため、昨年11月~今年3月、ゼロ社のほか、サーバー管理者とみられる関係先などを捜索した。
捜査幹部は「表現の自由を考慮して、捜査手法は慎重に考えたが、削除要請が数回にわたって無視され、結果的に実際の覚醒剤の売買につながっている点を重く見た」と説明している。
毎日jp(2012年3月7日 11時37分 更新:3月7日 14時25分)
http://mainichi.jp/select/today/news/20120307k0000e040149000c.html

インターネットを利用した薬物売買

実際に薬物を手にしたことのない人たちにとって、現実に薬物にアクセスするきっかけになりやすいのが、インターネットの掲示板などの薬物密売の書き込みです。密売人たちは隠語を使って覚せい剤や大麻などの薬物密売情報とともに、連絡先のメールアドレスなどを書き込むのですが、インターネットの気軽さや匿名性が、薬物乱用の裾野拡大につながりやすく、近年、警察は積極的な取り締まりを展開しています。

先日発表された『平成23年中の薬物・銃器情勢』には、【サイバー空間における薬物情勢】として、インターネットを利用した薬物密売事犯の検挙状況が掲載されています。この資料によると、2011年では、全国の警察は、インターネットを利用した薬物密売事犯(広告違反、あおり・唆しのみの事犯を含む)として31事件、サイトへの書き込み者ら55 人を検挙したと報告されています。また、検挙された31事件に関連して、インターネットを利用して薬物を購入した者83 人を検挙し、さらに、「このほかにも、これらの事件の捜査の過程において、少なくとも約790 人の者が薬物を購入したことがうかがわれ、」るといいます。

↑インターネットを利用した薬物密売事犯の検挙件数の推移
【出典】
警察庁刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課編『平成23年中の薬物・銃器情勢(暫定値)』、(2012年)、27頁http://www.npa.go.jp/sosikihanzai/yakubutujyuki/yakujyuu/yakujyuu1/h23_yakujyuu_jousei_zantei.pdf

インターネットを通じた薬物売買は、匿名性に守られているようにみえますが、人目につく形で書き込みをしていることは、捜査陣の目にも留まりやすいことにもなるでしょう。捜査陣が情報をキャッチし、内偵捜査を進め、検挙する手順は、一般の薬物密売事件とそれほど違いはないようです。

薬物の密売事件は、普通、密売人による営利目的での譲渡や、営利目的での薬物所持事犯として立件されます。営利譲渡事件を立件するには、譲り渡した相手(顧客)を検挙し、譲り渡した薬物を押収することが必要です。インターネット利用の密売人でも、譲り渡した相手(顧客)が検挙され、譲り渡した薬物が押収されれば、営利目的の譲渡事件となりますが、譲り渡しの行為が確認されない場合や、薬物が押収されない場合にも、インターネットに書き込みをする行為そのものが違反として検挙されるケースもあります。

覚せい剤、大麻、麻薬などの各取締法は、一般向けの広告を禁じているので、インターネットの掲示板などに密売情報を載せることは、覚せい剤取締法などの広告違反にあたります。また、麻薬等特例法には、薬物犯罪や薬物濫用を公然とあおり、唆し(そそのかし)た者に対する罰則が定められているので、あおり・そそのかし事犯として立件されることもあります。2010年12月には、実際には規制薬物を持っていなかったのに、2ちゃんねるの掲示板内に薬物密売の書き込みをした男性が逮捕され、麻薬等特例法のあおり・唆し違反で起訴され、有罪判決を受けています。

では、こうした薬物密売の書き込みが行われる掲示板などのサイト管理者の責任は、どうなるのでしょう。もちろん、一般の掲示板も、ときには薬物密売をたくらむ者や密売人のフリをする者の投稿に晒されます。私は覚せい剤をやめたい人のための掲示板を運営していますが、そこにも時折密売人とおぼしき投稿があり、気付き次第削除しています。こうした迷惑投稿に悩まされている管理者は、少なくないでしょう。

インターネット上の違法書き込みに対しては、インターネット・ホットラインセンターや警察のサイバー・パトロールなどが目を光らせて、目に余るものに対しては、サイト管理者に削除要請が行われるといいます。度重ねた削除要請にも対応しないケースでは、サイト管理者の責任が問題になるわけです。
違法薬物サイトの運営者に対して、麻薬等特例法のあおり・唆し幇助を適用した初の検挙が報じられたのは、2009年3月のことです。薬物体験などを扱う掲示板の運営者が、投稿者が不特定多数の閲覧者に薬物犯罪を助長していることを知りながら、手助けしたとして逮捕され、麻薬等特例法違反(あおり・唆し)の幇助で起訴されました。

さて今回の2ちゃんねる騒動、今後どのような展開になるのでしょうか。掲示板という場を提供する管理者にとっての「あおり・唆し」、かなり難易度が高そうなこの問題に踏み込んだ警視庁のこれからの動きを注視することにしましょう。

【関連過去記事】
■薬物サイトであおり、そそのかし事件の続報(2009/05/26)
http://33765910.at.webry.info/200905/article_22.html
■あおり、そそのかしの適用|インターネットと薬物密売(2010/12/08)
http://33765910.at.webry.info/201012/article_6.html

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