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羽田空港のハブ化に向けたラストチャンスを逃すな!

2013年羽田発着枠増が5万回増えます!


2013年から2014年にかけて、羽田空港の発着枠の再配分が行われます。これは昨年10月に第4滑走路の運用が開始され、羽田空港が再国際化としてリオープンして拡がった発着枠の最後の配分で、今後、実現の現実性があまり高くない羽田第5滑走路ができるまではしばらくの間、羽田空港の発着枠はこれで満杯ということとなります。

2013年に羽田空港で拡大する発着枠は5万回(72便相当)ですが、現在、羽田空港は国内線で約32万回、国際線で6万回(うち深夜早朝の枠が3万回)という枠になっており、いかに5万回という枠が大きいかお分かりいただけるかと思います。ちなみに成田空港の発着枠は、国際線21.5万回、国内線2万回です。

これまでわが国は、羽田は国内線、成田は国際線と両空港をすみわけてきました。しかしながら、その後、羽田発着国内線では最遠である羽田=石垣島間の距離以内にある韓国、北京、上海ならば構わないだろうということで、チャーター枠の活用という大義名分の下で国際線が就航しはじめました。そして、昨年の10月に羽田空港に新国際旅客ターミナルがオープンし、香港、台湾をはじめ、深夜早朝帯限定ではありますがサンフランシスコ、ホノルル、パリ、フランクフルトなどの欧米路線やシンガポール、バンコクといった東南アジアにも国際線が就航し、羽田=国内、成田=国際という構造に風穴があいたわけです。

日本のハブ空港は羽田を中心に考えるべき!


もともとは、わが国が極東の地に位置している地政学上のメリットを生かして、成田空港を東アジアにおける中核空港(ハブ空港)として位置付けるつもりでしたが、国内に羽田空港があり、加えて関西国際空港、中部国際空港などを次々と造っていってしまい、空港着陸料が世界で一番高いということも手伝って、東アジアのハブ空港の座を韓国の仁川(インチョン)国際空港やシンガポールのチャンギ国際空港に奪われてしまいました。少し古い2010年10月のデータですが、仁川空港の路線数は海外137地点(うち日本26地点)と結ばれているのに対し、成田は国内8地点、海外93地点にとどまっています。

関西国際空港や中部国際空港について言えば、需要の決定的な不足により航空会社は次々と路線撤退をしてきているのが現状で、今では本邦航空会社でいえば、自社運航している国際線は韓国、中国、グアムなどの近距離国際線ばかり、国内路線についても惨憺たるもので、とても今後我が国のハブ空港としての機能を充足させられる路線の状況ではありません。

ハブ空港は例えばニューヨークからバンコクに行く外国の方の国際線乗継を行うような場合だけがその役割ではありません。当然国内線との乗り継ぎも重要です。関空や中部空港が現在のような状況ですから、欧米から国内の地方都市に行くような場合に、成田に到着して、それから羽田に移動、そこから国内線ということでは時間ばかりがかかってしまうため、ハブ空港にはなることは不可能です。むしろ国内への地点はインチョン空港の方が多いわけですから、外国人にとっても、そしてまた地方の日本人が海外に出かける場合にもインチョン経由の方が便利となってしまうわけです。

これまでは羽田=国内線、成田=国際線として、首都圏空港を2眼レフとして一体的にとらえ、羽田=成田間の空港アクセスを向上していくという考えを採用してきましたが、そういう考えではインチョンには勝てないということが明白になってきているわけで、国際線、国内線の両方を兼ね備えたハブ空港を日本にと考えた場合には、やはり成田ではなく、羽田を中心に考えるしか現実的にはありません。

ハブ空港構築はわが国の経済成長にとっての重要な戦略


わが国の経済成長を考えるとき、日本の首都圏空港が東アジアのハブ空港としての役割を果たすことは極めて重要なキーとなります。訪日外国人を現在の1000万人から3000万人にしようという「観光立国」戦略の面においてのみならず、物流の要として外国企業誘致の面でもプラスですし、何よりも成長するアジア市場へのアクセス口の地位を獲得することができるわけです。

ですから、今後10年以上にわたってしばらく拡大することがないであろう、2013年から2014年にかけての羽田空港の発着枠増は、日本の首都圏空港のハブ化構想に向けての最後のチャンスなのです。

増枠は国際線拡充に充てるべき!


民主党は、政権交代後の2009年10月に国土交通省成長戦略会議を立ち上げ、増加する5万回の発着枠を国内線2万回、国際線3万回に割り振ることを基本方針とする「国土交通省成長戦略」を昨年5月に取りまとめました。羽田の国際旅客ターミナルの容量を考えれば、国際線に4万回程度まで割り振ることが可能なのですが、恐らく成田空港しいては千葉県に配慮したものと思われます。政権交代直後、前原誠司国土交通大臣(当時)は「羽田空港をハブ空港にする」と発言したことは記憶に新しいところでありますが、今ではその勢いは跡形もありません。

しかし、よく考えてみてください。日本はこれから高齢化がどんどん進み、70歳を超えると旅行需要は途端に低下することを勘案すれば国内線需要は早々頭打ちとなってきます。また、今後北陸新幹線(長野=金沢)や北海道新幹線(新青森=新函館)の開業により航空/新幹線競合路線における航空比率は低下し、(ご存知でしょうか。東京=大阪の旅客数比率は新幹線:航空=9:1です。現在は羽田=広島以西でやっと航空の比率が高くなります)ますます国内航空需要は減少することが予想されています。そのような中、なぜ国内線に2万回も貴重な発着枠を配分するのでしょうか。これが国益でしょうか。国内線に枠を配分すれば、各社は新たな路線を開設するのではなく、機材を小型化して、例えばそれまで1日3便だった路線を5便にするなどの対応を行うことが予想されますが、新たな枠を割り振らなくても、1日50便もの便をANA/JAL/SKY/ADOが飛ばしている羽田=札幌をはじめ、羽田=福岡といった明らかに供給過剰の路線の枠を割り振ればいくらでも既存の枠内での調整は可能ですし、そもそもそうした路線に便数を増やすだけの需要が本当にあるのかは疑問です。供給を増やせば需要がついてきて増えるというのはほぼ幻想であることはこれまでの経験ではっきりとしていることです。

今後、5万回の枠を全部国際線に充てることが可能となるよう、羽田国際線ターミナルの容量を一刻も早く拡張すべきですし、少なくとも工事が終わるまでの間は、最大の4万回程度を国際線に割り振るべきです。今後の国内線需要を考えれば、将来的には国内線枠を国際線枠に振り替えるぐらいの考えを持っても良いぐらいです。

4万回分の枠が国際線に割り振られれば、航空会社は欧米路線に加え、中国各地やASEAN諸国への便を羽田から飛ばすことができますが、3万回のみの増枠では、中国やアジアの主要地点のみへの就航に留まると言われています。先ほど述べたように、国益にとって最優先すべきは首都圏空港に東アジアの「ハブ」を構築することです。バンコク路線はあるけど、インドネシア路線は成田発しかないというのではだめなのです。

今こそ国益を踏まえた空港戦略を!


成田空港開港にかかわるこれまでの経緯はあるでしょう。しかし、羽田の再国際化という新たなフェーズを迎えている中、やはり国益をしっかりと見極めた政策を打ち出していくことが大事です。どんなに羽田の枠が広がったところで、現時点では羽田空港6万回の国際発着枠に対して、成田空港は約22万回なのですから、成田空港がなくなるわけでも、また利用しないということでもありません。航空会社は収入単価の高いビジネス路線を極力羽田に、観光路線を成田にという戦略を選択するでしょうし、成田に入りたい外国航空会社も山ほどあります。昨今注目を集めている格安航空会社(LCC:Low cost carrier)を中心に活性化させるという方策もあります。貨物便の基地として更に充実することも可能です。そうしたことは関空・中部国際空港にも当てはまります。羽田・成田・関空・中部空港のすべてをわが国のハブ空港とすることは所詮無理な話であり、各空港ごとに明確な役割の方向性を示していくべき時が来ていると思います。

航空行政に限らず、わが国の政策は常に中長期の戦略性に欠け、その場しのぎの場当たり的な対応を、裁量行政の下で行ってきている印象があります。今回の羽田空港枠の配分にあたっても、「羽田発の国際路線を飛ばす場合には、成田発の同路線も就航させなければならない」という本末転倒のルールを国土交通省が検討しているらしいという声も聞こえてきています。真偽のほどは分かりませんし、まさかとは思いますが、実はそういうルールが伊丹空港と関空で今でも存在しています。利便性の低い関空から航空会社が撤退しないように、伊丹空港発着の幹線路線便数を5割以内に抑えることや、長距離路線(札幌・沖縄等)は5%以内に抑えることなどのルールが定められて、マーケットを無視した、国民不在の航空行政が行われてきているのです。従ってひょっとしたら成田を救うためにと、そういうルールが定められる可能性はあながちゼロとは言い切れません。

何度も繰り返しますが、本来は羽田空港の発着枠を可能な限り国際線に割り振って、国内線と国際主要路線を有するアジア有数のハブ空港にしていくことが一番大事です。しかし昨年作った羽田の国際線旅客ターミナルはすでに容量が足りないというお粗末さ。そうした中、成田の空港運営会社は、LCC誘致のために、専用のターミナルビルを新たに建設し、新規路線の発着料は割引くといったことを検討しており、しかもたちの悪いことにその財源はLCC専用ターミナルを利用しない既存航空会社を利用する旅客からも一律で施設使用料を徴収することで賄うなどということも検討されています。何ともちぐはぐだとは思いませんか。成田空港運営会社はあくまで民間企業なので・・と言いますが、政府が100%出資している特殊会社ですから、国益に則った事業運営の方向性を政府が株主として示せば良いのです。

世界一高い着陸料の軽減も必要!


世界一高い着陸料もわが国が東アジア経済の成長の果実を得るための足かせとなっています。これまで空港整備特別会計という不透明な会計の中で、必要のない空港をどんどんと国内に乱立させてきた結果なのですが、そうした需要のない空港は廃港の上、土地を民間に売却し、また存続する空港については土地(滑走路)と施設(ターミナルビル)を一体で民間や地方自治体に売却し、効率的な空港運営を行うことによって着陸料を引き下げていくことも必要ですし、航空利用者による負担を主な財源としている当該特別会計を廃止し、一般財源化(含む地方への移管)して、公共事業費の中で道路・港湾・漁港整備費と比較して極めて低い水準である空港整備費の割合を、短期間だけでも一時的に高めていく「ハブ空港構築のための集中資本投下期間」といったことも、成長戦略の主要な柱として検討すべきです。

2013年から2014年にかけて行われる羽田空港の発着枠配分について、政府はもう一度、わが国の成長戦略のための重要な前提、基本的なインフラである空港運営戦略について、国益の観点から、可能な限り国際線の枠に割り振るための再検討を行うべきと考えます。

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