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質疑の感想、続き。

 石破 茂 です。

 昨日の予算委員会の質疑で感じたことをもう少し続けて書きます。

 私が「何とも言いようのない徒労感」を感じたのは、総理をはじめとする政府の諸君が「とにかく何とか委員会を乗り切ればいい」としか考えていないことがありありと伝わってきたからです。

 わけの分からない答弁が目立つのは、時間を消化することばかり考えていて、熟議、というスローガンとは裏腹に、議論をしようという気が全くないからなのです。
 
 このようなやり方が罷り通るのは、衆議院予算委員会のルールに問題があるからだと考えます。

 衆議院の予算委員会で「質問者の持ち時間一時間」というのは「質問と答弁を併せた時間が一時間」ということでこれを「往復一時間方式」と言います。

 不覚にも閣僚になって初めて知ったのですが、参議院で「持ち時間一時間」というのは「質問の時間だけで一時間」ということで、これを「片道一時間方式」と言います。つまり、衆議院では極端な話、答弁者がどうでもいい話を延々としていれば、質問者の時間はあっという間に無くなってしまうのに対し、参議院ではこのやり方が通用せず、いくら意味のない答弁を延々としても全体の質疑時間が延びるだけなのです。

 衆議院予算委員会で質問者が「総理はきちんと問いに答えろ!」と苛立ったり、「時間がありませんので次の質問に移ります」などと、なんとなく追及不十分の印象を与えてしまうのはこの所為です。

 国会の質疑で与えられた時間は政府のものでも質問者のものでもなく、主権者である国民のものなのに、今の政府の閣僚たちには全くその意識は無く、本来中立公平であらねばならない委員長はあの有様です。

 私が答弁者であった頃はまず結論を述べ、そのあとその理由を述べるように心がけていたつもりなのですが(もっとも「答弁が長い」とお叱りを時々頂いておりましたが…)。

 政府にとっては有難いことではありませんが、衆議院予算委員会も参議院の片道方式を採用すれば、いかに政府が不誠実でも、もう少し内容のある質疑ができるように思います。

 新聞は「追及が甘い」「審議を止められなかった」などと無責任に批判しますが、政府が逃げの姿勢に徹し、委員長がこれとグルであればどうにもなりません。

 判断は、国会中継やネット録画を見ている方々がすればいいことであり、その数は着実に増えていると確信しています。

 民主党が酷いことはもう多くの人が分かっているのであり、批判よりも「自民党ならこうする」というビジョンを具体的に示すことこそが解散に追い込む近道なのだとつくづく思います。

 与謝野大臣の答弁は、見ていてとても悲しい気持ちになりました。

 自民党を除名になったことでケジメはついている、いい仕事をすることで有権者に責任を取りたい、と答弁されましたが、一昨年の選挙で自民党公認を受ける際「公認を受けた者として、任期中党の移動をしないことを誓約する。これに反した場合は議員を辞職する」との誓約書を提出したことをどう考えておられるのか。

 この誓約書は公認を受けた者すべてが総裁あてに提出しているものですが、「いい仕事をすれば許される」というなら誓約など何の意味も持ちません。

 こんなことは言いたくはありませんが、税金を原資とする政党助成金から支給された公認料も本来自民党に返還すべきものであり、これを与謝野氏が会派入りした民主党の不当利得と言わずして何というのか。

 与謝野氏が直筆でサインし、花押を記されたこの誓約書を大きく拡大してパネルにして示さなかったこと(ご丁寧にも、この誓約書には「この誓約に反した場合はこの誓約書を公表されても構いません」と書かれています)、公認料に言及しなかったことは、自民党の良識、若しくは惻隠の情の発露というべきものでしょう。

 稲田朋美議員がいみじくも指摘した通り、「信なくば立たず。どんなに正しいことを言っても、信用の無い人が言うのなら意味がない」ということです。
 
 与謝野大臣は本当は議員辞職をしてケジメをつけたかったのではないでしょうか。

 甘い、と言われるかもしれませんが私は与謝野氏の人格をまだ信じたいのです。

 しかし、衆議院で三分の二の議席を得て、与野党逆転状態の参議院で否決された法案の再議決の夢を捨てきれない民主党がこれを阻止したのではないかと思っています。そうだとすれば、どこまでも志が低く、情けない人たちです。

 質疑をご覧になってのご意見、ご感想、ご叱正、有り難うございます。

 例によって例の如く、朝日新聞の評価は極めて低かったようですが、むしろ名誉なことだと思うべきなのかもしれません。

 開き直るつもりはないのですが、なにしろ防衛庁長官当時に防衛庁改革として防衛参事官制度廃止を提唱した時、「やはり文官統制が必要だ」という社説を書いた新聞社ですからね…。

 「文民統制」の誤植ではないかと目を疑いましたが、読んでみると本当に官僚が自衛隊を統制することが正しいと信じているらしいことがわかって、愕然としたことをよく覚えています。

 日頃言論の自由や表現の自由を声高に唱えている新聞社が、防衛事務次官通達の違憲性についての議論を詳報しないことこそが彼らの偽善性・欺瞞性を見事に物語っているように思えてなりません。

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