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スルガ問題、TATERUだけじゃない!不正不動産融資を止める秘策はあるか

金融庁は不正不動産融資問題で役員刷新に追い込まれたスルガ銀行に対して、6か月間の一部業務停止命令を発令しました。具体的には、かぼちゃの馬車に代表される投資用不動産関連融資に関する新規業務を停止するというもの。

この命を受けて、同行では抜本的な業務の見直しをおこなうとの見解を表明しており、同行のみならず投資用不動産融資姿勢は大きな曲がり角を迎えることになりそうです。

”第二のスルガ問題”として注目の不動産仲介業者”TATERU”

スルガ銀行では、融資申込人の預金通帳データの改ざんに銀行員も加担して大量の不正融資があることが明るみに出たわけですが、同様の事件は東証一部上場の不動産投資仲介業TATERUでもおこなわれていたことが明らかになり、「第二のスルガ問題」として注目を集めています。

TATERUがタッグを組んでいたのは第二地銀の西京銀行。銀行や上場企業の常識を逸脱する明らかなコンプライアンス違反行為が、なぜ日本の東西で同時多発的におこなわれていたのでしょう。

この問題の背景にはいくつかの要素が、複雑に絡み合っていると考えられます。まずひとつは、不動産投資に関する仲介業者のセールス対象の変化です。

アパート経営に代表される不動産関連投資は、古くから富裕層向けの商品という位置づけが定着していました。すなわち、所有遊休不動産の有効活用、あるいは来るべき相続を想定し相続税低減を狙ったアパート建築資金融資などがそれにあたります。

これらは主に銀行の相談業務の延長で派生するものだったのですが、それを横目で見ていた不動産業者がアパート用不動産の取引ロットの大きさに目を付け、盛んに売り込みを掛けるようになりました。

富裕層に対して資産運用あるいは節税目的でアパート建設用地用の不動産を販売し、上モノ建設資金を銀行につないでいるうちは、買い手にとっても銀行にとっても至って安全圏のビジネスでありました。

しかし、次第に買い手マーケットのパイが減っていくにつれて、不動産業者は一般庶民を対象としたアパート一棟投資という大胆な売り込みをかけるようになったのです。狙いどころは、長期低成長経済下で給与所得の上昇が見込めないサラリーマン層。銀行からの借り入れによるアパート経営で小遣銭稼ぎをしましょう、というのが彼らの手口でした。

かぼちゃの馬車、TATERUのケースは他の地方銀行でも

収支が安定しないアパート経営に対するサラリーマンの融資申し込みなどは、昔の銀行なら申込人によほどの資産背景でもない限り応諾しなかった案件です。ところがここでもうひとつ要素が絡みます。それは日銀のマイナス金利政策です。

マイナス金利政策により運用難に陥った銀行、特に地銀はメガバンクのように海外に新たな収益源を求めることもできず、国内で金利収入が稼げる融資案件の発掘に奔走することになります。TATERUのような投資用不動産仲介の不動産業者にとっては、まさに渡りに船状態でした。銀行のニーズが旺盛とあらば、仲介業者は大いに走ります。

走りに走ったTATERUは、「スマホアプリでアパート経営がはじめられる」というサービスを売りにして成約件数を伸ばす、という流れにまで至ったわけなのです。すなわち、手軽に誰でもアパート経営で小遣銭稼ぎができるという安直なイメージで、大きなリスクが伴うアパート経営を一般人相手に大量に販売することも当たり前にしてしまった。

もちろん、資料改ざんはあってはならないことです。15年にマザーズに上場したTATERUですが、銀行の旺盛なニーズという背景と上場により業績を無理にでも伸ばさざるを得ないプレッシャー経営が、行き過ぎた果てに感覚をマヒさせ不祥事を招いたと確信するところです。

スルガ銀行=かぼちゃの馬車、TATERU=西京銀行の2件は、現時点で大きく社会問題化していますが、全国の他の地方銀行でも似たようなケースが散在しているであろうことは、想像に難くありません。

なにしろ全国に106ある地銀のうち約半数が2期以上連続で本業が赤字。うち23行は5期以上連続で赤字という異常な事態にあるのです。どこの地銀でも地場の不動産仲介業者は案件紹介の大口先であり、金利が高い投資用不動産向け融資案件は喉から手が出るほど欲しい、というのが各行の本音であると思われるからです。

スルガ、TATERUの不祥事を受けて、投資用不動産販売及び投資用不動産向け融資は一時的に取り扱いが慎重になる流れは確実だろうと思われます。融資残高のチェックは、本人来店による通帳原本確認あるいは、スマホでのリアルタイム残高確認等がルール化されることでしょう。金融庁は各地銀に投資用不動産向け融資の総点検を命じるでしょうし、危ないと感じられる銀行には直接指導に入ることも視野にあると思います。

政府、日銀は金融政策の転換を真剣に検討すべき時期に来た

しかし、投資用不動産向け融資そのものが違法取引ではない以上、これを全廃できるものではりあせんし、マイナス金利下における地銀の収益改善打開の妙案が他に見出せない限りにおいては、再度この領域のビジネスに頼らざるを得ない銀行が続々出てくることも大いに考えられるところです。

融資案件というものは多少のリスクが感じられるものでもすぐに不良債権化することはほとんどないので、収益環境が厳しい中では若干危ない案件でも、様式が整っていればつい手を出してしまうということはありがちな流れなのです。

結局のところ銀行と仲介不動産会社は持ちつ持たれつの関係にあり、どちらかが手を引かない限りこの手の案件はなくなることはないでしょう。不適合申込者排除という正常化に向けその根本を絶つということを考えるならば、やはり何をおいても銀行融資審査の厳正化以外にありません。

そのために必要なことは、銀行の収益環境を改善させるマイナス金利政策の終焉以外にないのではないでしょうか。多くの地銀で赤字状況が続くなら、危ない橋も渡らざるを得ない状況もまた続きます。ならば今はもはや、その危ない橋が一般市民をも巻き込みかねない深刻な事態にまで陥っていると判断するべき状況にあるように思うのです。

マイナス金利政策導入から2年半。その導入効果よりも弊害の方が大きくなってきているとはいえないでしょうか。政府、日銀は金融政策の転換を、真剣に検討すべき時期に来ていると思えます。

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