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シリアでの日本人ジャーナリスト解放の背景

シリアで拘束されていたフォト・ジャーナリスト安田淳平氏が解放された。3年余に亘る長すぎた拘束ではあったが無事に解放されたことを喜びたい。

安田氏は、平成27年6月21日以降消息を絶ったとされている。同氏は、米国党が支援する反体制のシリア解放軍(Ahrar al-Sham)司令官にインタビューを申し入れ、同時に同シリア解放軍に対して安全の担保を求めたが、それが得られないままにインタビューのためにアイン・アル=アラブを目指したと見られている。

その際には、トルコのエージェントに対してシリア入国の便宜を図ることを打診、断られると自力で入国するとしたが、最終的にはシリア人の兄弟の支援を受けてシリア側に入国、入国後まもなく、何者かに拘束されたと言われてきた。この辺りの経緯については、ご本人が帰国後に明らかにされることであろう。

さて、安田氏を拘束した組織であるが、ヌスラ戦線系(現在のハイヤート・ッ=タフリール・ッ=シャーム/HTS)の組織で、シリア政府と抗争を繰り広げる反体制派側の最後の拠点であるイドリブ県で拘束されてきたとみられてきた。イドリブ県では、ロシアやイラン、あるいはレバノンのヒズボッラーの支援を得たシリア軍が激しい攻撃を行ってきた。

このような中、トルコ政府とロシア政府の間でいわゆる「ソチ合意」が結ばれ、イドリブ県への総攻撃の構えを見せていたロシア軍とシリア政府軍は、今月15日まで一旦停戦し、非武装地域を設けて反体制派の火器をそこから撤収させること、移動に際しては反体制派に攻撃を加えないこと等が合意され、同県内にはトルコ軍の監視ポストも設置された。つまり、安田氏を拘束した武装勢力は、イドリブ県の他の場所やトルコ側に移動し、勢力の立て直しを図ったはずで、安田氏についてもこれを機会に手放すインセンティヴが働いたと考えられる。

安田氏を拘束した組織は外国人を殺害することではなく、身代金を目的としてきたが、安田氏は人質保険(K&R Insurance)に加入しておらず、複数回に亘る数百万ユーロの身代金要求に対しても対応ができずに拘束され続けた。今回の解放に際して、身代金が支払われたか否かは承知しないが、ソチ合意によって身代金の要求額は相当下がったはずである。

今回の解放に際しては、いわゆる「カタル・ルート」が使われたと言われているが、このルートはHTS系へのアクセスの実績があるとは言え、身代金を要求する側から言えば、気前のよいルートである。このルートは、2015年には狩猟のためにイラクに入った28人のカタル人が2017年にかけて拘束され、その際の交渉を通じてできあがったコネクションと考えられる。

その際には10億ドルの身代金(!)が支払われたとされるが、その金は、イラクのカターイブ・ヒズボッラーと共に、今回安田氏を拘束した組織に流れ、その資金は米軍を標的にし、あるいはシリア国軍と戦うために使用されたと言われている。

イドリブ停戦をもたらしたソチ合意はもろいものでいつ崩れるかわからない。それでも安田氏の解放を含め、シリア情勢に大きな影響をもたらしている。安田氏の解放は人道的に喜ぶべきことではあるが、シリアの人々は今日も大きな苦しみの下に置かれていることを忘れてはならず、中東の安定が早期に回復されることが望まれる。

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