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「脱百貨店」と「不動産業へのシフト」、高島屋に見る百貨店ビジネスの変貌

 今年9月、日本橋に新たなショッピングセンターをオープンした高島屋。百貨店の売上は減少傾向にあるが、その強固な財務基盤、不動産事業の戦略は注目に値する。

■都市型ショッピングセンター「日本橋髙島屋S.C.」オープン

 高島屋(8233)は9月25日、東京・日本橋に専門店が入居する新館をオープンした。隣接する「本館(日本橋高島屋)」や「東館」「ウオッチメゾン」に「新館」を加えた4館を、百貨店と専門店からなる都市型ショッピングセンター(S.C.)としてアピール。この日本橋高島屋S.C.は、平成に次ぐ新しい時代でも繁盛し続けるためのひとつの回答なのだろうか? 

 流通2強といわれるイオン(8267)とセブン&アイ・ホールディングス(HD/3382)、それに三越伊勢丹HD(3099)などの大手百貨店のなかで、経営統合といった大型M&A(買収・合併)と距離を置いてきたのは高島屋だ。売上高や各種利益などの財務指標で継続性が確認できる同社を通して、百貨店ビジネスに迫ってみた。

都市型ショッピングセンターとしてオープンした日本橋髙島屋S. C.新館。
本館は重要文化財となっている(筆者撮影)

■売上高1兆円への回復は遠く

 国内百貨店全体の売上高ピークは、平成に入って間もなくの1991年(9兆7130億円)。それから10年余年、高島屋も2002年2月期に最高額をマークして以来、売上高を減少させてきたのが現実だ。高島屋の主な指標について、2002年2月期と2018年2月期を比較してみよう。

 2018年2月期のグループ売上高は9495億円。2002年2月期比では20%を超すダウンだ。ここ数年持ち直し傾向にあるとはいえ、2009年2月期に1兆円を割り込んで以来、1兆円台への回復は未達。個別店舗の売上高も京都店、日本橋店、横浜店が20%超の減額になっている。

 従業員の減少も際立つ。グループ従業員も親会社1社の単体ベースでもおよそ半減。2人に1人が高島屋を去ったことになる。百貨店従事者が多い単体ベースのパート・アルバイトも約20%の減員。結果として、単体ベースの人件費総額は1006億円から578億円にダウン。カット率は40%を超す。

 従業員の平均給与には、そうしたリストラの影響が垣間見える。人件費の総額は減額になっているが、従業員数も減少したことでややアップ。平均年齢や平均勤続年数の推移も加味すれば、横バイである。

「フリーCF」は1670億円の黒字

 2002年2月期と2018年2月期の比較でプラスは総資産、それに利益の蓄積を示す利益剰余金、いわゆる内部留保である。高島屋の場合、2002年2月期以降、退職給付会計の変更などで2度ほど最終赤字を記録しているが、営業利益は黒字を継続中である。受取配当金などを計上する経常利益は常に営業利益を上回っており、財務基盤も強いと見ていいだろう。

 営業・投資・財務活動別のキャッシュの流れを示す、営業キャッシュフロー(CF)、投資CF、財務CFからは、キャッシュにも余力があることがわかる。2002年2月期からの17期累計では、営業活動によって6144億円のキャッシュを新たに獲得。そこから、投資活動に4474億円を社外に投じ、配当金や借入金の返済などに1285億円を充てきたことが読み取れる。

 営業CFと投資CFの和を「フリーCF」と呼ぶが、1670億円の黒字である。会社が自由に使えるキャッシュである。それを原資に配当金を支払い、借入金の返済を進めてきた。事実、利子をつけて返済しなければならない有利子負債は減少傾向となっている。

 地方店舗を中心に閉店が相次いでいることから苦境が強調される百貨店ビジネスだが、高島屋はリストラを進めたことなどもありそれ相応の利益を実現し、キャッシュも獲得してきたといえるだろう。

「百貨店」事業の売上に迫る「不動産」事業

 注目したいのは、百貨店事業と不動産事業の推移である。2018年2月期の百貨店事業の売上高は8265億円。2002年2月期の9871億円からは16%強の減額である。一方、不動産事業は2.4倍増の474億円だ。

 営業利益でも不動産事業は百貨店事業に迫っており、毎期のようにグループ全体の3割から4割は不動産事業が稼ぎ出してきた。食料品、雑貨、ファッション、ヨガなどスポーツサービス、レストラン……。地下1階、地上7階の日本橋高島屋の新館には日本初上陸を含めた約120店舗が入居しているが、運営主体は不動産子会社である。

 立川店も専門店を大幅に加えた立川高島屋S. C.として10月11日にリフレッシュオープンした。高島屋は今後、S. C.などの不動産事業を中心に展開していくことは明らかだ。S. C.の元祖ともいうべき玉川高島屋S. C.(玉川店)の売上高は、他店補とは異なり2002年2月期からの減少幅が小さい。高島屋がS. C.ビジネスに注力するのも自然の流れである。

 不動産の取得にも積極的だ。土地の価額を含めこれまで日本で最も豪華な店舗(簿価ベース)は、三越伊勢丹HDが運営する三越日本橋本店(1379億円)だった。しかし、土地を100%所有にした高島屋新宿店(2056億円)がその座に就いた。日本橋高島屋S. C.でも、武田薬品工業から土地を取得するために495億円を投じている。

 「脱百貨店」と「不動産業へのシフト」は、高島屋に限らず大手百貨店に共通する流れだ。大丸や松坂屋を擁するJ. フロント リテイリング(3086)は、ショッピングビル開発のパルコ事業と不動産事業に注力。両事業の合計売上規模はおよそ1000億円まで膨らんできた。同グループが百貨店跡地を複合商業施設として再開発した「GINZA SIX」や「上野フロンティアタワー」に百貨店が復活することはなかった。

 三越伊勢丹HDや阪急阪神百貨店を擁するエイチ・ツー・オー リテイリング(8242)も、不動産事業の拡大を視野に入れている。持続成長をめざして従来型の百貨店ビジネスからの転換を進める高島屋にとって、日本橋高島屋S. C.の失敗は許されないところだ。

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