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- 2018年10月23日 10:39
激しく責め立てられる「フェイスブック」に、なぜ世界のパブリッシャーは頼り続けるのか
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米国や欧州のメディアによるフェイスブック(FB)批判は、凄まじい。米大統領選のトランプ当選や英国のEU離脱に端を発して、この1~2年、FB叩きは過熱化する一方である。
フェイクニュースやロシア疑惑、さらには個人情報の不正利用や流出と、FBを舞台にした不祥事が途絶えないから当然かもしれないが、どうしてここまで1企業の不手際に厳しく延々とメディアが責め立てるのか。それはFBが、今や世界中の人々の個人生活や社会にとって測り知れないほどの大きな影響を及ぼしているからだろう。世界の22億人以上の人々が毎月利用し、その66%にあたる15億人近くが毎日FB上で情報のやりとりをしている。先進国だけではなくて新興国も含めて、ほとんどの国で人々の生活に深く根付いたFBに対して、メディアが社会的責任を問い直すのももっともである。
だが、メディアがしつこくFBを責め立てるのにはそれだけではなくて、別の理由もありそうである。この数年の間に、ソーシャル化とモバイル化で急変するオンラインパブリッシングの世界でFBが主導権を握り始め、パブリッシャーのメディアビジネスがFBの優位な形で展開せざる得なくなってきている背景がある。こうした流れに不満を募らせているブリッシャーとしては、FBとの交渉力を高めたいという思惑もあって、ここぞとばかりに自分たちのメディアを通してFBの問題点追及に力がこもるのも当然かもしれない。
こうしたFBにまつわる騒動は、日本にとってほとんど縁のない動きである。ただ、海外のほとんどの国では現時点でも、パブリッシャーに対するFBの影響力は大きい。NYタイムズのような伝統的な二ュースパブリッシャーにとっても若中年層を開拓するためにFBが必須のプラットフォームになってしまっている。消費者(オーディエンス)も、FBを介してメディアコンテンツと接する機会を増やすようになっている。
日本と海外においてFBの影響力に大きなギャップがあることは、いくつかの海外の調査データからも明らかである。英ロイター(Reuters Institute)が今年の1月から2月にかけて、36か国のニュースユーザー7万人(各国約2000人)を対象に実施した調査結果を見てみよう。各国の回答者のFB利用率(一般)と、FBをニュースメディアの接触の場として利用している回答者の割合(ニュース)を、国別に示したのが図1である。
ここでは、FBの利用が国内で禁止されている中国は調査対象外になっているため、日本だけが極端に、FB上でニュースメディアに接触する人の割合が9%と低くなっている。またメディア先進国以上に新興国において、メディア接触の場としてFBを利用している割合が高くなっているのも興味深い傾向である。こうした日本と海外との差異が、メディア社のFB対応にもはっきりと反映されている。
海外の主要パブリッシャーがFBに飛びつくのは、グローバルに若年層を含んだ巨大な潜在ユーザーにリーチできるからである。ほとんどの国で、有力パブリッシャーがFBを頼っている。さらに拡散性が極めて高くて、一気に多くのオーディエンスを獲得できる強力な飛躍台にもなりうるため、新興メディアにとっても立ち上げ時にはFBの利用が欠かせなくなっている。
国際展開するパブリッシャーも、FBは格好のプラットフォームになっている。英国の公共メディアのBBCは、図1に示したように英語版の旗艦FBページ(BBC News)が4755万人のフォロワーを擁しているほかに、各国の現地語版FBページにも多くのフォロワーを抱えている。例えばベンガル語版BBC Newsは1223万人ものフォロワー数を誇っている。逆にやっぱりというか日本語版のBBC News Japanでは約2000人からしかフォローされていない。
さらにCCTV傘下のCGTN(China Global TV Network)も、TV(動画)コンテンツを中心にFB経由で世界中に配布し、オンラインで視聴できるようにしている。図3で示すように、FBだけではなくて、TwitterやYouTubeでも配信しているが、フォロワー数から明らかにFBへの依存が圧倒的に高い。FBページのフォロワー数は、英語版のCGTNが6800万人で、フランス語版、アラビア語版、スペイン語版のCGTNでそれぞれ1500万人前後も抱えている。
中国にとって都合の良い国際世論作りを狙って、FBを利用してコンテンツを世界中に効率よくばらまいているのである。最近では一帯一路に関する記事が目立つ。
フェイクニュースやロシア疑惑、さらには個人情報の不正利用や流出と、FBを舞台にした不祥事が途絶えないから当然かもしれないが、どうしてここまで1企業の不手際に厳しく延々とメディアが責め立てるのか。それはFBが、今や世界中の人々の個人生活や社会にとって測り知れないほどの大きな影響を及ぼしているからだろう。世界の22億人以上の人々が毎月利用し、その66%にあたる15億人近くが毎日FB上で情報のやりとりをしている。先進国だけではなくて新興国も含めて、ほとんどの国で人々の生活に深く根付いたFBに対して、メディアが社会的責任を問い直すのももっともである。
だが、メディアがしつこくFBを責め立てるのにはそれだけではなくて、別の理由もありそうである。この数年の間に、ソーシャル化とモバイル化で急変するオンラインパブリッシングの世界でFBが主導権を握り始め、パブリッシャーのメディアビジネスがFBの優位な形で展開せざる得なくなってきている背景がある。こうした流れに不満を募らせているブリッシャーとしては、FBとの交渉力を高めたいという思惑もあって、ここぞとばかりに自分たちのメディアを通してFBの問題点追及に力がこもるのも当然かもしれない。
こうしたFBにまつわる騒動は、日本にとってほとんど縁のない動きである。ただ、海外のほとんどの国では現時点でも、パブリッシャーに対するFBの影響力は大きい。NYタイムズのような伝統的な二ュースパブリッシャーにとっても若中年層を開拓するためにFBが必須のプラットフォームになってしまっている。消費者(オーディエンス)も、FBを介してメディアコンテンツと接する機会を増やすようになっている。
日本と海外においてFBの影響力に大きなギャップがあることは、いくつかの海外の調査データからも明らかである。英ロイター(Reuters Institute)が今年の1月から2月にかけて、36か国のニュースユーザー7万人(各国約2000人)を対象に実施した調査結果を見てみよう。各国の回答者のFB利用率(一般)と、FBをニュースメディアの接触の場として利用している回答者の割合(ニュース)を、国別に示したのが図1である。
ここでは、FBの利用が国内で禁止されている中国は調査対象外になっているため、日本だけが極端に、FB上でニュースメディアに接触する人の割合が9%と低くなっている。またメディア先進国以上に新興国において、メディア接触の場としてFBを利用している割合が高くなっているのも興味深い傾向である。こうした日本と海外との差異が、メディア社のFB対応にもはっきりと反映されている。
世界の主要パブリッシャーがFBの手のひらに
各国の主要ニュースパブリッシャーのFBページが抱えるフォロワー数を図2に示す。海外の大手ニュースメディアが500万人~4000万人規模の大多数オーディエンスからフォローされているのに対し、日本の主要ニュースメディア(日本語版)はわずか5万人~35万人くらいしかフォローされていない。1桁どころか2桁くらいの差がついている。海外の主要パブリッシャーがFBに飛びつくのは、グローバルに若年層を含んだ巨大な潜在ユーザーにリーチできるからである。ほとんどの国で、有力パブリッシャーがFBを頼っている。さらに拡散性が極めて高くて、一気に多くのオーディエンスを獲得できる強力な飛躍台にもなりうるため、新興メディアにとっても立ち上げ時にはFBの利用が欠かせなくなっている。
国際展開するパブリッシャーも、FBは格好のプラットフォームになっている。英国の公共メディアのBBCは、図1に示したように英語版の旗艦FBページ(BBC News)が4755万人のフォロワーを擁しているほかに、各国の現地語版FBページにも多くのフォロワーを抱えている。例えばベンガル語版BBC Newsは1223万人ものフォロワー数を誇っている。逆にやっぱりというか日本語版のBBC News Japanでは約2000人からしかフォローされていない。
中国の国営メディア、国内使用禁止のFBをフル活用
FBを活用した国際展開で目立つパブリッシャーとなると、中国国営テレビ放送局CCTV(China Central Television)の躍進が見逃せない。中国国内では利用を禁止されているFBを、一転して国際展開ではフル活用しているのだ。英語版CCTVのFBページ(CCTVcom)のフォロワー数は、この1年間だけで約600万人も増えて約4800万人に達し、英語版BBCを追い抜いた。さらにCCTV傘下のCGTN(China Global TV Network)も、TV(動画)コンテンツを中心にFB経由で世界中に配布し、オンラインで視聴できるようにしている。図3で示すように、FBだけではなくて、TwitterやYouTubeでも配信しているが、フォロワー数から明らかにFBへの依存が圧倒的に高い。FBページのフォロワー数は、英語版のCGTNが6800万人で、フランス語版、アラビア語版、スペイン語版のCGTNでそれぞれ1500万人前後も抱えている。
中国にとって都合の良い国際世論作りを狙って、FBを利用してコンテンツを世界中に効率よくばらまいているのである。最近では一帯一路に関する記事が目立つ。