記事

「有給休暇」強制取得社会の始まり

■年間5日間の有給休暇取得の義務化

 2019年4月1日から、年間5日間の年次有給休暇の取得が義務化されることになる。そんな法案がいつの間に通ったのか気付きもしなかったが、2018年6月29日に成立していたらしい。

 年間10日間以上の有給休暇が付与されている労働者が対象ということだから、日本の正規労働者のほぼ全員が5日間は絶対に有給休暇を取得しなければならないということになる。
 私自身、有給休暇は年に1回取(れ)るかどうかという状態なので、有り難いと思う反面、本当に日本全国の労働者に適用できるのだろうか?という不安も同居している。

 この法案で注目すべきは、違反企業には30万円以下の罰金が課されるというところだ。政府が民間企業に命令するという意味では、完全な社会主義政策だとも言えるが、ここまでしないと日本の企業では有給休暇も満足に取れないということなのだろう。

 しかし、この場合、非正規雇用の人々はどうなるのか?という疑問も残る。最近はパートやアルバイトにも有給休暇が有る場合が多くなったとはいえ、不公平感が更に増すことになってしまうような気もする。自営業者等、出勤することによってしか給料が生じない人々には、休日が増えることは必ずしも喜びには繋がらない。

■「働かなくても給料が出る」=「働いても給料が出ない」

 日本人が有給休暇を取得できないのは、有給休暇制度そのものが不公平感を齎す制度だからでもある。
 有給休暇を多く取る人と有給休暇をほとんど取らない人がいた場合、両者の間には大きな不公平感が生じる。「働かなくても給料が出る」ということは、逆に言えば、「働いても給料が出ない」ことを意味するからだ。有給休暇を多く取る人は得をし、有給休暇をほとんど取らない人は損をするという不公平な悪平等制度であるために、真面目な人ほど、気兼ねして有給休暇を取れなくなる。

 そして、仕事ができる人が有給休暇を多く取れば嫉妬され、仕事ができない人が有給休暇を多く取れば憎まれる。そのため、どちらも気兼ねして有給が取れなくなる。
 公平な「無給休暇」であれば気兼ねすることなく取れるのだが、悪平等な「有給休暇」であるがために、気兼ねすることになってしまう。

■バランスを欠いた「やせ我慢社会」

 「嫉妬社会」であるがゆえに有給休暇制度が馴染まない。加えて、日本は、良くも悪くも「やせ我慢社会」なので、有給休暇制度が活かせない。「やせ我慢」は「武士道」に通じる概念で、責任ある立場にいる人間は休まないことが正しいという人生美学のようなものだが、幸か不幸か、その人生美学が「過労死」というものを作り出す元凶にもなっている。

 「休まずに働くことは良(善)いことだ」という高貴な精神は決して否定するべきものではないが、それが行き過ぎると「無理をしても休んではいけない」「健康に悪くても休んではいけない」ということになってしまう。

 人生に美学を持つことは大事なことだが、人生にはバランスも重要だ。働き過ぎも良くないし、遊び過ぎも良くない。働くことは良いことかもしれないが、加重なストレスを抱えながら働くことは良いことだとは言えない。
 このことは、身体を壊すほど働いた経験の有る人にしか解らないかもしれないが、実際に命の危険を感じたことの有る人なら解っていただけると思う。

 政府が罰金制度まで課さなければ有給休暇を取得できないというような社会は、明らかにバランスを欠いている。
 ついでに言うと、正規社員と非正規社員の待遇に差が有り過ぎることもバランスを欠いている。
 バランスを欠いた様々な欠陥制度をそのまま運用してきたがために、有給休暇取得の義務化などという問題も生じたのだと言える。

あわせて読みたい

「有給休暇」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    韓国への防衛協力を即時停止せよ

    和田政宗

  2. 2

    女芸人 大御所もセクハラはダメ

    たかまつなな

  3. 3

    照射問題に前防衛相「怒り示せ」

    佐藤正久

  4. 4

    SPA!に抗議した女子大生は危険

    小林よしのり

  5. 5

    高須氏がローラに理解示す 涙も

    田中龍作

  6. 6

    交渉拒む韓国 反撃するしかない?

    MAG2 NEWS

  7. 7

    ルノーが数日中にゴーン氏解任か

    ロイター

  8. 8

    無闇なインフル通院に医師が警鐘

    中村ゆきつぐ

  9. 9

    金持ちの道楽でない左翼が必要

    常見陽平

  10. 10

    ゴーン氏庇えぬ仏 裏に対露外交?

    やまもといちろう

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。