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いじめは受忍限度を超えなければ安全配慮義務はないのか?千葉県我孫子市いじめ後遺症訴訟・控訴審

千葉県我孫子市の鈴木多佳子(19、仮名)が、小学4年生のときに暴行事件で頭にけがを負い、その不安から学校に登校できなかったなどとして、学校設置者の我孫子市と、加害行為を行った児童とその保護者を相手に損害賠償を求めている訴訟で、千葉地裁松戸支部の一審判決を不服とした控訴審の第一回口頭弁論がこのほど、東京高裁で開かれた。

裁判長は多佳子側が示している、安全配慮義務があったとして取り上げた一部について「議論の余地がある」として、双方に答弁書で主張を述べることを求めた。

多佳子側「一審判決は伝聞によるものを認定。証拠評価を誤った」

控訴趣意書によると、千葉地裁松戸支部が認定した事実は、証拠評価を誤った、と指摘している。

一審判決によると、多佳子が4年生となった2010年1月14日午後2時40分ごろ、加害女児・田中道子(被告、仮名)は、集団下校の際、小学校の昇降口の階段付近で、多佳子にわざとぶつかった。

そのとき、多佳子は道子に対して平手ではたき返し、お互いに叩いては逃げていた。多佳子が逃げようとしたところ、そばにいた加害男児・藤原克哉(被告、仮名)に、多佳子を押さえつけるように指示した。克哉は多佳子のランドセルを押さえつけた。道子は拳で多佳子の額あたりを殴った。

逃げようとした多佳子を道子は追いかけた。階段の2階に上がる踊り場付近で、道子は多佳子の肩をつかんで押した。その結果、多佳子は頭を複数回ぶつけた。道子はしゃがんだ多佳子の頭をさらに壁にぶつけ、頭部打撲と頭部外傷性後遺症等を与えた。

多佳子側は、これらは伝聞であって、事実は、多佳子の証言と報告書に書かれているものだとしている。

また、事実認定を元に一審判決では、克哉がたまたま逃げようとする多佳子のそばにいたために、道子に指示されたにすぎず、その後は道子の多佳子に対する暴力には加わっていないとしている。これに対して、多佳子側の主張は、「道子と克哉は同級生であり、一緒に下駄箱付近に来た。道子が多佳子を意図的に階段を押す行為を目撃しているのは明らか」「仮に、克哉が多佳子に対する加害の意図がなかったとしても、道子の暴力行為に加担することは許されない」としている。

原告でもある、多佳子の母・優(43、仮名)はこう話す。

「加害児童2人に対しては、『問題があるのでずっと見守っていた』という証言があります。しかし、なぜ防ぐための努力をしなかったのでしょう。また、判決では暴行事件のときに、克哉はそばにいないことになっています。しかし、娘は『二人が一緒にいた』と言い、納得していません。目撃証言もありますし、報告書でもそうなっています」

市側「いじめ防止法の『いじめ』だからといって、違法と限らない」

いじめの定義について、一審判決は、「特定の児童に対して、暴力的行為や暴力的行為を伴わない嫌がらせを反復継続して行うことにより、被害者となった児童に深刻な精神的、肉体的苦痛を与えるものである」としている。しかし、多佳子側は、2013年に制定された「いじめ防止対策推進法」のいじめの定義では「反復継続」などの要件はなく、同法とはかけはなれている、と、一審判決を批判している。

この点について、市側は答弁書で「いじめ防止対策推進法上の定義および『文部科学省の定義』と、教員の安全配慮義務において問題となるような『いじめ』を同一視した誤ったもの」であり、「いじめ防止法が『いじめ』の定義を格段に広げているのは、認知を早め、早期に適切な対応を可能にするため」などと、反論している。加えて、市側は「受忍限度」という言葉を新たに用いている。受忍限度を超える違法なものとしての「過度のいじめ」かどうかであり、いじめ防止法の「いじめ」だからといって、違法ではないとした。

学校の安全配慮義務については、多佳子側が主張した22項目については、一審判決はすべて退けている。しかし、高裁では、担任を含む学校の教諭らに対して、下校時に多佳子が校門を出るまで見守るべき義務と、そのことを校長が指示すべき義務については「議論の余地がある」として、多佳子側と市側の双方に対してこの点をあらためて主張するように指示した。

「市側の答弁書を読むと、いじめの定義に従っていなくても、不法行為ではない、受忍限度を超えなければ、安全配慮義務はない、と言っています。『受忍限度』は地裁のときにも出てこなかった考えです。でも、娘は、学校で居場所がなかった。誰も守ってくれなかった。『死ね』「あっち行け』『こっち来るな』と言われています。なぜ、受忍限度を超えないといえるのでしょう。子ども同士ではよくあることで、済ませてよいのでしょうか。それで済ませて来たことが、いじめを増やした結果になったのではないでしょうか」(母親・優)

次回の口頭弁論は10月23日10時半から。

一部のいじめを暴力行為として認定も学校の責任は問われず 原告は判決を不服として控訴——千葉・我孫子市いじめ後遺症訴訟
http://blogos.com/outline/298185/

暴行も学校は「いじめ」認識せず
http://blogos.com/outline/269398/

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