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  • ヒロ
  • 2018年10月18日 12:28

私が経験した地面師詐欺

積水ハウスが五反田の土地に絡む地面師被害にあった件で犯人グループの一部が逮捕されました。その取り調べ等を受けて今回の地面師の仕業の様子がよく見えてきました。

声かけ役、なりすまし役など役割分担がよくできている組織犯罪ですが、積水ハウスの落ち度も相当あるように感じます。つまり、仮登記手続きの後、本当の所有者が内容証明4通を積水側に送り付けているものの「嘘だろう」と取り合わなかった上、代金支払い後、社員が物件に入ろうとしたら警察に任意同行を求められても妨害工作と信じなかった点であります。最後に積水側が騙されていると気が付いたのは法務局から登記申請を却下する書類が来た時、であります。

また積水の社内処理も至急稟議で途中の役員決裁をとらず社長決裁を先に取ってしまったところに心理を見事に突かれた詐欺だったということになります。

実はこの顛末を食い入るように読んだのは私も似たような事件に巻き込まれたことがあるからです。もう時効だと思いますが、名前を伏せてお話ししましょう。

時は1988年だったと思います。私はゼネコンの本社の不動産開発事業部で本社直轄開発事業案件を担当する特命係のような仕事をしていました。いわゆる特殊案件の担当です。そんな時、ある物件が取引先の紹介で持ち込まれました。某宗教法人が持つ都心の一等地のホテルを近々売却するらしい、と。その理由はその宗教法人が内部抗争で分裂し、財産の扱いに問題が生じており、オンブズマンと称する男が宗教法人資産整理のためそのホテルを売却するための権限を委譲されているという話でした。

88年といえばバブル絶頂期で不動産業界ではある程度まとまった土地は喉から手が出るほど欲しい時でした。当時、ゼネコンは第三者の不動産会社に地上げをさせ、その土地買収資金の信用保証をゼネコンが行うというスキームを多用したと思います。金融機関も銀行本体ではなく、子会社のリース会社経由というのも特徴です。ゼネコンは地上げした土地に建物を建てる形で開発事業が進んでいたのです。

本件は直属の部長と私、および補佐で次長級の人がつくという極小人数のプロジェクトがスタートします。まず、全体スキームは持ち込んできた不動産会社、金融機関とあらかた出来たのですが、いかんせん、話がよく見えません。オンブズマンと称するその男とは一度、挨拶と物件概要の説明を受けたもののその後、アポを入れても直前に回避されるなどイライラする展開となります。

ところが、ある日、熱海の温泉旅館で夕方会う、という知らせが来ます。不動産会社社長、当方の部長、次長、私、それに社に出入りしている司法書士を連れ、会いに行きます。が、そこで目にしたのは温泉芸者を10人ぐらいはべらせ、おだを上げているオンブズマンの姿であります。衝撃でしびれました。彼は「今日は宴を取り持つ」といって聞きません。仕事の話はそのあと、というわけです。我々はそれでは困る、酒も飲めぬ、と詰め寄り、話を聞きだします。

相手は巧みだったと思います。核心の部分はぼやかし、証拠も見せないのにホテル売却は可能、と主張します。我々は帰りの新幹線の中でスキームを考えます。怪しい、だが、本物だとしたらリスクヘッジしながらどうやってこの物件を取り込む方法か、と。

いかにも胡散臭いこの取引に関して部長はオーナー社長と直談判します。理由は当初話を持ち込んだ相手は社長が断れない相手だったからであります。社長はうまく進めろ、と指示を出し、稟議は上からの決裁となり、それを下に持ち回り私が説明します。嫌な役でした。肝心なところは説明できないのですから。しかし、トップの決裁印は印籠のようなもの。ほかの幹部も次々同意印を押し取締役会での決議も経ます。

物件の取り込み方は不動産会社への「抵当権設定の仮予約の登記留保」に基づき、ゼネコンが保証し、リース会社から資金を不動産会社に流す、だったと記憶しています。小難しいことを書いていますが、要は不動産の保全の意味をまったくなさないとんでもない方法にもかかわらず金融機関から融資を受け、資金が動くのです。

私がトップの秘書になってから詐欺と判明しました。金融機関はゼネコンである我々から保証を受けているので損はありません。金額はいえませんが、積水より大きいものです。

たしか私がバンクーバーにきてから犯人が逮捕されたという週刊誌の記事がファックスで送られてきました。稀有の詐欺師で有名な男の単独犯でした。

地面師は欲に目がくらんだ相手にすっと入り込むものです。そして、一度はまったら、分かっていても騙される、というバカな話であります。高い授業料でした。積水も私も同じ穴の狢、であります。

では今日はこのぐらいで。

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