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プロの投資家のつもりだった企業年金担当者

AIJの消えた年金問題が報道されているその隅で「小規模年金の高リスク運用制限、AIJ問題で金融庁検討」(日経2月28日1面)という記事があります。私はこの記事が今回の事件の真髄をついている気がします。

2007年の金融商品取引法で特定投資家と一般投資家の区別が行われたのですが、これが大まかには投資する金額や規模で分かれるようになっています。個人の場合、3億円以上の純資産保有者。企業の場合は5億円以上の資本金が一つのボーダーラインであります。平たく言うとプロの投資家と素人の投資家の境目だともいえます。

「素人」に対しては丁寧な説明義務が要求されます。

では、なぜ金額的な基準を設けたか、不思議といえば不思議ですが、あえて想像するなら「そのぐらい持っている人は専門知識があるだろう」ということでしょうか?もっとも「素人宣言」すれば法律に定められる一般投資家扱いにダウングレードできますので問題はなかろうと判断したのでしょう。

ところが、実態は逆だったと思います。素人なのにプロだと自負したのが企業年金の担当者のような気がします。

想像ですが、企業年金担当者といえば比較的年配の社員さんが多いポジションではないでしょうか。そして社員の年金を守るため、安全を考えながらも積立不足の実態との挟み撃ちでどうしてもリターンの数字に目がいってしまいます。

では企業年金担当者が選択するであろう運用委託先はどの程度企業内で管理されているのでしょうか?案外甘いのではないでしょうか?なぜなら誰も明確な答えがわからないからです。ある運用会社が「当社のこのファンドのリターンは過去5年で平均○○%です」とか「このファンドの成長率は過去3年で○%です」といったものを細かい実績資料を見せつけながら説得します。そうすると担当者は「ではお宅にしよう」という流れかと思います。

ですが、金融市場の世界に「過去」はありません。常に未来であり、過去に成功したから未来も成功するという保証は何処にもありません。もちろん運用側も約束はしませんが、過去の実績がそのまま未来に延長するだろうという「推測」をしてしまうのが普通なのだろうと思います。小規模の年金運用担当者のジレンマとはここにあるのでしょう。

私は以前カナダの某州政府の資金運用部門から運用の一環として融資を引き出したことがあります。彼らのように大きな組織ですと運用部に各分野の専門家がたくさんいてその専門家同士で全体の運用ポートフォリオを協議し、ボードで運用採決されるという流れになっていました。これならばプロといえましょう。

ですが、小規模企業年金ならばせいぜい担当者は一人、二人、ではないかと思います。この担当者にその責務を負わせるのは酷ですし、もともとプロとしての育成はされている方はかなり少ないかと思います。

担当者はプロとしての気持ちは持っているつもりながらそこは厳しい勝負の世界。結果としてこうなったとすればやはり、金融庁は早急なるプロアマの定義の見直しをすべきだと思います。一方、運用委託する企業側もこれが契機でリスクオフを求めることになると市場には悪影響が出ます。このあたりのコントロールが今後、重要なポイントになってきそうですね。

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