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国税庁の海外資産税逃れ調査は効果的か?

月曜日の日経一面に「国税庁、海外の隠し資産調査 40万件の口座情報を入手」とあります。これは世界102か国/地域の税務当局が自国の金融機関の非居住者口座を開示させ、それを国家間で情報交換するものです。今回、この情報交換を通じて50か国の日本人非居住者口座40万件を入手したとあります。ちなみにこの情報交換システム、CRS(Common Reporting Standard=共通報告基準)にアメリカは加入していませんが、代わりにFATCAというシステムがあります。

さて、40万件の情報を入手した国税はこれから国内の税務申告書とのすり合わせをしたうえで疑義のある人への個別調査を行うことになるかと思います。多分ですが、一定の成果はあるはずです。しかし、この制度、大きな落とし穴があるように見えます。それは「非居住者口座」である点です。

自国以外の金融機関に口座を開設する場合、居住者としてのステータスがない場合、非居住者口座を開設することになります。ごく一般的には香港やシンガポールに口座を開設し、そこに日本から資金を移動させ、運用し、稼ぐ場合、その利息やキャピタルゲインなどの「稼ぎ」に対しては日本の国税にも課税権が生じます。よってその口座の持ち主である日本人は日本の確定申告においてそれを申告しないと脱税となります。

では非居住者ではなかったら、どうなのか、ここが真の意味での一番おいしいところですが、ほぼ抜け落ちているように見えます。

海外駐在員は就労ビザをもらい正規の形で相手国に居住者としてのステータスを持ちます。銀行口座の開設も当然ながら居住者としての口座になります。あるいは国際結婚して海外に移住した場合、その人ももちろん居住者として銀行口座を開設できます。居住者としての銀行口座とビザはリンクしていないのでその駐在員が数年後に日本に帰国しても銀行口座だけを残しているという人は案外多いのです。

また、駐在員のように一時的な海外居住の場合、日本の住民票を抜かないケースも多く見受けられます。(健康保険がなくなるので一時帰国時に日本の病院に行けなくなる為です。)国際結婚派には離婚も多く、二重国籍ならぬ「二重居住者」のステータスの人は相当多いはずです。

この場合、多分ですが、上記の情報交換システムには引っかかってこないはずで案外大きな取りこぼしがあるとみています。

その次に日経にもあるようにアメリカがCRSに加盟していない点にも欠陥がありそうです。ニューヨークでビザ関係の仕事をされている方と話をしていたところ、日本人のアメリカとの二重国籍取得者はごく普通、と言っていました。つまり、日本では禁じられている二重国籍者が当たり前のようにいる、というのです。

この場合、日本の当局が課税権を主張するのは難しいでしょう。事実、日本政府が二重国籍者の防止に力を注いだ時期もあったのですが、私の感覚的には5-10年ぐらい前に比べて「鎮静化」しているような気がします。つまり積極的に取り締まっていない気がします。

理由は二重国籍の日本人が活躍するケースが垣間見られるからです。ノーベル賞受賞者からスポーツ選手まで日本として取り込みたい人が海外に多く在住していることが挙げられます。となれば、国税が一人あがいてもどうにもならない分厚い壁がそこにある、ということになります。

永住権取得者や国籍取得者の場合、当該国に課税優先権があります。よって仮に日本にも課税権があるような方の場合でも当該国で一旦納税したのち、日本の税務申告において海外での収入の申告を行い、併せて外国税控除を申請します。その国で〇〇ドルの税金を払ったと申請し、日本の課税額から控除するのです。

この仕組みの盲点は相手国の課税率が高いと日本の税務当局の取り分はほとんどないことになります。よって、日本の税務当局の目は当然ながらタックスヘイブン地や香港、シンガポールといった国に目線が行きやすくなるのでしょう。

日本の国際税務に精通している方から聞いた話ですと、今は日本の住民票のあるなしで日本の課税権の識別をしていますが、将来的に国籍ベースにする、という流れのようです。それでも実務としては日本の国税が思ったように課税できるかどうかは相手国の課税権も含め、道のりは険しい気がします。

では今日はこのぐらいで。

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