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爆笑太田が怒り続ける「週刊新潮」の迷走

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週刊新潮が報じた「日大芸術学部に裏口入学」の顛末

爆笑問題の太田光が、「週刊新潮」(8/31号)で、「太田は割り算もできずに、父親が困って日大芸術学部に裏口入学させた過去があった」と報じられ、激怒した。

自分が出ている番組で、「週刊新潮、バカヤロー、この野郎。裏口入学するわけねーだろう」と吠えまくっていたというのは、以前、ここで紹介した。

太田には失礼だが、大いに笑える記事だった。

記事が出た後の太田の怒髪天を突くような怒りもわかるが、芸人ならば、「バカ、この野郎」と口汚く罵るのではなく、もう少し芸のある怒り方をしてほしかったと思うのは、私ばかりではない。

作家の佐藤優もこういっていた。

「今回の猛反論ではユーモアのセンスが欠けてしまっていました。(中略)太田さんは毒舌で有名で、政治の話題にも分け入って揶揄してきた。それなのに、自分が裏口入学と報道されるとエキセントリックに反論し、それが図らずも太田さんの入学歴へのこだわりを露呈させ、何とも言えず寂しい思いになりました」
2015年4月18日、「桜を見る会」で安倍晋三首相とともに記念撮影する招待客の爆笑問題(写真=時事通信フォト)

3300万円の名誉毀損を求めて、新潮社を訴える

太田の、この記事への怒りはなかなか収まらず、この内容を紹介した私にも、矛先が向いていると聞いたので、探してみた。すると、ラジオ番組の内容を書き起こしているというサイトで、3本の記事をみつけた。

<爆笑問題・太田、「裏口入学」騒動についてプレジデントに寄稿した元フライデー編集長・元木昌彦に激怒「何様のつもりなんだ、お前」>2018年8月29日

<爆笑問題・太田、「裏口入学」記事をプレジデントに寄稿した元木昌彦に「反論ねぇのか、言論人としてどうなんだ」と挑発>2018年9月5日

<爆笑問題・太田、「裏口入学」騒動について記事を書いた元フライデー編集長・元木昌彦が反論しないことに「お前、ジャーナリストとして終わり」>2018年9月12日

いずれも前日に放送されたラジオ番組『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ、毎週火曜25時~27時)の内容を書き起こしたものらしい。3週続けてお前呼ばわりされていたようだ。放送を聞いていないので、何に対しての「反論」なのかピンとこないが、プレジデントオンライン宛に手紙でもくれれば、期待に応えて反論しようとは思っている。

週刊新潮が出てから、太田の妻も「法的措置を辞さない」といっていたが、告訴したようである。

スポーツ報知によると、

「太田側の弁護士は3300万円のうち名誉毀損での賠償額が約1000万円であることを明かし『普通は500万円だが、太田さん、(妻で社長の)光代さんの気持ちが大きく、その分を入れた』と説明した。さらに中づり広告に爆笑問題の写真を掲載したことは、名前や写真から生じた利益を独占できる『パブリシティー権』の侵害に当たるとして、約2000万円の損害が生じたと主張した」
そうである。

妻の名誉は毀損していないのに、500万円上乗せするとは不可解だが、名誉毀損は事実でも成立するから、週刊新潮にとってはきつい裁判になりそうだ。

「新潮45」の休刊など、迷走続ける「新潮ジャーナリズム」

私は、この内容を紹介した際にもこう書いた。

『新潮』の記事は30年以上前のこととは思えないほどディテールがしっかり書き込んである。だが、私も、なぜこのような記事が今頃出てきたのか疑問に思う。東京医科大の裏口入学が問題になっているからと、突然思いついたわけではあるまい。

(中略)

私が聞くところによると、『新潮』は、日大のアメフト傷害事件を取材する中で、この話が日大関係者から出てきたそうだ。
興味を持った『新潮』編集長は、その頃の当事者から話を聞けと指示し、詳細を聞けたことから掲載に踏み切ったということのようである。

何せ、30年以上も前の話だから、証言以外に物証はほとんどないのではないだろうか。

そのせいか、8月22日に発売された『新潮』(8/30号)は「笑い飛ばせばそれで良かった『爆笑問題 太田光』の日大問題」と、新たな裏付けは示さず、リードでこう書いた。

「本誌が報じた爆笑問題・太田光(53)の日大芸術学部への裏口入学事情。えらい剣幕で報道を否定する場面が生出演のラジオやテレビで繰り返された。世間を斜めに斬り笑いにしてきた人物が『そんなに恥ずかしいこと?』と笑い飛ばせなかったところに違和感が募るのだ」

裏口入学事情? 裏口入学したと断定していたではないか。笑い飛ばせ? それはないだろう。親父が暴力団に近い人物を使って裏口入学させたというのでは、この記事の中でも野末陳平がいっているように、「ふざけんなよ。芸人なんだからなんて枠はない。芸人である前に人なんだ」。

これを読む限り、どうやらこの勝負、太田光の威光に逆らった『新潮』にやや分が悪そうではある。

プレジデントオンライン<爆笑できない太田光の「裏口入学問題」>2018年8月26日

10月9日に口頭弁論が開かれ、太田の代理人の松隈貴史弁護士は取材陣に対して、「大学も裏口入学の事実は把握していないといっている」と話し、週刊新潮側は請求棄却を求めたそうだ。

この件といい、杉田水脈の「LGBT差別論文」を掲載したうえ、批判が巻き起こると、杉田よりもお粗末な書き手の反論を掲載して、月刊誌「新潮45」が休刊に追い込まれた件など、このところ「新潮ジャーナリズム」は迷走を続けているように思える。

迷走は「赤報隊事件」の大誤報から始まった

そのきっかけを私は、週刊新潮(2009年2月5日号・1月29日発売)が4週にわたって連載した「実名告白手記 私は朝日新聞阪神支局を襲撃した!」の大誤報から始まっていると考える。

朝日新聞支局を襲って2人の記者を殺傷した「言論テロ」は、今でも朝日の記者だけでなく、メディアに携わる人間たちの心に深い影を落としている。

事件後、赤報隊と名乗った卑劣な犯人は、警察や朝日新聞記者たちの懸命な追跡にも捕まらず、2003年に全事件の公訴時効が成立してしまったのである。時効後、その事件の実行犯だと名乗る収監中の元暴力団員の男が、いくつもの報道機関に手紙を送りつけた。朝日新聞の記者もそれを手に入れ、男に何度か会いに行ったが、犯人ではないと断定していた。

だが、当時の早川清編集長は、編集部のごく一部の人間と件の男に接触し、何を血迷ったか、掲載を決めてしまったのだ。編集部員の多くは、見本刷りが出て初めて読んだと聞いている。

私もさっそく読んでみた。私が連載していた週刊誌批評に、「連載を読む限り、『新潮』がどれだけ裏付けをとったのか見えない」「出ている材料は状況証拠ともいえないものばかり」だと批判した。

編集長は「誤報」と認めるが、取締役には残ったまま

朝日はこの記事を検証した批判記事を掲載したが、それに対する週刊新潮の反論も、「朝日の言葉の揚げ足とりに終始している」と断じた。

結局、連載後に、早川編集長は「誤報」だと認めるのだが、読者に対して十分な説明責任を果たさずに編集長を降りてしまう。取締役には残ったままだった。聞くところによると、編集部にも何ら説明はなかったという。

週刊誌ジャーナリズムの信頼が大きく揺らいでいる。危機感を持った私は、上智大学で「週刊誌が死んでもいいのか」というシンポジウムを開催した。

各誌の前・元編集長や田原総一朗、佐野眞一などに来てもらって、長丁場のシンポだったが、大盛況で中に入れない何百人もの人たちは、会場の外で耳をそばだてていた。

「新潮社の天皇」として君臨した齋藤十一の哲学

だいぶ前になる。北鎌倉・明月院の紫陽花が咲いていた頃だったと記憶している。

明月院の門前を通り、坂道を登り切ったところにその家はあった。主はすでに亡くなっていたが、未亡人が優しく出迎えてくれた。通された応接間から見えるのは真っ青な空と鬱蒼とした森ばかり。さっき通ってきた明月院の紫陽花が見え隠れしていた。

よくここで夫とクラシックのレコードを聴いたといいながら、日本に一台しかないといわれるオーディオの名器・デッカ(英国デッカ社製のデコラ)で、モーツアルトのレクイエムか何かを聴かせてくれた。

ジャズは多少わかるがクラシックにはとんと縁がない私には、心地よい音楽としかいいようがないが、こうした穏やかな雰囲気の中で、この部屋の主は、「週刊新潮」や「FOCUS」のエグいタイトルを生み出したのである。

主の名は齋藤十一。1939年に新潮社に入社以来、1996年に相談役を退くまで新潮社の天皇として君臨した。文芸雑誌・新潮編集長のとき、こういっている。「本誌は文学雑誌であるが、あらゆる角度から今日の社会現象をも文学的に扱いたい」。吉村昭、柴田錬三郎、山口瞳、山崎豊子、瀬戸内寂聴など、挙げればきりがないほどの作家を発掘した。

だが、潰した作家もそれに倍するぐらいいただろうと、『編集者・齋藤十一』(齋藤美和編、冬花社)で佐野眞一が書いている。

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