- 2012年03月02日 04:54
ネット監視失敗の責任と心あるジャーナリストのみなさんへのお願い
昨日の東京新聞の1面トップは、「原発デマ対策 半年でも未完成 エネ庁ネット監視」という記事だった。リードは、
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東京電力福島第一原発事故を受け、放射性物質の健康影響など、ネット上で飛び交う原発や放射能関連の不正確な情報を打ち消すため、経済産業省資源エネルギー庁が正しい情報を発信するホームページ(HP)が、当初予定から約半年経過しても完成していないことが分かった。同庁は、正しい情報の確認作業が難航しているためとし、完成を三月末に先送りした。
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ネット監視がうまくいかないなどとういのは、当たり前の話で、こんなことをやろうとしてもムリだし、そもそも意味がないことは素人でもわかる(これについては「事業に必要性ない」という法大・五十嵐教授のコメントも掲載されている)。
しかも──。
最大のデマを流しているのは政府自身なのだから(※注1)、とことん国民をバカにした話だ(ネットでは「エネ庁」ではなく「エア庁」と言われてるぞ)。
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(※注1)
↓の音声では、「冷温停止状態」「事故そのものの収束宣言」「爆発的事象」など政府や東電がこの1年間使ってきた言葉のまやかしについて語られている。
そして、そういう言葉についてどんなものが思い当るかを問われた京都大学、小出裕章助教は即座に「除染」と答えた(5分過ぎから)。
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東京新聞の記事に話を戻すと、このネット監視は昨年5月の一次補正で急きょ予算を計上し、8月に一般競争入札で落札したアサツーディ・ケイ(電通、博報堂に次ぐ業界第三位の広告代理店)に7千万円で委託したという。
この件について、エネ庁原子力立地・核燃料サイクル産業課の武田龍夫原子力広報官は「批判は甘んじて受ける」と説明したそうだが、ヌルいことを言っている場合ではない。
まともな補償を受けられない被災者が山のようにいるなか、7千万円の血税をドブに捨てたのなら、その責任の所在を明確にして処分すべきである。
さて、本日はもう一つ別の話題を。
東日本大震災、福島第一原発破局事故から間もなく1年がたとうとしている。
この間、私がずっと引っかかっているのは、当ブログでは何度か書いたが、東電がテレビ局に出したお詫び広告の料金だ。
ここ数年、大幅値引きが日常茶飯の広告業界にあって、東京電力はそれでも正規料金(定価)を払ってくれる超優良クライアントだった。
3・11前はそれで良かったとしよう(本当はまったく良くないが)。
しかし、東電が歴史に残る事故を起こし、収束と賠償にいくらかかるかわからないという時期(実は破局事故を起こした時の逃げ道も作ってあったが)、にもかかわらず従来通りの料金でお詫び広告を出したのなら、出す方も出す方だが、受け取る方も受け取る方だと思うのだ。
私は自分が広告営業をやっていたからわかるが、あの時点で通常の広告がどんどんストップしていくなか、正規料金で大量の広告が取れるのなら、まさに干天に慈雨、足を向けては寝られなくなる。
しかし、相手は東京電力だ。
企業の論理として、「くれるものはありがたくいただく」のは間違いではないが、メディア、ジャーナリズムの論理、まして公共性の高い電波を使用している立場のテレビ局がそういうカネを非常時に受け取っていいものなのか?
当時、東京電力本社に福島の農家の方々がやって来て賠償を求める映像がニュースとして流れた。福島県の方々にしてみれば当たり前の行動で、それがテレビで全国に流れるのは悪いことではなかったかもしれない。
だが、その時、取材している側の人間が、実は東電からカネをもらっていたとしたら……。
私はそれはあってはならないことだと思うのである。
ここで気になるのは、営業がカネを欲しがるのは当然としても、ジャーナリストと称する仕事をしている社員の中にそれに対する疑問、問題意識がなかったのかということだ。
ま、実際問題として、彼らには広告の知識がまるでなく、したがってそんなことは考えもしなかったのかもしれないが、だからといってスルーしていい問題ではない。
そこでテレビ局の心あるジャーナリストのみなさんに是非ともお願いしたい(以下はお願い文)。
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テレビ局の心あるジャーナリストのみなさんへ
あなたのお給料の中に、3・11後も東京電力からのカネが含まれていた可能性があります。
今現在、原発事故の被災者に対する東電の不誠実な対応が大変な問題になっているわけですが、それを取材する側が、何の疑問もなく東電からカネを受け取っていていいのでしょうか? それで本当に福島第一原発事故についてのきちんとした報道ができるのでしょうか?
昨年の一時期、東電の記者会見でフリーランスの記者がお詫び広告の料金について質問していましたが、東電は「私企業の契約」という理由を楯に一切、明かしませんでした。その東電と同じ理由で、メディアの側も東電からの広告料金を明かす必要はないのでしょうか?
ここで断っておきたいのは、お詫び広告自体が悪いといっているわけではないということです。もちろん、それは当然、あってしかるべきでしょう。問題は料金なのです。
記者の方々はご存じないかもしれませんが、広告というのは不思議な商品で、一物に対して価格がいくつもあります。クライアントによって定価に対するきちんとした掛け率があったかと思うと、とんでもないダンピング価格で取引されることもあります。およそ広告ほどその差が激しい商品はないでしょう。
そして、広告の実施料金はここ数年、実態としてどんどん下がっています。費用対効果を重視するクライアントの立場からすればそれは当然のことで、要は今までが高すぎた=ボロ儲け過ぎたのです。
しかし、東京電力はそのような環境の中でもなお、定価、かつ圧倒的なボリュームの広告を出してきました。
今、その是非は置いておきましょう。
しかし、その料金のままで3・11後にお詫び広告が取引されたとしたら、これはジャーナリズムとして許されることなのでしょうか?
ちなみに、この時の広告売上げを調べるのは簡単です。
営業局に行ってお詫び広告の実施料金と出稿量を聞けばいいのです。
もちろん、お詫び広告全体の金額を教えてくれるのならば、それにこしたことはありません。そんなものは営業局のパソコンのキーボードを叩けばすぐに出てきます。
さらに、もう少しスクープ性を持たせたいのであれば、この広告を仕切った広告代理店を取材するのもいいでしょう。代理店の担当者は、マスメディアに対する東京電力のお詫び広告出稿一覧表を持っていますから、それを手に入れれば大スクープですし、代理店が受け取ったマージンの額も判明するので、この二つを合わせれば東電がお詫び広告に使った金額が判明します。
今、ジャーナリズムとしてのマスメディアと東京電力の関係に、大変、厳しい眼が注がれています。
その疑念を払しょくするためにも、この問題をきちんと明らかにすることは必要なことでしょう。
使命感を持った、心あるジャーナリストからの報告を願ってやみません。



