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「LGBT」支援の度が過ぎる」杉田論文の批判

古本屋で新潮45の2018年8月号を購入し、例の杉田水脈氏の論考を読んでみました。タイトルは「「LGBT」支援の度が過ぎる」です。
学生指導するつもりで、ちょっと厳しめに読みました。

1 「この1年間で」LGBT報道がどれだけあったかを検索したそうだが、いつからいつまでの期間を検索したのかが書いていない。「7月8日現在」とあるので、2017年7月9日からの1年、などと推察はできるがちゃんと明記すべき。

2 報道数が毎日、朝日、読売、産経の順番だったことを受けて「朝日新聞や毎日新聞といったリベラルなメディアは「LGBT」の権利を認め、彼らを支援する動きを報道するのが好きなようです」と書いているが、そもそも報道数から支援的な内容かどうかは判定できない。批判しているのかもしれない。読売だって159件も報じているのだから、相当数の報道とも言える。データからの推測が甘い。

3 LGBTは差別されている、という仮説から「実は差別されていないのではないか」という仮説を出している。こういう仮説を出すことそのものには何の問題もない。が、それを「日本では、同性愛の人たちに対して「非国民だ!」という風潮はない」としている。が、そもそも差別と非国民は別問題で、議論がねじれている。非国民でなければ、差別はないのか。ただし、杉田氏が指摘するように「同性愛差別」が過去において米国や英国で激しかったことは事実。

4 LGBTのつらさは親に理解してもらえない問題だと杉田氏は主張する。だから行政が動き税金を使うのは間違いだとも。しかし、社会の啓発活動は「親の」LGBTの差別を回避するのに資するから、これは間違っている。

さらにこちらのほうが重要なのだが「親だから同性愛を受け入れられない」という事実が、まさに日本で深刻な同性愛者差別(ここでは杉田氏の論考に沿って議論しているので「LGBT」と「同性愛者」の区別も彼女の論考に従っている)が潜在していること明らかな証左であり、彼女もそれを認めている。同和問題で「差別はしないけど、結婚はさせない」という態度がまさに差別そのものなのだから。

5 子供ができないから生産性はない、はすでにあちこちで議論されているが、

A (杉田氏的な意味で)生産性がない=税金を投入しなくてよい、ならば高齢者に税金を使うのは全て間違いとなる。閉経後の女性にも。
B 養子を得る、精子ドナーを得るなど子供を持つ方法はたくさんあるし、実例もある。

などなど、反論の根拠は山ほどある。学生がこのようなレポートをだしてきたらここで完全にアウトになる。

6 LGBTのTをいっしょにするな、はよくいわれることで、そういう議論があることそのものは否定しない。
しかし、「性」という観点から差別を受けたり苦痛を受けているマイノリティーとしてグループ化しているわけで、そういう観点からはLGBTという呼び方は一つの選択肢だ。そもそも、「なんとかとかんとかをいっしょにするな」というならば、ゲイとレズビアンだって違う。違いがあることは、グループ化できない根拠とは言えない

エイズ問題で「血友病患者のエイズと同性愛者のエイズは違う」という議論はどうだろう。もちろん、両者の違いは存在する。しかし、ことさらにそのような違いを強調し、社会運動的に使うのは一種の被差別者内の格差をもたらすリスクすらある。「あいつらとはいっしょにするな」という形で。そういう配慮も必要なのであり、いたずらにトランスジェンターは違うんだ、という主張は政治家としての配慮が不十分だ。

7 同性愛を正当化する報道で「普通に恋愛して結婚できる人まで「これ、(同性愛)でいいんだ」と「不幸な人」を増やすことにつながりません」は、シンプルに差別発言以外の何者でもない。「常識」や「普通であること」という書き方は、相手を「異常である」と決めつけている差別発言だ。

8 トランスジェンダーとLGBは違うと言っておきながら、トランスジェンダーのトイレ問題が同性愛者に拡大するかもしれない、などと勝手で恣意的な議論をしている。

9 日本は昔から同性愛に寛容な社会であった、と言っておきながら同性愛者を差別的に捉え、「常識」や「普通」なのだ大事なのだ、今のままだと秩序がなくなり、崩壊するかもしれないぞ、と結局同性愛者に不寛容な筆者の見解がモロ出しになっている。
結局、筆者は日本の伝統のことなど何も理解しておらず、自分の差別感をむき出しにしてそれが「普通」とか「秩序」だと勘違いしているだけなのだ。

で、このような出来の悪い文章を支持する人たちがいるそうですね。小川榮太郎氏の文章は、次に検証する。

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