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「身元特定は『漫画村』運営者のミス」「議論を拒んでいるのは反対派」川上量生氏、改めてブロッキングの必要性訴える

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 海賊版サイト対策について議論している政府の検討会議(タスクフォース)が、いよいよ15日に取りまとめを出す。焦点となっているのが、ユーザーが閲覧しようとした際にインターネットサービスプロバイダ(ISP)がアクセスを強制的に遮断する「ブロッキング」の是非だ。出版界に与える経済的損失の大きさなどの観点からブロッキングでしか問題に対処できないとする委員と、「通信の秘密」を保障した憲法21条に抵触する可能性などから反対の立場を取る委員との間で議論は平行線を辿り、先月までに8回もの会議が行われたが、未だ意見集約には至っていない。

 12日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、ブロッキング"賛成派"でタスクフォース委員の川上量生・ドワンゴ社長と、"反対派"の楠正憲氏・国際大学GLOCOM客員研究員を招き、改めて双方の主張を聞いた。

■川上氏「すでに通信の秘密は侵されている」

 手紙などの通信の秘密や、検閲の禁止を定めている憲法21条。そして電気通信事業法でも、ISP事業者などに対し通信の秘密を侵してはならないと定めている。

 しかし2008年、児童ポルノの閲覧を禁止するよう世界各国の政府に求める共同宣言が出され、2011年には事業者でつくる協会の要請に基づく"緊急的な措置"としてブロッキングが導入されている。ユーザーのアクセスの監視、つまり違法行為が例外的に認められているのは、(1)経済的な損害が大きいなどの危機が迫っていること、(2)ブロッキング以外に手段がない、(3)守られる利益の方が犠牲になる利益より大きいという3点の理由によるものだ。反対派は、海賊版サイトへのブロッキングが認められれば、こうした解釈が拡大されていく懸念を示している。

 これについて川上氏は「そもそもインターネット通信のパケットを届けているルーターは皆の通信を見ているし、児童ポルノのブロッキングもすでに導入されているので、海賊版サイトに対して導入されたとしても何も変わらない。もちろん"気持ち悪い"と感じるかもしれないが、それが出版社に対する被害より大きいのか。"監視社会みたいになる"という連想の根拠はどこにあるのか」と疑問を投げかける。

 児童ポルノへの導入を巡る議論に携わった楠氏は「児童ポルノについては、発信だけでなく、ダウンロードして持っているだけでも違法だった。確かにデメリットは限定的かもしれないが、海賊版を止めることができるなら、あれもこれも止められるんじゃないか、という議論になる可能性があるし、3つの原則を侵したサイトは他にもたくさんある。例えば名誉毀損など、人格権に関わる問題の方が経済犯よりも深刻だろう、傷つく人がいるからブロッキングしようなどと恣意的に運用されれば、我々が自由にニュースを見ることができなくなるかもしれない」と反論。

 また、元経産官僚の宇佐美典也氏も「憲法で保障されている権利の例外については、思想・表現の自由などの"精神的な自由"を守るために、財産権などの"経済的な自由"を一部制限しようという議論がされることはあるが、ブロッキングの問題では真逆。通信の自由も、思想・表現の自由を守るためにあるものなので、それを経済的な事情で制限しようとするから、法曹界の反発も大きいのではないか」と指摘した。

 すると川上氏は「違法サイト運用者が他人の著作物を勝手にコピーして配布するという自由や、閲覧者が違法なものを無断でダウンロードする自由まで守らなければならないのか。そこを制限するためには例外的解釈があっていいのではないか、という話だ。僕だって世の中を悪くするために言っているわけではないし、拡大解釈は許してはいけないと思っている。タスクフォースの中でも、賛成派の林いづみ弁護士はそういう議論をしようと呼びかけているのに、それを拒否しているのは反対派の人たち。僕はそういう議論をやっていきたい」と主張した。

■楠氏「ブロッキング以外にも運営者を追い詰める方法はある」

 議論が錯綜する中、今年4月、政府は緊急避難として『漫画村』のほか、『Anitube』『MioMio』の3サイトについて、ISP事業者にブロッキングを推奨。『漫画村』は事実上の閉鎖状態に追い込まれた。

 『漫画村』のケースでは、複数の国のサーバーを経由してCDN(=コンテンツ配信ネットワーク、画像などのファイルをコピー・配信するために用いられるサービス)に接続、また、契約者の情報を秘匿し削除要請や問合せにも応じないことが売りのレンタルサーバー"防弾ホスティング"を利用し、元のサーバーやファイルの位置、運営者の身元の特定が難しいとされていた。

 こうした前提の上で、川上氏は「日本の法律の及ばない国にサーバーがあり、日本の警察が差し押さえることができない場合など、ブロッキングする他に手段がない」と主張するのに対し、楠氏は「ブロッキングの効果は限定的だ。簡単に迂回できてしまうし、日本国内からのアクセスしか遮断できないので、海賊版サイトを見ている海外の人たちについては対応ができない。本当に効果があるのは、サイトそのものを止め、犯人を捕まえることだ。出版社の売上に影響のあるほどの大規模なサイトについては、それができると考える」と主張している。

 しかし今月10日、その『漫画村』が利用していたCDN事業者の米Cloudflare社が契約者情報を開示したことをBuzzFeed Newsが報じており、楠氏らの主張が裏付けられる結果となった。"ブロッキング以外に策がない"という前提を揺るがしかねない事態に、Cloudflare社に情報開示を求めた山口貴士弁護士ら専門家からは、タスクフォースに対しブロッキングの再検討を求める声も上がっている。

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