■「白黒をはっきりさせてほしい」という期待は外れた
安倍晋三首相の無二の親友であるあの学園理事長が、また記者会見を開いた。今度こそ、白黒をはっきりさせてもらいたい。そう思っていたらその期待は大きく外された。
学校法人・加計学園の加計孝太郎理事長が10月7日、学園が運営する愛媛県今治市の岡山理科大獣医学部で記者会見を開いた。
前回は記者会見の求めを無視し続けた揚げ句、6月に岡山市の学園本部でいきなり会見を開いた。しかも参加者は地元の記者に限定し、25分で一方的に打ち切った。
2回目の今回の記者会見も唐突だ。なぜこの時期に開いたのか。自民党の総裁選が終わって安倍首相が落ち着くのを待っていたのだろうか。

記者会見で加計氏は、愛媛県の文書に記載があった安倍首相との2015年2月25日の面会について、改めて否定した。学園側はこれまでも面会の事実を否定し、渡辺良人事務局長が愛媛県に虚偽の情報を伝えていたとしていた。
加計氏は「(獣医学部新設の)話が進まず、(渡辺氏が)勇み足で誤解を招いた」と説明したが、安倍首相との面会については「記録がないので会っていないと思う」とするなど、あいまいな説明を繰り返した。
■加計氏は「検討する」とだけ述べて立ち去った
愛媛県議会は今年7月、加計学園に説明責任を果たすよう決議を行った。今回の記者会見は、その決議を受けたものだという。
だが、7日は日曜日でしかも3連休中の真ん中。前述したように前回の6月の会見同様、一方的な記者会見だった。会見は1時間半に及び、記者団から「説明が不十分だ」と再度記者会見を開くよう求められると、加計氏は「検討する」とだけ述べて立ち去った。
これでは獣医学部新設に便宜が図られたとの疑念は深まるばかりである。記者会見では限界がある。加計氏に対し、国会で参考人招致や証人喚問を行う必要があるのではないか。
■「県文書に全く目を通していないのか?」「はい」
加計氏の2回目の記者会見に対し、早速、10月10日付の東京新聞と朝日新聞が、社説のテーマに取り上げた。東京社説はお得意のリードでこうまとめる。
「知らぬ・存ぜぬ―。学校法人『加計学園』の加計孝太郎理事長の会見は結局は、国民の疑念を晴らす内容ではなかった。あいまいな姿勢を続ける以上、加計氏らを国会に呼び解明すべきである」
国会は加計氏に対する参考人招致も証人喚問もまだ実施していない。先の国会では数の力による与党自民の猛反対で実現できなかった。10月に開かれる臨時国会では、憲法改正の審議に入る前に加計学園の疑惑を解明すべきである。
東京社説の本文はこう書き出す。
「記者『(愛媛)県文書に全く目を通していないのか?』」
「加計氏『はい』」
「記者『県文書を基に、渡辺氏に聞き取りをしていないのか?』」
「加計氏『はい』」
ここでの渡辺氏とは「加計理事長と安倍晋三首相が面会した」と、愛媛県や今治市に虚偽の説明をしたとされる加計学園の渡辺良人事務局長のことだ。記者会見の模様を一問一答形式で並べるというのは、社説では珍しい手法だ。実に分かりやすい。
■いったい安倍首相はどう考えているのか
そのうえで東京社説はこう主張する。
「加計氏が文書も読まず、内部の聞き取りもしないで臨むとは、あまりに不誠実すぎる。とくに渡辺氏が県市に対し、虚偽の説明をしていたなら、ウソで新学部認可にたどり着いたことになりはしないか。『事が前に進まず、勇み足だった』(加計氏)程度の認識では許されない」
「不誠実すぎる」「ウソで新学部認可にたどり着いた」。加計氏のあいまいな姿勢を的確に捉えた批判だ。腹心の友の安倍首相は、今回の加計氏の記者会見をどう見たのだろうか。沙鴎一歩としては、ぜひとも感想を聞いてみたい。
東京社説はさらにこうも主張する。
「もはや国政調査権で真相解明を進めるべきだ。加計氏や首相、県市の関係者に国会で真実を語ってもらおう」
見出しも「国政調査権をつかわねば」である。
東京社説は「獣医学部の新設では九十三億円を補助する今治市に対して、同県(愛媛県)は三十一億円を支援する」とも指摘し、「あやふやなまま幕引きではいけない。国民の関心も高い。多額の税金が絡んでいる」と書く。
愛媛県と今治市から計93億円の補助金が出るのだ。税金は国民や県民、市民の血と汗の結晶だ。その使い道が不透明というのでは、どうしようもない。
政治と行政の透明化のためには、「もり・かけ疑惑」の解明が必要だ。