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みんなが"止めたほうが良い"と言うことは"まだ誰もやっていないこと"。面白そうなら突っ込むべき - 「賢人論。」第72回佐山展生氏(中編)

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1998年に投資ファンドであるユニゾン・キャピタルを共同設立、2004年にはM&Aアドバイザリー会社GCAを共同設立した佐山展生氏は、2年後の2006年、阪急ホールディングスと阪神電気鉄道の統合に携さわり、阪急阪神ホールディングス誕生の仕掛け人となった。そして2007年にはインテグラルを共同設立し、2015年1月に民事再生法の適用を申請したスカイマークの再建事業につながる基礎を固めた。果たして佐山氏は、何を信念としてこれらの大事業をなし遂げてきたのだろうか?

取材・文/ボブ内藤 撮影/公家勇人

社員一人ひとりが仕事に誇りを持ち、真剣に取り組もうと思えなければそこは、“良い会社”ではない

みんなの介護 1998年に三井銀行を退社し、ユニゾン・キャピタルを共同設立した佐山さん。このときも帝人を辞めたときのように、冒険心が原動力だったのでしょうか?

佐山 そうですね。日本にファンド市場というもの自体がなかった頃ですから、みんなは、何を考えているんだろうと思っていたでしょうけど、私には帝人を辞めたときのように、何か面白そうに思えて、突っ込んでいきました。

判断のきっかけになるのは冒険心だけではありません。“みんなが「止めた方が良いのと違うか」と思うこと”は、裏返せば、“まだ誰もやっていないこと”です。だから、競争相手がいない世界でもあります。

みんなの介護 2007年に山本礼二郎さんらとインテグラルを共同設立したのは、まさにその「やりたいこと」、すなわち日本型プライベート・エクイティ・ファンドを作りたかったからなんですね。この日本型PEファンドについて、改めて説明していただけませんか?

佐山 一般的にPEファンドは、事業の立て直しや継承、再成長を必要とする会社に投資して企業価値を高めたのち、買収価格より高く売ることで投資家に利益をお返しするという仕事をしています。

そもそもは1970年代にアメリカで始まり、世界中に広まりました。「バイアウト」という手法を用いていることから、バイアウト・ファンドとも呼ばれます。

インテグラルが目指しているのは、そうしたアメリカ型のPEファンドではなく、日本型のPEファンド。お金を儲けるための投資ではなくて、投資先の会社のみなさんの意思を尊重してハートのある信頼関係を築き、ともに「良い会社」を作ることを目的に頑張っています。ここで言う「良い会社」とは、社員一人ひとりが仕事に誇りを持てて、真剣に取り組もうと思える会社、と言い換えても良いでしょう。

みんなの介護 村上ファンドの村上世彰さんは「物言う株主」と呼ばれましたが、それとも違うのですね?

佐山 村上さんが以前よく言っていたのは、「投資家の利益が大事」ということ。人のお金を預かっているのだから、利益を返すことが最優先だというわけです。

しかし、ヘッジファンドのように、少数株などを日々売買しているファンドならまだしも、実質過半数の株式を取得し、会社の経営権を握っているファンドは、その会社の従業員一人ひとりの生活を背負っていると言えるのではないでしょうか。ファンドの影響力が大きければ大きいほど、その社会的責任は重いはずです。

ですから、本当に優先すべきは、投資家の利益というよりも、その会社を「良い会社」にすることで、その結果として業績が上がり、ひいては会社の価値が上がれば、投資家に返すお金も増えていくというのが正しい優先順位だと私は思うのです。

燃えるような情熱を持って臨んだスカイマーク再生は、一世一代の大勝負でした

みんなの介護 2015年1月に民事再生法の適用を申請したスカイマークへの投資も、お金を儲けるためではなく、「良い会社」を作るための投資だったのですね?

佐山 ええ、その通りです。インテグラルを共同設立したのは2007年ですが、そのときはまだGCAとの仕事を並行して行っていました。100%インテグラルに注力できるようになったのはGCAの株式も売却した2014年1月からでした。スカイマークへの投資は、そういう立場になってからの投資案件です。

みんなの介護 スカイマークを救済しようと思ったきっかけは何だったのでしょう?

佐山 いや、救済しようなんて偉そうに考えていたわけではありません。実際、私たちの調査では、90億円を融資すれば再建できると見込みましたが、確実なリターンがあるという保証はどこにもありませんでした。

会社が民事再生法を申請すれば、社員の皆さんは不安になって辞めていく人も増えますし、お客さんだってそんな会社の飛行機に乗ろうとは考えないかもしれない。そんな状況で、「90億円あれば大丈夫です」なんて、誰にも確証をもって言えるわけがありません。

とはいえ、この仕事をやってきた経験の中で、どこかで「90億円出したとしても、それがなくなることはないだろう」という気がしました。明確な根拠はありません。ただ、そう感じたのです。

よくよく考えてみれば、スカイマークは大手2社に継ぐ3番目の独立系の会社です。その会社がなくなれば、大手2社は運賃を上げてきます。そうなると困る人がたくさん出てくる。スカイマークがあるから、大手の航空運賃は無闇に値上げをできないという面があるのです。

みんなの介護 つまり、スカイマークの再生には、充分な大義名分があったわけですね。

佐山 そうです。スカイマークがなくなれば、独立系の航空会社がなくなってしまう。ここに投資でも「何とか出来るんとちゃうか」という私たちの読みがあり、パートナー全員一致で投資の意思決定をしました。しかし、インテグラルのみんなにとって一世一代の大勝負であることは間違いありません。燃えるような情熱を感じました。

鹿児島空港支店の説明会。「不安」の2文字を描き写したような顔で埋め尽くされていた

みんなの介護 インテグラルが50.1%を出資したことで、佐山さんはスカイマークの会長に就任します。社員の人たちは、投資ファンドの代表がトップに立ったことを知って、戦々恐々だったのではないですか?

佐山 社員の人たちが私を「ハゲタカ」のイメージで見ているかもしれないと、全国の支店や空港を飛びまわって状況の説明をして回りました。東京の本社では3回の説明会を行い、社員のご家族の方にも集まってもらいました。民事再生とは何なのか、インテグラルがどういう会社なのか、どのようにしてスカイマークを再建しようとしているのか、皆さんに直接説明していったのです。

みんなの介護 どんな反応が返ってきましたか?

佐山 鹿児島空港支店の説明会での一場面は、今でも脳裏に焼きついています。話すべきことをひと通り話し終えたあとで、「何か質問はありませんか?」と聞いたんです。ところが、空気がシーンと凍りついたようになっていて、誰も手を挙げない。改めて目の前の人たちの顔を見てみると、「不安」という2文字を描き写したような顔で埋め尽くされていました。

そこで、私の方からある男性を指名してみると、その人は「人員整理とか、給与カットはあるんですか?」と質問してきました。

そこで初めて、社員の人たちが何を不安に思っているのかに気づきました。「スカイマークが破綻したのは、不効率な航空機を購入しようとしたからで、社員を増やし過ぎたからでも給与を多く払い過ぎたからでもありません。ですから、人員整理や給与カットは絶対にしません。私はみなさんにそのまま働いてもらいたい」そう述べて、以降の説明会では、まずこの話から始めることにしました。

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