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「肉屋襲撃」で揺れる仏 ヴィーガン一部過激化?

Veggie Pride Paris 2017- Festival Antispéciste 動物の権利を訴える団体のデモ行進(2017年10月7日パリ)出典 Veggie Pride 2018 Photo by JérémyLeguillon

Ulala(ライター・ブロガー)

【まとめ】

・仏で肉屋襲撃事件相次ぎヴィーガンに対し市民の不信感高まる。

・ベジタリアンと異なるヴィーガン。背景に「反種差別」思想。

・暴力・破壊行為は許されず、望まれるのは平和な共存。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=42411で記事をお読みください。】

2018年10月13、14日に、パリではフランス最大のヴィーガンサロンであるヴィーガンワールドが開催されます。このヴィーガン(完全菜食主義者)のパラダイスには150の店舗が出店し、1000を超えるヴィーガン向けの食品が集まるため、菜食主義者向けの料理の人気が急増している中、今年も7000人以上の来館者が期待されています。

しかし、その一方で、フランスではヴィーガンによるとみられる肉屋の襲撃事件、食肉解体場の放火事件などが相次ぎ、ヴィーガンに対する一般市民の不信感も高まっています

フランスでは今年に入り、肉屋が襲われる事件が頻発しました。肉屋の業界団体は被害件数は、過去半年間で肉屋、魚屋やチーズ店の100店以上が標的になったと主張しており、これらの犯行は、書き残されたメッセージから、あらゆる動物性食品を避けたヴィーガンによる犯行との疑いが出ています。

また、9月にはフランス東部農村地帯の食肉解体場の放火も発生し、工場で働く80人の従業員が現在失業状態に陥ることとなり、今後もこのような内戦のような状態が継続し、生活が脅かされるのではないかと、一般市民も不安を募らせています。

こういったニュースを受けて、「菜食主義者」に対して偏見めいた声も聞こえるようになってきましたが、しかしながらいずれの事件も、現時点では実行犯の特定はされておらず憶測の段階とも言え、また、肉食に対する攻撃であっても、単純に「菜食主義者」に偏見の目を向けるのは少し短絡的すぎるかもしれません。というのも、一言「菜食主義者」と言っても、その形態はさまざまであるからです。

■ 菜食主義と言っても実は違うベジタリアンとヴィーガン

菜食主義と言いますと、いわゆる「ベジタリアン」と呼ばれている人々であり、健康志向、宗教などのために、野菜や穀物しか食べないという認識が日本では一般的ではないでしょうか。しかし、そのベジタリアンにも実はいろいろな形態があります。

肉は食べないが卵は食べる人もいますし、乳製品は食べる人もいます。そしてもちろん肉も卵も乳製品も食べない100%ベジタリアンもおり、そういった人々はピュア・ベジタリアン(純菜食主義者)と呼ばれています。

しかし、今回犯行が疑われているのは、ヴィーガン(完全菜食主義者)と呼ばれる人々。このヴィーガンは、ピュア・ベジタリアンと同じように、肉も卵も乳製品も食べない菜食主義者であることは間違いないのですが、ヴィーガンがこのような生活様式を行う主な理由がベジタリアンとは異なります。

ベジタリアンは、健康や宗教と言った種類の理由を元に動物食品を摂取しないのに対し、ヴィーガンは、「人間至上主義のもと行われる動物差別に反対する」という「反種差別」思想を主な理由の一つとして、酪農製品を食べない菜食主義者として生活しているのです。

種差別」とは何かというとWikiにはこのように説明されています。

種差別(しゅさべつ、英語: speciesism)とは、ヒト以外の生物に対する差別である。

種差別とはヒトとそれ以外の動物を種が違う事を根拠に差別することである。しばしば、誤解されがちだが、ヒトが動物に対して線引き(クジラやイヌは食べるべきではないが、ウシやブタやニワトリは食べても良いといった様な)をすることではない。種差別に反対する立場から生まれた動物の権利思想は工場畜産、動物実験、狩猟、サーカス、動物園などを廃止し、人類にヴィーガニズムと菜食主義を呼びかけている」

そして今回フランスの肉屋が襲撃された時に残されたメッセージは、

STOP SPECISME(種差別をやめろ)

▲写真 襲撃されたフランスの肉屋には「種差別をやめろ」のメッセージが残されていた。出典:actu.frさんのツイッター

このため、これらの一連の犯行は一部のヴィーガン、もしくは特定の団体によって行われたものではないかと疑われているのです。また、このメッセージからも、「健康のために肉を食べるべきではないから肉屋を襲撃しているのではない」ことがうかがえます。

もちらん、ヴィーガンの中には、そういった思想を持ってはいるものの、個人が実践するだけにとどまり、外部に影響を及ぼさない人々も存在しますが、その反面、「反種差別」や「動物擁護」団体に入り、活動家として活発に運動している人々も存在します。

そういった活動家の団体が、「フランスの動物愛護団体L214」、「269ライフ フランス」、「ブシェリー・アボリシオン(肉屋廃止)」などであり、これらの団体は昔から毛皮、動物実験、動物虐待、工場畜産、犬猫の殺処分、動物園や水族館での非倫理的行為に反対し、活動を行ってきました。

しかしながら今までは、監視により非道な動物虐待をあばきだし工場閉鎖に追いやったり、過激な表現で動物擁護(※動画参照)を訴えることなどはあっても、現在のような暴力行為が行われることはまれでした。

※動画:肉屋の店先で死んだ子牛を抱きかかえて動物の権利を訴える反種差別者。 出典:Twitter CNEWS

■ 望まれるのは平和な共存

現在、フランスのテレビ局でも、さまざまな動物擁護団体の代表者を招き、肉屋の襲撃について討論がなされています。しかし、各団体は、動物擁護を主張をするものの、もちろん暴力行為については否定しており、団体で行っているというよりも、過激化した一部の誰かによって行われているのではないかと言うことで、なぜこのように破壊行為に至っているのかについては謎のまま。

確かに、フランスではかつて、マクドナルドが「多国籍企業による文化破壊の象徴」に見立てられ店舗が破壊されたこともありますし、農家が、スーパーで外国の野菜が安価で販売されることに抗議してスーパーの駐車場に牛のフンをまき散らしたり、海外からの野菜などがフランスにもちこまれてくることに反対してタイヤをうず高く積み上げ、路上封鎖をしたりすることはよく目にします。また最近では、デモが行われる度にその道沿いの商店が破壊されることも続いています。

そのような環境にいると、一部の「反種差別」を唱える主張者が、主張方法の境界線を見失い、破壊行為に及ぶようになってしまったのではないかとも思えてきますが、実際どうなのかは実行犯のみが知るのみです。

もちろん、暴力行為はフランスでも犯罪であり、その境界線は確実に存在します。マクドナルドを襲撃したジョゼ・ボヴェ氏も逮捕されていますし、デモ中に行われた破壊行為の実行者も逮捕されています。

また、フランス南部トレブにあるスーパーでイスラム過激派による銃撃・立てこもり事件で2人が射殺された時に、食肉業者の男性が殺害されたことをめぐって「正義があった」とSNSに書き込んだヴィーガンの女性活動家は、テロリズム擁護の罪で執行猶予付きの禁錮刑判決をくだされています。(参照記事:AFPBB News)

▲写真 ジョゼ・ボヴェ氏 出典:Wikimedia Commons(by Guillaume Paumier)

主張の方法として過激なことがよく行われるフランスですが、暴力・破壊行為は主張・行為の意味が何であれ違法なものは違法であることはフランスでも同じことであり、許されることではありません。主張をすることは自由ですが、その主張を受け入れて実践するかは個人の自由の領域ですので、暴力で強要されることでもありません。望まれるのは平和な共存。フランスの市民、および肉屋の業界団体などからも、一刻も早い解決を望む声が上がっています。

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