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政府が携帯各社の“公正な競争”に本腰 アップルと大手キャリアの“契約”にメスも?


 10日、携帯電話料金を安くするためのプロジェクト「モバイル市場の競争環境に関する研究会」が初会合を開き、本格始動した。物議を醸した、菅官房長官の「携帯電話料金を4割安く」発言。会合の冒頭、石田総務大臣は「我々の耳に届いているのは、やはり競争が十分に働いていないのではないか(ということ)」と述べた。


 会合の主題は、ユーザーが多様なサービスを安く利用できる環境の整備。海外と比べ割高といわれる携帯料金を下げられるのか、そして複雑な料金明細や料金プランの見直しなどが話し合われた。さらに、docomo、KDDI、SoftBankの大手キャリア3社が市場の9割を占める中、格安スマホを促進し、携帯各社への公正な競争を促す狙いもある。


 格安スマホ事業者は自前の回線を持っていないため、“接続料”と呼ばれる料金を支払い、大手キャリアから回線を借用して営業している。しかし、その接続料が適正に決められているのかが不透明だという指摘もあり、算定方式の見直しにも踏み込む方針だ。会合に参加した慶応大学大学院 政策・メディア研究科のクロサカタツヤ特任准教授は「MNO(大手)とVNO(格安業者)はそれぞれ民間事業者同士なので、ともすると交渉がブラックボックスに入ってしまう。そこに対して、もっと適正に・公正にということをある意味プレッシャーをかけていく」と語った。


 しかし、格安スマホの促進にはいくつもの壁があるのが現状だ。その1つが、大手キャリアと比べて劣る格安スマホの通信速度。回線が混雑しやすいと言われている午後6時に大手キャリアと格安スマホの回線速度をテストしてみると、大手キャリアでは「高速」、格安スマホでは「低速」と表示されることも。


 この現象が格安スマホ同士でも起きているという指摘もある。格安スマホ事業者は、大手キャリア系のサブブランドとそれ以外の独立系事業者に分かれる。独立系の事業者は「サブブランドの方が通信速度が速い」と訴えており、この“速度差別”も会合の議題に上っている。

■「大手に料金を引き下げられたら生きていけない」

 格安スマホの回線速度が落ちるのは、いわば少ない車線を多くの車が走って混雑しているような状態だからだ。AbemaTV『AbemaPrime』アンカーのパックンは、「高いお金を払ってより速いサービス(キャリア)を手に入れるのは、市場主義に基づいたもので当然ではないか」と疑問を投げかける。


 それに対し、テレビ朝日の総務省担当・小野孝記者は、各サービスへの消費者の理解が進んでいないことが問題だと指摘。「選択肢やサービスの内容をユーザーが理解し、速いから高くてもいい、遅いから安くてもいいとリテラシーが上がれば、きちんと選ぶことができる。事業者はユーザーを守るという名目のもと、『こんなサービスがある』と全部説明するが、聞いている方は頭が真っ白になってきて分からなくなってくる。そういう手法なんじゃないかという批判もある」と説明する。


 また、大手キャリアの料金が引き下げられると「格安スマホの意義はなんだという矛盾が生じてくる」とも指摘。総務省が格安スマホを推進する背景には、競争による業界全体の料金引き下げがあるとし、「全体の料金を下げるために選択肢を広げて分かりやすくする、透明性を高めようと進めている」と述べた。


 一方パックンは、格安スマホ事業者が接続料を払って回線を借りる仕組みに、「大手キャリアが持つインフラが自ら出資してつくったものであれば、どれくらいの速度でレンタルするかは自由に設定できるはず。そこに政府が介入してくるのか」と再び質問。ITジャーナリストの石川温氏は「接続料を決めないと公平に借りることができないと総務省は算定式を作ったが、逆にそれによって接続料が下がらないことが問題にもなっている」と説明した。


 では、このような状況下で格安スマホ事業者が参入するメリットはどこにあるのか。総務省によると、MVNOの事業者数は800社を超える。石川氏は、「本来大手と差別化したいが、価格競争に引っ張られてとにかく安さで勝負するしかない。参入したはいいものの、なかなか黒字にならずに困っている会社がほとんど。格安スマホ事業者に聞くと、『大手に料金を引き下げられたら格安スマホも生きていけなくなる』と戦々恐々としている状態」と明かした。


 回線速度については、格安スマホ間の“速度差別”も会合の議題に上っている。石川氏は「サブブランドが相当優遇されているのではという話もある」としつつ、「テレビでY!mobileやUQmobileのCMが大量に流れているのを見ると、料金が安くてそんなに儲かってなさそうだけれども、なぜかお金をいっぱい持っていてCMを流すことができるという状況。独立系はサブブランドとなかなか勝負ができない」と説明する。


 小野氏は「総務省もそこ(サブブランド)をいろいろな会議で切り込んで追及する。格安スマホ側も不満をどんどん出して、全部テーブルの上で公平に議論するが、実際の調査で不公正なことはしていないとはっきりしている。バックに潤沢な資金があるので、どうしてもうまくいっているところとそうでないところが出てくる」と述べた。

■アップルとキャリアの契約も割高感に?

 今回の総務省の会合では、アップルと携帯キャリア大手3社の契約が料金の高止まりを招いているという話もあがったという。


 アップルと大手キャリアの関係について石川氏は、「この前公正取引委員会がその関係を明らかにした。ただ昔はiPhoneが0円で買えていて、それはアップルがキャリアに安く売りなさいと働きかけていたから。日本のユーザーがiPhoneを手軽に買えるようになったというのは、アップルとキャリアの関係性がプラスに働いていると思う」と言及。一方で、今の価格は少し高く感じるといい、「新しい機種に頻繁に替える人は割引があって得をするが、あまり替えない人は割引がなく損をしているという不公平感。これを総務省はずっと問題視している」と指摘し、小野氏も「本来は逆で、長く使っている人が一番のお客様。関連するあちこちの会議で議論をしている」と述べた。


 では、料金を見直す余地はどこかにないのか。ドコモのiPhoneを使用しているある番組スタッフの利用明細書を見ると、契約時に加入するオプションがそのまま継続されているものが散見された。スマートニュースの松浦シゲキ氏は「宣伝されている値段にこういう細かい料金は入っていないので、契約してみたら思ったよりも高くなってしまう構図」と指摘。石川氏は「使っていないであろうオプションサービスはどんどん解約すべき。最近、紙の請求書がなくなりWEBで見ないと分からなくなっている。自分が何に対していくら払っているのか分からなくなっているので、まずは請求書を見て使っていないものを調べて外していけば、自分で何割かは削ることができる」と述べた。


 なお、菅官房長官は10日、「利用者にとって分かりやすく、そして納得できる料金・サービスが実現されるように利用者の視点に立った議論に期待したい。(携帯電話料金の引き下げの余地が)4割程度と申し上げたことに変わりない」と述べている。携帯電話をめぐる環境は、今後激変していくのか。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶石川氏らによる解説の映像は期間限定で無料配信中

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