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大丈夫、有権者はもっと分かってないから!

4人に1人「平均」分からず=ゆとり世代大学生―数学会調査(時事通信)

 入学して間もない大学1年生を中心に数学的素養がどの程度身に付いているか調べた結果、4人に1人が「平均」の意味を正しく理解していないことが24日、日本数学会の「大学生数学基本調査」で分かった。

 調査対象は、学校週5日制が導入され、学習指導要領で学ぶ内容が減らされた「ゆとり世代」の学生。同会は「科学技術立国を目指す国として由々しきことだ」と懸念している。
 さて、どこの新聞でも似たような取り上げ方をされているわけですが、最も安易なレッテル貼りに走っているのはこの時事通信の記事でしょうか。引用元では調査対象が「ゆとり世代」であることを強調していますけれど、特定世代にフォーカスするなら比較対象として先行世代を調査しないと意味がありません。10年前、20年前と比較してどうなのか、それを調べもせず「ゆとり世代」と特定世代の問題であるかのように報道する時事通信の記者は、はっきり言って出来が悪いと思います。平然とこういう記事を書いてしまう記者の論理力には首を傾げざるを得ません。これでは大学生のみならず「ゆとり世代」の平均像をねじ曲げるばかりでしょう。

 ともあれ、どこの新聞社もこの調査については紙面を割いているわけです。なんだかんだ言って大学生は少数派なんだろうな、とも思いました。バブルと呼ばれた好景気が終わり、高卒でも就職先に困らなかった時代の終焉と歩調を合わせて日本の大学進学率は急激な上昇を続けてきたとはいえ、ようやく5割に届いたばかりです。「ゆとり世代」にしてついに半数に達したものの、世間一般からすればまだまだ大卒は少数派なのでしょう。だから大学生を小馬鹿にするような記事は、読者に好意的に受け止められるのだと言えます。自分のことではなく、他人をあざ笑う記事であるからこそ、読者の共感を得られるのですから。

[画像をブログで見る]

 上記画像は産経新聞掲載分ですが、内容は日本数学会のサイトで公開されているpdfと同じです。それにしても設問(2)は判断に迷いますね。平均とされる「163.5cm」はジャスト163.5cmなのでしょうか、それとも小数点2位以下を四捨五入もしくは切り捨てた結果として163.5cmなのでしょうか。一般常識で考えるとジャスト163.5cmとの想定は現実的ではない、しかし小数点2位以下を四捨五入した結果であるならば、100人全員の合計は16345cm以上16355cm未満と幅があり、16350cmが確実に正しいとは言えません。「設問が曖昧なため確実なことは判断できない」が正解であるように思えます。

 それはさておき大学生の4人に一人が不正解であったとして、この報道を読んだ人の何割が果たして正解できるのでしょうか? 有権者がどういった政治家を支持してきたかを鑑みれば、少なくとも半分以上の人は平均の意味を理解できていないような気がしてなりません。報道によると、上記「平均」は小6で習うみたいですけれど、私の実体験からすると小学校時代は学校行事の練習ばかりで算数なんて教えてもらったかどうか怪しいところです。「ゆとり世代」より上の世代だって、そんなに勉強していない印象がありますが……

貯蓄0の高齢者が2人
貯蓄100万円の高齢者が4人
貯蓄300万円の高齢者が1人
貯蓄500万円の高齢者が3人
貯蓄1000万円の高齢者が2人
貯蓄8800万円の高齢者が1人

 例えば、こういう場合の「平均」を求めてみましょう。さて平均は……1000万円になります。でも、こういう平均は厳密には「算術平均」と呼びます。これとは別に「中央値」というのがありまして、上からでも下からでも、とりあえず順番に並べた場合に真ん中の順番になる点が該当します。上記の例で言うと、上からも下からも7番目の高齢者の300万円が中央値です。それから「最頻値」というのもあって、これは一番該当する頭数の多い部分を指すもので、上記例であれば4人が含まれる100万円が最頻値となります。とりあえず、わかって欲しいのは算術平均は必ずしも「平均像」を表すとは限らないと言うことです。

 ところがメディア報道にしても政治家の訴えにしても、「平均」として提示されるのは算術平均ばかりであったりします。公務員給与や高齢者の資産などなど、算術平均値を大々的に掲げては「こんなに多いんだぞ」と喧伝するような類が後を絶ちません。たぶん、そこで「平均」として持ち出された数値は大多数の人には大きな額に感じられることでしょう。給与もそうですけれど(公務員給与の場合は非現業の正規職員限定の「平均」だったりするせいもあります)、とりわけ資産の算術平均は一部の人によって吊り上げられた値であって、半数以上の人より上になることが一般的です。ゆえに自分を比較対象とした場合は「平均」の方が高く見えるのが普通なのです。

 そこで「平均」の意味を正しく理解しているならば、それは算術平均だからだ、と判断します。一方で平均の意味を理解していない人は、公務員は高給取りだ、高齢者は膨大な資産を抱えているのだと、そう誤解してしまうわけです。世間でどういう類の論調が好まれているかを鑑みると、たぶん平均の意味を正しく理解できている人は、半分もいないのではないかというような気がしてきます。とりわけ「改革」を気取るような連中ほど、ほぼ100%と言っていいほど平均の意味を理解していないか、敢えて無視しているかのどちらかです。そして、それを支持する人も同じ。昨今の大学生を「ゆとり」と呼んで馬鹿にしていられるような状況ではないように思います。

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