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人生の選択肢がありふれる今、選択肢が狭まることは「ラッキー」かもしれない──桜林直子×紫原明子

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“結婚をして子どもを産んだら、もし離婚をしてシングルマザーになったら──。時間とお金が制限されて、仕事でバリューを出すことは難しく、キャリアに良くない影響が出るんじゃないか。”

情報があふれ、多様な結婚や家族のかたち、多様な働き方に触れるなか、そんな“不自由”を想像して、選択肢がありすぎて選べずに、二の足を踏んで迷っている人もいるかもしれません。

「SAC about cookies」というクッキー屋を経営する桜林直子さんと、『家族無計画』ほか家族にまつわるエッセイを執筆する紫原明子さんは、シングルマザーであるからこそ、現在のキャリアをスタートさせ、構築しています。

シングルマザーであるおふたりの活躍は、勝手に想像する“不自由”から解放してくれます。桜林さんと紫原さんは仕事と家族とどう向き合っているのか? それぞれの「仕事と家族の関係性」に迫る対談をお届けします。

「半分の時間で、2倍稼ぐ」ために、クッキー屋を開業

徳瑠里香 桜林さんは、クッキー屋さんを経営されながら、他店舗のコンサルティングといったようなお仕事もされていますよね。現在は、どんな働き方をされているんですか?

桜林 直子うーん、説明が難しいんだけど……。お金になる仕事とならない仕事、誰かに頼まれた仕事と頼まれていない仕事、その両方をしています。

桜林直子(さくらばやし・なおこ)。1978年生まれ 東京都出身。2002年に結婚、出産をし、ほどなく離婚してシングルマザーになる。洋菓子業界で12年の会社員を経て2011年に独立し「SAC about cookies」を開店する。現在は自店の運営のほか、店舗や企業のアドバイザーなども行なっている。noteにて「シングルマザーのクッキー屋の話」などを投稿している。娘のあーちん(現在15歳)は、2012年(9歳)より「ほぼ日刊イトイ新聞」にてマンガ、イラストで連載中。

徳瑠里香だいたい、お金と時間は何割ずつくらいですか?

桜林 直子収入の7割はクッキー屋さんで、それに使う時間は3割くらい。残り7割の時間を使って、お金にはならない仕事をしています。

紫原 明子すごい! 少ない時間で必要な生活費を稼ぐって、シングルマザーだけじゃなくて、すべての人にとっての理想ですね。

紫原明子(しはら・あきこ)。1982年、福岡県生まれ。男女2人の子を持つシングルマザー。 個人ブログ「手の中で膨らむ」が話題となり執筆活動を本格化。BLOGOS、クロワッサンweb、AMなどにて寄稿、連載。その他「ウーマンエキサイト」にて「WEラブ赤ちゃん」プロジェクト発案など多彩な活動を行っている。著書に『家族無計画』(朝日出版社)、『りこんのこども』(マガジンハウス)がある。

徳瑠里香桜林さんがnoteの「続・シングルマザーのクッキー屋の話」で書かれていた「半分の時間で、2倍稼ぐ」という働き方には衝撃を受けました。

私自身、子どもを産んで仕事に使える時間が圧倒的に減って、限られた時間のなかで価値を出すことは難しいと思っていたので……。

徳 瑠里香(とく・るりか)。1987年、愛知県生まれ。一児の母。出版社にて、若者向けの働き方書籍シリーズを創刊、WEBメディアでの企画・編集・執筆を行う。その後、著者の会社でオーガニックコスメのPR・店舗運営等を経験。現在は、フリーランスで編集・執筆を行っている。HUFFINGTONPOSTsoar等に寄稿ほか。この日は娘が取材に同行。

桜林 直子私は7年前にお店を始めたんだけど、お店を始めるまでの2年間考え続けて、自分のなかで働くうえでの4つの優先順位を決めて、その目標を立てました。

その優先順位とは、生活費を稼ぐこと、時間を自由に使えること、子どもと一緒に夏休みをとれること、子どもに学校以外の居場所をつくること、この4つです。

徳瑠里香家族との生活に根付く、明確な目標ですね。

桜林 直子私は23歳で結婚をして、24歳でシングルマザーになりました。その頃はお菓子屋さんで働いていたんですが、自分の能力や価値がわからなかったから、とにかく働く時間を増やすしか収入を増やす方法はないと思っていて。


 

紫原 明子うん、うん。

桜林 直子でも、子どもが小学校に上がって、40日間の夏休みを暇そうにしているのを見て、この先6年間この状態はまずい、と危機感を覚えたんです。

私が働いてばかりだと子どもと過ごす時間がなくなるし、でもお金がないと子どもの選択肢がなくなってしまう。このままでは、お金も時間も足りない、と。

徳瑠里香それで、少ない時間でより多くのお金を稼ぐためにクッキー屋さんを開業されたんですね。

でも実際に、開業されて、子育てをしながら、軌道に乗せるのは並大抵のことではないと想像するのですが……。

桜林 直子シングルマザーの意地ですね。ほかにどうにもならないから本気で考えた。

自分にはこれしかできないし、時間も限られていてお金も必要だし、他に選択肢がなかったから、やるしかなかった。意地になれたのは、「シングルマザーだから」かもしれませんね。

専業主婦だったことが「物書き」という仕事を生んだ

徳瑠里香紫原さんは作家活動を中心に、PR業等もされていたんですよね。現在はどんな働き方をされていますか?

紫原 明子もともと物書きだけでは食べていけないから、物書きとそうではない雇われの仕事の2本の柱を立てていました。

週2くらいで会社に通って、それ以外の時間を執筆にあてていたんですが、今年の3月から、物書き1本でやっていこう、と働き方を変えたんです。

桜林 直子そのきっかけは何だったの?

紫原 明子家計の安定のために週2で物書き以外の仕事を入れていたけれど、疲れて、お惣菜を買って帰ろうとか、マッサージを受けようとか、仕事をするためにお金を払っているところがあるなあ、と。

必要な労働とお金のバランスを合わせるために、物書き以外の仕事は辞めました。

でもまだ実験的で、どれくらい働いていくら稼ぐとバランスがいいのか、働き方を探っているところです。


徳瑠里香子育てをしながら働いていると、使える時間と稼げるお金を意識せざるを得ないですよね。そのバランスが難しい……。

紫原さんは、19歳で出産して以来ずっと専業主婦をされていて、離婚を意識した31歳の頃にはじめて就職をされたんですよね。

紫原 明子はい。

徳瑠里香ご自身のキャリアをスタートさせ、選択していくなかで、家族の存在はどう影響していますか?

紫原 明子私が物を書く動機は家族にあるので、その影響は大きいですね。高校を卒業して専業主婦をしていた私にとっては、家族の問題が一番身近で、当事者として感じたことをブログに書いていたら、仕事につながった。

今は社会の転換期で、専業主婦でもサラリーマンでも置かれた場所にいろんな課題があって、そこに気づいて、変えていこうとすることが仕事の種になる。私は、専業主婦だったことが社会とつながるきっかけになりました。

徳瑠里香なるほど。

紫原 明子今でも変わらず「家族」をテーマに執筆をしているので、シングルマザーであることや息子と娘の存在は、物書きとしての私に、大きく影響していると思いますね。

そもそも働いたことがないことをずっと負い目に感じてきたけれど、社会に出てみるととても多くの人が、自分の心身の基地になるものを探していることを知り、暮らしや、家族の大切さにあらためて気付かされました。

離婚して家族の形が変わったけど、それでも何とか子どもと私にとって居心地の良い基地を維持し続けなくちゃいけなくて。実生活の中で得た気付きは、社会の人にほんの少しでも必要とされているものなんじゃないかなって思えました。

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