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ブロッキングに関わる議論について

昨日から2本、漫画村への情報開示請求についてのニュースが立て続けにでました。

クラウドフレアに「発信者情報開示」命令、海賊版サイト「ブロッキング」に影響も

海賊版サイト「漫画村」の運営者を特定か 法的措置

海賊版サイトの撲滅へ向けて非常にいいニュースなのですが、なぜか、ブロッキングの法制化を支持している私への攻撃材料としてこのニュースを使うひとがネットに現れていますので、あらためて、そもそも、なにを私が主張していて、なにが議論の焦点になっているかをあらためて整理をしたいと思います。

サイトブロッキングの是非について、議論が沸騰したのは、いわずもがなですが、4月13日の政府の声明からです。

私は4月24日に自身の見解をこのブログで発表しました。

その中で「現実問題として、海外の悪質な、確信犯的に運営されている違法サイトに対しては、ブロッキングしか対抗手段が原理的にありえない」ということを書いています。

その根拠としては「日本人向けの違法サイトをわざわざ海外のサーバーにおく業者は、日本人が裁判をおこすのが難しい、あるいは現地政府の強制執行力もあまり期待できない国をわざわざ選びます」ことを挙げています。

このブログの中でCDNについては以下のように書いています。「CDNとは、世界中に配置されたサーバーを使ってコンテンツを配信するサービスです。また、防弾サーバーとは、誰が運営しているかわからないように匿名化されているサーバーを指します。漫画村をはじめとする違法サイトはこの2つを利用して運営者の身元の特定ができないようにしており、海外で裁判を起こしても被告の特定だけで膨大な時間がかかり、その間にIPアドレスのログの保存期間が切れるので追跡不可能になります。そして裁判の間もずっと被害は拡大し続ける」

簡単に以上のことをまとめると、海賊版サイトは日本と現地の法制度が及ばないような国をわざわざ選んで利用しているので、ブロッキング以外に原理的に対抗手段がないということです。

さて、昨日、今日と報道されたニュースは、ひとつは日本国内での訴訟においてCDNの代表的企業であるクラウドフレアへの情報開示請求が認められたというものと、もうひとつは米国で今年の8月に漫画村を相手に訴訟をおこない裁判の中で「ディスカバリー」という制度を利用してクラウドフレアとPaypalから、漫画村の運営者についての情報開示を受けたというものです。

前者については根拠に日本にキャッシュサーバーがあることにしている点は不満はありますが、一応は国外企業相手に裁判所が命令をくだしたという意味で意義はあると思います。また、キャッシュデータの削除を命じた点についても興味深いです。日本にあるキャッシュデータだけを削除することの意味については疑問ですが。いずれにしても、これについてはクラウドフレアが本当に裁判所の命令に従うかどうかによりますが、従うのであれば、大きな成果です。

後者については、これは実際に情報がクラウドフレアからでてきたということで、非常に画期的な結果だといえます。これまではクラウドフレアとの直接交渉で権利者側は諦めていましたが、裁判所経由で情報を入手できる方法があることが示されたわけです。クラウドフレアと防弾サーバーを使った摘発逃れは、海賊版サイトを運営しているひとたちの間でも有名な「安全」な方法でしたが、これで「十分に安全ではない」ことが証明されたので、今後、海賊版サイトは、少なくとも、今後、足がつかないような形で、クラウドフレアに送金するスキームを考えることが必要になります。(たとえば防弾サーバーのようにクラウドフレアに送金する会社も複数のダミー会社を経由させるなど。)

もし、今後、どうやってもクラウドフレアで運営者の匿名性を守る方法がないというのが確定されれば、米国内のCDN業者は同様でしょうから、そうすると海賊版サイトは、事実上、大手のCDNを利用した配信はできなくなる可能性があります。

ただし、その場合は、結局、海賊版サイトは他の「安全と思われる」方法をとることになるだけ、と思われます。

実際の問題として、今回の海賊版サイトのサイトブロッキング名前があがった3サイトのうち、漫画村とAnitubeはクラウドフレアを使っていますが、miomioは使っていません。

ですので、今回、報道された件で、ブロッキングが必要でなくなったとはまったくいえません。

また、今回の報道と結びつけて、権利者が努力をしてなかったという批判をおこなうかたが多数いらっしゃいますが、この際、あらためて、強調したいと思いますが、通常、考えられるあらゆる手段を権利者側はこれまで海賊版サイトに対しておこなっています。

問題はあらゆる手段とは、どの範囲まで必要かということです。少なくとも、

・ 経験上、やっても効果はまったく期待できないこと。

・ 現在、一般的には「できない」と思われていること。

まで含めてやってないと批判するのは、いわゆる難癖のたぐいでありフェアではないということです。

これまでも出版社は、「広告業者を訴えてない」、「日本のCDNのキャッシュサーバーを差し押さえしていない」、「海賊版サイトにDoS攻撃をしていない」などと、現状、やってはいけないとされる「禁じ手」を、サイトブロッキングよりも先に行っていないと、不当な批判を受けてきました。

あらゆる手段というのは「常識的な範囲」に限るべきであり、完全性を要求されるのであれば、事実上、サイトブロッキングは絶対にできないというのと変わりません。

今回の報道はクラウドフレアに対して情報開示させる方法があるということを示したわけで、非常に画期的であり、権利者にとっても勇気づけられるものですが、けっして、海賊版サイト側にも権利者側にも常識として認知されていた手法ではないということを、世の中のみなさまには、ご認識いただきたいと思います。

報道されている内容自体については非常に歓迎したいと思います。

以上

ここからは個人的な興味ですが、報道を見ると、情報開示をクラウドフレアとPaypalから受けたあとに訴訟を取り下げているようです。これは情報開示とは別の損害賠償請求みたいな裁判をおこなって、それに必要だということで情報開示を受けて、目的を達したので裁判を止めたようにも見えます。こういった手法は米国内ではふつうなのか、今後、権利者が乱発したとしても批判をされないのかということについては専門家のご意見をききたいところです。

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